第44話 メイプル
――訓練棟。
最初はここが本部基地だと思っていたが、魔法少女専用の訓練施設だという。どうりで東京ドームくらい広い部屋や医務室があるわけだ。
初めて来た時も圧倒されたが、改めて見ても霞むほど奥が遠い。歩夢
「これ、奥の部屋に行くの大変じゃないですか?」
「ああー、歩いて行ってみる?」
「えっ!?」
「ふふ、冗談よ。でも歩いて行きたかったらそれでもいいのよ。この前来た時は歩きだったんだ?」
「はい。歩夢に連れて来られて」
「なるほどね。ここの部屋を使う場合は歩きの他にもルームナンバー宣言ていうのがあるの。例えば、ルームナンバーって宣言してから番号を言ってみて。番号は5010M」
「えーと、ルームナンバー5010M」
ルームナンバーを宣言すると、床が高速で動いて5010と表示された扉の前まで運ばれた。
ものすごい速さだったわりに倒れたりはしなかった。というか景色だけが動いてる感覚だ。これも魔法の一種なのか?
「入ってみて」
言われるままに扉を開けて中に入ると、そこは白いドーム状の部屋だった。以前、優海さんと会った部屋よりはだいぶ小さいが、それでも体育館ほどはあるだろうか。
部屋の真ん中辺りに見覚えのある女の子が立って手を振っている。
「かえでさーん!」
「あ! もしかして
「はい!
「どうして……えーと、藍音がここに?」
「お約束した専用ルームのお披露目ですから!」
「専用ルーム……」
『では、私が姫嶋さん専用の訓練室を造りましょう』
『え? そんなことできるんですか?』
『もちろんです。
「そういえば、造ってくれるって言ってた! 本当に造ってくれたんだ」
「藍音ちゃん、あれから張り切っちゃって。かなり予算オーバーしちゃったらしいわよ」
「優海さーん! それ言わないでー!」
「予算オーバー?」
「あはは……色々
「なんか気になるけど……でもありがとう、嬉しいよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです!」
「さて、じゃあ軽く試してみましょうか」
「試す?」
「もちろん、かえでちゃんの全力をね。今回は魔法の杖あるんでしょう?」
「はい、もちろん」
「じゃあ……藍音ちゃん、お願いね」
「はい! シミュレート・モード『スヴェル』!」
ドーム状の空間が再構築されて屋内射撃場のようになる。奥には
「すごい……変形するんだ、ここ?」
「はい!
「藍音ちゃん、ストップストップ」
「――ハッ! し、失礼しました。私、語りだすと止まらなくなってしまって」
「それだけ情熱を
「――! いえ、とんでもないです!」
「じゃあ、かえでちゃん撃ってみて。もちろん全力で」
「はい」
奥にあるホログラフの的に向かって魔法の杖を構えるとライフルに変形する。
さらに意識集中を高めると、星が高速回転になる。
「ピュアラファイ!!」
久しぶりの全力全開。前と同じように目の前が真っ白になる。
――あれ? でもなんか、まだ余裕があるような……。
星の回転を目安に撃ったんだが、実際の手応えは軽い。まだ奥底に眠ってる力があるような、そんな感じがある。
とりあえず一旦撃ち終えると、藍音が興奮して拍手する。
「すごいです! さすがです!」
「ありがとう、藍音もさすがだね。
「……かえでちゃん、物足りないって感じね?」
「え? そうなんですか?」
「……実は、なんだか前の時と手応えが違ってて」
「うーん、私はすごいと思うんですけど……ハロー、メイプル」
「メイプル?」
「かえでさん専用のAIシステムです」
『Hello, nice to meet you. My name is Maple.』
「え、英語?」
「あれ? おかしいなぁ日本語で設定しておいたはずなんだけど……。メイプル、言語設定を日本語に」
『Yes, sir. Change to Japanese. ……これでよろしいですか?』
「うん、バッチリ! こちらがかえでさんだよ」
『まあ! 私のマスターですね。よろしくお願いします』
「こちらこそ。……すっごい人間ぽいね」
「そうでしょう! このAIを開発するのにも苦労しまして――」
「藍音ちゃん、また脱線しちゃうから」
「あっ! そうですね、すみません。――メイプル、かえでさんが言ってた意味分かる?」
『お答えするにはデータが不足してますので、マスターのお体をスキャンさせてもらいますね。……これは、なんと言えばいいのか……』
「どうしたのメイプル? なにか分かった?」
『ドクター藍音、それが不可解なことにスキャン結果はエラーです。つまり測定不能なのです』
「測れる範囲での結果は出せる?」
『はい。……100キロメートルエリア相当に近くなるとエラーになってしまいます』
「おかしいですね……100キロメートルエリア担当にも協力してもらってちゃんと測定できるのは確認したのに」
「でも、とりあえずかえでちゃんの魔力量が
『はい、それは私が保証します』
「さすがかえでちゃんね」
「やはりかえでさんはただ者じゃなかったですね!」
『測定結果はエラーでしたが、分析の結果、恐らくマスターはまだ魔力
「「「……ええーーーっ!?」」」
ものの見事に三人がハモった。
なんかおかしいとは思ったが、まさか全力全開できてなかったとは……。
「え、ていうことは、もしかしてかえでさんって歴代最強の魔法少女になれるんじゃないですか!?」
『総合的な意味では可能性があります』
「え? どういうこと?」
「器の大きさだけで言えば、歴代最強には届かないということよ」
「優海さん心当たりあるんですか?」
「藍音ちゃんもかえでちゃんも会ったことある人よ」
「え? 私も?」
「誰なんですか? 優海さーん!」
「じゃあ、せっかくだからメイプルに答えてもらおっか」
『はい、50キロメートルエリア担当の
「「……ええーっ!?」」
今度は俺と藍音がハモる。これは予想外すぎた。
「和泉って、あのショップ店員の!?」
「そうよ。さっき会ったでしょ?」
「会ったけど、まさかそんなすごい器の持ち主だなんて思わないですよ! 完全に斜め上ですよ!」
「わ、私も知りませんでした……。あんなに明るくて気さくなのに
いや、それはどんな偏見なんだ?
「さて、メイプルのおかげでかえでちゃんの
To be continued→
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