第96話 技能試験③
試験の準備をするからと、みのりは行ってしまった。
「そしてまた暇になった」
なんて言ってたら、「姫嶋かえでさん、試験会場で待機してください」とアナウンスされて慌てて移動する。
試験用の部屋は仮想空間が全く無い
横にも数人並んでた。一斉に試験するようだ。
〈魔法少女の基本は魔力制御です! この試験では様々な角度から魔力制御がちゃんとできているかを見ます。試験内容は次の通りです!〉
投影ディスプレイに内容が表示される。
・魔法の杖を構えて撃つまでの早さ(3回)
・複数ターゲットを撃ち落とす早さ(2回)
・空中機動の安定感
〈構えて撃つのは3回中一番良いタイムを採用します。ターゲットのほうも同じくですが、こちらは2回です。ちなみにターゲットを撃ち落とす試験に関しては早さもですが正確さ――つまりちゃんと全部落とせるかも見ますので注意してくださいねー!〉
「え? これだけなんですか?」
〈ふふふ……これだけです!〉
なんだ今の含み笑いは。
「あなた、まだ魔法少女になったばかり?」
「え? まぁ……そうですね」
俺の右隣で待機している、漫画にありがちな高飛車でプライド高そうな日本人離れした金髪美少女が絡んできた。
「この3つの課題がどれほど難しいのか、あなたには想像もつかないでしょうね」
「そうなんですか?」
「魔力制御というのは器だけじゃなく、才能とセンスが求められるのよ。才能が無い人はどれだけ努力しても壁を越えることはできないわ」
「壁?」
「先ずは他の人のを見てなさい。そのあとで私がお手本を見せてあげる」
そう宣言すると、「それでは、スタートです!」とアナウンスされても構えることはなく、他の人が撃ち終わってから魔法の杖を構えた。
「ピュアラファイ」
構えてすぐに細く綺麗な光が奥の
「どう?」
ドヤ顔でこちらを見る。確かに所作は綺麗だったしピュアラファイを撃つのもスムーズだった。かなり洗練された動きというのは一見して分かった。周りからも「おー」と感心するような声が聞こえる。
――それはいいんだが、その様子を見ていた他の人が明らかに「次はあの人ね」という視線を俺に送る。見られてる感がハンパない。
「ま、やってみるか」
いつも通り魔法の杖を構えて、ピュアラファイに最適な
続けて2回、3回と。精度を上げて魔力量を微調整して撃つ。ベストタイムは0秒41と表示された。
「ふぅ……こんなもんかな」
すると静寂に包まれたことに気づき、なにかやらかしたのか!? と内心焦る。その空気を変えたのは天の声である
〈な、な、なんだこれはーーーっ!!? こんなキレイなクイックドロウ、
うおおおお!! と盛り上がることはなく、どちらかというとザワザワしている。女の子しかいないし当然か。
メイプルが俺のクイックドロウは
「……うそ、うそよ……そんなことが……」
挑発してきた金髪美少女は小さい声でなにやらブツブツと呟いている。
「えーと、これでいいかな?」
「――っ! 私は認めない、認めないわ! こんなのただのまぐれよ!」
全く納得いってない様子で「私は認めないわ!」と喚き散らす。
その様子を見かねたのか、天の声が「なお再試験はありませんので、タイムを縮めるなら後期でがんばってくださいねー!」と一刀両断する。
〈では続いて、ターゲットを撃ち落としてもらいまーす! 2回チャレンジできるんですが、連続ではなく2周目を待つ形になりますので注意してくださいねー〉
2周目を待つのか。なんでわざわざ……?
〈では、試験スタートです!〉
一人目、つまり俺から一番遠い反対側の端っこからスタートする。ターゲットはクレー射撃のような丸いやつで固定されているものもあれば動くものもあった。
早さを意識し過ぎれば正確さに欠けるし、正確に撃ち落とそうと狙えばどうしても遅くなる。
「思ったより意地悪な試験だな」
「あら、臆病風に吹かれたのかしら?」
さっきまでの悔しそうな顔はどこへやら、切り替えはえーなこの子。
「君は自信あるんだ?」
「当然じゃない。私は今日10キロメートルエリアに昇格するわ」
まあ、さっきのピュアラファイを見る限り昇格してもおかしくない。それなりの実力はあるんだろう。
金髪美少女の番になると、「見てなさい。お手本を見せてあげるわ」と魔法の杖を構える。
……そういや、この子の名前聞いてないな。
スタートの合図であるブザー音が鳴り響く――。
Tobe continued→
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