第46話 術式と短縮

 ――あらすじ。

 魔法少女の器を認識して、魔力をみ取って初めて本当の全力に近い魔法ピュアラファイを撃ったら、思ってた以上に俺の器は規格外だということが分かった。


*   *   *


「これは、もしかしたら本当に最強の魔法少女になれるかもね」

「すごいですよ、かえでさん!」

「あはは、ありがとう。……ところで、さっきの赤い文字みたいなのはなんだったの?」

「あれが術式よ。魔法文字っていう特殊な文字を使って書いてあって、武器の形状を変化させたり、なにかしらの機能を発動させたり、魔法に色々な効果を追加できるの」


 魔法文字……術式……。

 どうやらプログラミングに似てるな。効果を追加するっていうのはプラグインに近いのか? つまり魔法の杖をPCパソコンと考えると魔法はソフトウェアか。

 今どきは小学校で習うらしいから若い子には肌感覚で分かるのかもな。


「魔法も魔法文字で作られてるんですか?」

「魔法はちょっと違うのよ。どういう魔法を使いたいのかを技術班と打ち合わせしてから天界に発注して作ってもらうのよ」


 あれれ〜? おかしいぞー?

 なんだかどんどん俺の本業に近づいてる気がする。


「なんだか急にビジネスライクですね……」

「そうかも。で、作ってもらった魔法を魔法の杖に導入インストールすることで使えるようになるの。ちなみにピュアラファイは最初から入ってるプリインストール魔法で、魔法少女の基本魔法よ」

「なるほど。つまり術式は魔法と組み合わせて使う拡張機能のようなもの?」

「そういうこと。術式の研究開発を専門にやってる人もいるくらい、可能性は無限大よ」


 なんだか面白そうだな。あとで俺も勉強して作ってみようかな?


「私も使えるんですか?」

「もちろん」

「でも、マジカルタイプってどんなことに術式を?」

「そうねー、例えばスコープを付けたり長距離射撃のための砲身バレルを付けたりカスタマイズが主かな」

「へぇー、弾丸以外は術式で改造イジるんですね」

「さて、術式についてはまたあとで詳しく話すとして。最後にもう一つ、意識集中コンセントレーションについて大事なことを教えるわね」

「意識集中の大事なこと?」

「うん。まず、私たち10キロメートルエリア担当以上の魔法少女はわ」

「えっ!?」

「正確には1秒未満に短縮してるのよ」

「そんなことできるんですか?」

「むしろ、10キロメートルエリア担当になるには必須の技術よ」

「えーっ!?」

「大丈夫、次の技能試験まではまだ時間があるし、ちゃんと教えるから」

「ありがとうございます!」

「かえでさんいいなー、優海さんに教えてもらえるなんて」

「え? そんなにすごいことなの?」

「知らないんですか!? 優海さんの授業ってとても分かりやすくて大人気なんです! しかも教えてもらった人は全員10キロメートルエリア担当に昇格してるんですよ!」

「そ、そんなにすごいの……?」

大袈裟おおげさよ藍音ちゃん、たまたまだって」

「優海さんは謙遜けんそんしすぎです」


 そういえば、魔法少女フリークと自称する安納真幌あのうまほろもえらく優海さんを推してたな。

 やっぱりただ者じゃないな優海さん。


「じゃあ、短縮について教えるね。まずお手本見せるから」


 そう言って優海さんは、俺が魔法ピュアラファイを撃った射撃スペースに立つと、魔法の杖を元に戻す。


「いくよ」


 杖を奥の的に向けた瞬間、魔法ピュアラファイの光が的を貫いた。

 ――思い出した。そういえばあの黒衣の魔法少女も閃光のような魔法ピュアラファイを撃つ時に意識集中コンセントレーションしてなかった。


「どう?」

「いつ意識集中したんですか?」

「撃つ瞬間よ」

「あの一瞬で!?」

「さて、ここで一つ問題。どうして短縮するんだと思う?」


 これは、もう答えを知っている。

 これまで短い期間で色んなことを経験してきて実感したこと。それは――


「意識集中の長さが生死を分けるから」

「正解。1秒が生死を分けることもある魔法少女の戦いでは、いかに意識集中の時間を短くするかというのは大事なことなの」

「いったいどうやって短縮するんですか?」

「簡単よ。意識集中がどういうものかはもう分かったよね?」

「はい。魔法の杖に魔力を流す儀式、ですよね?」

「そう。つまり魔法を発動する瞬間に必要な魔力を魔法の杖に流すだけでいいの」

「え? でも水を汲み取る工程ありますよね?」

「方法は二つあるわ。一つは必要な時に必要なだけ一瞬で汲み取る瞬発力タイプ。もう一つは魔法の杖に魔力のみちを直結するタイプ。ちなみに私が教えるのは前者ね」

「えーと、直結する……? てどうやるんですか?」

「それは私にお任せください!」

「え? 藍音が?」

「魔法の杖には魔力の路を直結する機能があるんです。そうすることで安定して魔法を撃てて即応も可能になります。ただし魔法の杖と接続コネクトするため多少の時間が掛かるのと、一瞬でも手を離してしまうと再接続リコネクトする必要があるという欠点があります」

「どういう人が使うの?」

「そうですねー、主にアタッカーが多いと思います。シビアな戦闘が多くなるので安定した直結タイプが好まれますね」

「なるほど。ということは、コンバットも直結タイプが多い?」

「いえ、コンバットはむしろ瞬発力タイプが多いですね」

「え、なんで?」

「コンバットは武器化と違って体術ですので、自分の体術に合わせたいのかも知れませんね。直結タイプは安定してますが、魔力量の激しい変化には対応できないので」


 そうか、アタッカーは一定の武器性能があるから直結タイプのほうが戦闘に集中できる。逆に体術で戦うコンバットの場合はその時々、瞬間に合わせる魔力量が変わってくる。

 それぞれ戦闘スタイルに合わせた理に適うタイプを選択しているわけか。


「もちろん人それぞれなので、その限りではないですけどね。ここぞという時に瞬発力タイプに切り替えるアタッカーもいますし」

「勉強になるなぁ。優海さんが教えてくれるってことは、マジカルは瞬発力タイプのほうがいいってことですか?」

「そうね。もちろんマジカルの中でも直結タイプの人はいるけど、どちらかといえば狙撃手スナイパーが好む傾向があるかな」

「そっか、安定して撃てるから」

「そういうこと。じゃあ瞬発力タイプの短縮について教えるね。今はどうやって魔法の杖に魔力を流してる?」

「えーと、汲み取って流してを繰り返してます」

「どうやって汲み取ってるの?」

「え? えーと、おけで汲み取るイメージで……」

「そう、それよ」

「え?」

「瞬発力タイプはイメージが大事なの。それを無意識レベルでやれるようになると、意識集中コンセントレーションはコンマ4秒でも可能になる」

「コンマ4秒!?」

「かえでちゃんはセンスあるし、すぐできるようになると思うわ。早速やってみましょう」


To be continued→

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