第107話 技能試験⑭ - 独自試験(葉道歩夢)3
「ぐっ……!」
左斜め前からの狙撃。
「やっぱりいたね」
レーダーには反応が無かったから一瞬騙されるところだったけど、あまりに不自然に左が空いてたから警戒しておいて良かった。
いくら意地悪でも登録してない魔物を出すなんて反則はしないはず。2体以上出せるとしたらクリュッカしかない。
「さーて、反撃開始だ!」
* * *
〈なんと! もう一体のクリュッカを見抜いていたー! 集中ガードで見事に防ぎました!〉
伏兵のようなクリュッカが出てきた時は見てるこっちがヒヤッとした。
「集中ガードって、防御魔法?」
「はい。防御魔法にはポピュラーなバリアとガードがありまして、ガードは受け止めることもできますし、ああやって集中させることで弾き返すこともできます。ちなみに私たちのドレスも一種の防御魔法です」
「え? この魔法少女の服――ドレスって防御魔法なの?」
「そうですよ。ランクCくらいの弱い魔物の攻撃程度なら防げますし、強力な攻撃を受けると壊れますが威力を10%減らしてくれます。即死しにくい衣装と考えていただければ」
なるほどな、ワュノードに殺されそうになった時はドレスがギリギリのところで守ってくれたのか。というかあれはランクAでいいと思う。
「でもどうせなら、もっと防御力高くしてくれればいいのに」
「強力にするとコストが増えますし、魔法少女の負担も増えますから」
「こ、コスト……。魔法少女の負担?」
「ドレスは魔法少女の魔力で生成されるので、強力になればその分、より多くの魔力が必要になります。魔力が少ない人には負担が大きいんです」
「そうか……。ドレスってそんなに魔力喰うの?」
「今のドレスはそうでもないですよ。使用者の魔力1%ほどで済みます」
「へー、そうなんだ。それで10%軽減してくれるのはコスパいいのかな?」
「
「え? 同じじゃないの?」
「
「フルオーダーメイド!?」
「ドレスに使う魔力量と防御力、その他機能の追加などが自由にカスタマイズできます」
「それはすごいな……」
生存確率を飛躍的に上げることができて、なおかつ快適にできるってことか。これは
「歩夢さん、クリュッカを捉えましたよ」
「けっこう大きい魔物だな。砲身を背負ってるのか」
「分類は中型ですが、中型と大型の中間くらいですね」
歩夢は蹴って殴ってボコボコにした上に、別のクリュッカからの狙撃をわざと当てて破壊した。
〈これは上手い! クリュッカの砲弾を利用して一体撃破ー!〉
〈クリュッカには魔法耐性があるのですが、クリュッカが発射する砲弾は同族にも効くという性質を上手く利用しましたね。あまり知られていないのですが、お見事です〉
〈同族殺しというテクニックの一つですね!〉
〈言うは易しですが、なかなかできる人はいません。流石というところでしょうか〉
あの的場奏雨が認めた? これはいいんじゃないか? 心証が影響するかどうかは分からないが、少なくとも実力は示せた。これなら
そのまま歩夢がもう一体のクリュッカを倒しに向かおうとした時だった。
〈おーっと! 葉道さんがクリュッカを潰しに行こうした、ここでハーバリオンが動いたぁ!!〉
〈クリュッカがやられたことで全体のバランスが崩れましたからね。ハーバリオンは50キロメートルエリア担当なら一人で倒せなくもない相手です。ここからが本番ですよ〉
* * *
「ついに大将が動いたか!」
グオオオオッ!! と大きな咆哮を上げてやって来る。まるで鳳凰のような見た目をした大型の鳥。
「アナライズ」
【ハーバリオン】
ランクAの大型で鳳凰のような見た目をしている。強力な炎攻撃が得意で魔法少女のドレスを焼いてしまう。
「炎攻撃……ドレスが壊されちゃうのか」
あまり長引かせると厄介だな。
大きく跳び上がって拳を振り上げる。
「カウントダウン――」
視界の端っこで光るそれを見たのとセンサーの反応はほぼ同時だった。
ノーチャージショット!?
慌ててガードに切り替えたけど集中ガードができなくてダメージが入る。そして最悪なことに、そこへハーバリオンが大口を開けて炎を揺らめかせる。
「くそっ……!!」
回避は間に合わない。ドレスは削られる。ガードは展開中。
思考がグルグルグルグルと脳内を駆け巡る。永遠にも感じるその一瞬は、巨大な炎に潰された。
To be continued→
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