第97話 技能試験④

 ビーッ!! とブザー音が鳴るとターゲットが現れると、金髪美少女は素早く的確にターゲットを撃ち落としていく。


「これで終わりよ!」


 動くターゲットも見事に撃ち抜いて全てクリアした。1stタイム15秒13と表示される。


「ふふん」


 どう? と言いたげにドヤ顔でこちらを見る。それにしても、なんでこんな意識されてるんだ俺?

 俺の番になると再び視線が集まる。いや、さっきよりもプレッシャー強くないか? あれか、愛恋あこさんの熱い実況のせいか。


 ブザー音が鳴りターゲットが現れる。固定されたターゲットが8つ、動くターゲットが5つ。動くターゲットは変則的なものも2つ混じっていた。

 メイプルのサポートか術式が使えれば瞬殺できそうだが……自分だけの力でどこまでやれるかチャレンジだな。


「ピュアラファイ!」


 固定ターゲットを順々に片付けていく。動くターゲットに狙いを定めて撃つ瞬間、ほんの一瞬だがターゲットの動きが鈍りタイミングが合わず逃してしまい、地味に大きなタイムロスになってしまった。


「くっ」


 なんだったんだ? あの変な動きは……。

 なんとかクリアしたが、1stは17秒56と思うようなタイムが出せなかった。


「おーほほほ! これが実力の差というものですわー!」


 漫画とかアニメでしか見ないような高笑いをする。


「すごいですね。えーと……」

「私? シャルロット・高槻たかつきよ。貴族の母を持つ日系二世のイギリス人ですわ。あなたは?」

「私は姫嶋かえで。日系二世なんだ、道理で日本人離れしてると思った」

「ふふん、あなた素直で正直ね。気に入ったわ。だからといって手は抜かないわよ!」

「でもこれって技能試験であって、競技じゃないよね?」

「あなたなーんにも知らないのね。競技ではないけれど、この技能試験の記録は残るのよ。つまり名が刻まれるの、永遠にね」


 そういえば、優海さんの名前もランキングに載ってるな。前回の前期だと今の複数ターゲット記録は……。ベストタイム10秒32!?

 ターゲットは全部で13だから、一つ一秒未満でパーフェクトクリアってこと? バケモノかよ……。


「そうなんだ。試験ごとの記録は5位までしか残らないから、5位以内に入らないとだね」

「なにを言ってるの?」

「へ?」

「名を刻むのよ? 一位じゃなきゃ意味無いわ」


 2位じゃダメなんですか? とは流石さすがに言い辛いか。


「一位かぁ、今のところ最速だし狙えそうだよね、頑張って!」

「――? 変な子ね。ライバルになんて」

「えーと、それたぶん使い方間違えてるよ?」

「――! わ、わざとに決まってるでしょう!?」


 顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いてしまった。なかなか可愛い反応をする。

 さて、あとは2周目か。次はちゃんとやれるといいけどな。あの感覚はなんだったんだ?


 ――と、2周目が始まった瞬間。遠くで悲鳴が上がる。


「なんだ!?」

「……どうやら、一筋縄では行かないようですわね」


 見ると、2周目は明らかにターゲットが変わっていた。


〈ビックリしましたかー? 2周目は魔物の形をしたターゲットです! 行動パターンも魔物と同じというこだわりですよー!〉


 天の声がテンション高めに説明しているが、試験会場の人たちはドン引きしている。わざわざ2周目ってそういうことか。しかもちゃんと人によって魔物が違うという芸の細かさ。

 襲ってくる気配は無いが、確かにこんなのいきなり出てきたらビビるわ。


「情けないですね」


 シャルロットは呆れたように呟く。


「いや、でもいきなりあんなの出てきたらビックリするでしょ」

「まあ、ビックリはすると思いますわ。ただ、それで意識集中コンセントレーションが乱れるようではまだまだですね」


 それは確かに一理あるかも知れない。なんだか妙な説得力があるなこの子。魔法少女としての腕も確かなようだし、10キロメートルエリアへの昇格は間違いなさそうだ。

 そのシャルロットの番になり、現れたターゲットの魔物は鳥型が多い。


「これはまた難しそうだな」


 天の声――愛恋あこさんいわく、魔物の行動パターンそのままってことは、鳥型独特の無軌道な動きになる。

 だがそれ以前に、シャルロットの様子がおかしい。


「……っ」

「ど、どうしたの?」

「……めなの」

「え?」

「私……鳥、ダメなのっ!!」

「鳥が……駄目?」


 そうか、どうして皆が悲鳴を上げていたのかが分かった。それぞれの苦手な魔物がターゲットなんだ。

 ……俺のターゲットなんなんだろ? 怖いな。


 それにしても、シャルロットの怯え方は異常だ。このまま試験続行できるのか……?



To be continued→

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