第106話 技能試験⑬ - 独自試験(葉道歩夢)2
〈なんとここでバースト・ブレイカーが炸裂! 見事にウィンド・シールを破りました!〉
歩夢はビルの屋上に戻ると、再びハーバリオンに向かって走り出す。
「バースト・ブレイカー?」
「結界魔法などを破壊するための魔法です」
「そんな便利なものがあるなら、どうして今まで使わなかったんだ?」
「大きな理由としては、魔力消費が大きいからでしょうね。同じ理由で実はあまり人気がない魔法なんです」
人気がない魔法……まるでこの間の光線弾みたいだな。
「人気がない魔法は改良したりしないのか?」
「人気がない魔法のほとんどは、古い魔法――オールドタイプと呼ばれるもので改良が難しいことが多いんです」
「それなら新しく作ったほうが早い。ということか」
「ということです」
「でも、どうして歩夢はわざわざそんな古い魔法を使ってるんだ?」
「……これは私の想像ですが。歩夢さんは誰かを助けたいという思いが強くなったんだと思います。バースト・ブレイカーは魔力消費が大きい代わりに、あらゆるものを破壊できますから。例外はありますけどね」
「助けたい思い……」
まさか……な。
「かえでさんを助けられなかったから、とか」
「――!」
「いえ、失言でしたね。忘れてください」
まったく……紫は時々人の心を見透かしたようなことを言うから心臓に悪い。
「でも、歩夢は魔力が少ないって聞いてるけど、バースト・ブレイカー使って残り魔力量は大丈夫なのかな?」
「……どうでしょう。器を鍛えることはできませんが、魔力量が増えるのはままあることなので、もしかしたらバースト・ブレイカーを扱えるくらいの魔力量になったのかも知れませんね」
紫と話してるうちに歩夢はハーバリオンに近づいていた。
〈一度クリュッカの狙撃を受けた葉道さん、警戒を強めながらも全力疾走! ハーバリオンに辿り着けるか!?〉
画面の端っこでキラッと光ったと思うと建物が一部吹き飛んだ。
〈狙撃が来ました! 障害物を上手く利用して回避しています! ……おや、これは珍しい人が来てくれましたねー〉
実況のトーンがやや下がったと思うと、別の人の声が聞こえる。
〈どうも、お邪魔します〉
〈今回の独自試験を考案した神楽さんの相方で100キロメートルエリア担当の的場
〈神楽が考案したものですが、私も少しばかり関わっていますので、解説するよう阿山さんから言われまして〉
〈さすが本部長! いい仕事しますねー! それでは、ここからは的場奏雨さんの解説を交えてお伝えしていきます!〉
的場さんが来たと思うと、会場はまた大いに盛り上がった。確かに歩夢も人気あるが、的場さんはまた別次元の人気だ。これが100キロメートルエリアというものか。
〈では早速ですが、皆さんも気になってると思う質問を。今回のセッティングはどうしてトラップという特殊型を取り入れたのでしょう?〉
〈神楽が考案したことで皆さん意地悪いと思われたかも知れませんが、実は
〈なるほど! 今回の独自試験では今までより
〈はい。それと、皆さんもお気づきかと思いますがランクBの魔物は連携しています〉
〈それは不思議に思った人もいるでしょう。ですがまだ知らない人も多いと思うので、解説をお願いします〉
〈はい。魔物というのは異種族が互いに協力し合ったり連携することはまずありません。しかし最近出てきた新型の魔物の中には司令塔の役割をするものがある。という報告がいくつもあります。私たちも遭遇したことがありますが、連携されるとランクBでもランクA相当の強さになることがあります〉
魔物が連携しないというのは知らなかったが、もし連携されたらと考えると……これは厄介なんてもんじゃないな。
〈まだ新型について全て解明されたわけではありませんが、早めに対応するべき。というのが神楽の意見で、私も阿山本部長も同感だったので今回の独自試験に取り入れました〉
〈なるほど、今回の独自試験は新型の周知という目的もあるんですね。
〈ええ。特に今、葉道さんが苦労している狙撃のクリュッカの威力と精度、そして
衝撃的な事実が的場さんの口から発せられた、ちょうどその時だった。狙撃を警戒していた歩夢は今まで撃たれていた右方向とは別の左斜め前、およそ10時の方向から撃たれた。
〈おーっと! ここで葉道さん被弾! まさかのもう一体が潜んでいたーっ!!〉
〈魔物はランクA・ハーバリオン、ランクB・ケノカス、そしてランクB・クリュッカの3種ですが、
To be continued→
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