第43話 優海さんとデート?②

「コアについて分かってることは二つあって、一つは853層の術式で構成されているということ。もう一つは魔物の再生機能。コアを持つ魔物はコアを破壊しないと浄化できない」

「コアが魔物を再生……?」


 それじゃますます無傷回収とか無理ゲーじゃないか。

 どうりで1万ポイントも貰えるわけだ。


「……ていうか、ってなんですか?」

「あ……そういえばまだ教えてなかったね」

「え、術式無しで今までやってたの!?」

「えーと、まぁそうですね。ほぼ魔法ピュアラファイでゴリ押してます」

「えぇ……」

「ちょうどいいから今日教えるね、ごめん」

「いえ、そんな。よろしくお願いします」

「じゃあ、とりあえず新人教育は優海さんに任すとして、なにか買うの?」

「そうだ、好きなの選んでね」

「え? もしかして優海さんの奢り!?」

「うん、そうよ」

「いいなぁ〜!」

「じゃ、じゃあ選んできます。……アイテムってどこにあるんですか?」


 ショップに来た時から疑問だった。魔法少女専用アイテムらしいものが見当たらない。普通のコンビニにしか見えない。


「あー、そこにタブレット端末あるでしょ? そこから選んでね」

「ありがとうございます。えーと、なんにしようかな?」


 タブレットの画面にタッチするとアイテム一覧が表示された。カテゴリ別やポイント順などのソート機能もあるのは便利だな。

 一番気になってたのはダブルだ。自らを魔法少女フリークだという安納真幌あのうまほろおすすめのアイテム。

 分身を出せたり火力を倍増させたりと使い勝手が良い。今の俺には必要ないが、せっかく奢ってくれるというのだから買わない手はない。


「あった。500Pか、思ったよりは安いけど……気軽に使える値段じゃないな」


 便利だからとポンポン使ったら、あっという間にポイントが消えそうだ。


「……ん? 所持上限数量5? 意外と少ないんだ」

「ダブルは魔法の杖の負荷が大きいんだよ」


 いつの間にか横にいた和泉が説明してくれた。


「負荷?」

「そう。影を出したり火力を倍増させるのって、当たり前だけど魔力を多く消費しないとだよね?」

「はい」

「でも魔法少女が全員そんな大きい器を持ってるわけじゃない。そこで魔法の杖に増幅ぞうふくしてもらおう。ていう発想がこのダブル」

「魔法の杖ってそんなことできるんですか?」

「できちゃうんだよー、天界の技術力すごいよね。でもさっき行った通り負荷が大きいから、連発すると故障の原因になるのでやめてくださいねって天界から注意されてるの。で、魔法少女協会の技術班と上層部が所持上限数量を5に定めたってわけ」

「へぇー、そうなんですか」

「でも、かえでちゃんはまだダブル使わないでしょ?」

「そうなんですけど、せっかくなので買っておこうかなって」

「うーん、かえでちゃんはマジカルタイプ?」

「はい、一応は」

「なら特殊弾は持っておいたほうがいいんじゃないかな?」

「特殊弾?」

「そう。徹甲弾アーマーピアシングとか爆裂弾ボムシェルとかね」

「え……それ、魔法の杖で撃てるんですか?」

「撃てるよー、魔法の杖って砲撃の時にはライフルみたいに変形するでしょ?」

「そういえば……」

「その時に弾丸選択チョイスで変更すればいいんだよ」

「そんなことできるんですか!」


 ピュアラファイしか知らなかった俺には衝撃だった。

 そんな面白そうなアイテムあるなら試してみたいな……。


「じゃあ特殊弾を……どれにしようかな」

「お得なセットあるよー」

「セット?」

「各種弾丸の詰め合わせよ」


 なんだその贈答品ぞうとうひんみたいなのは……。弾丸詰め合わせの贈答品とか嫌すぎる。


「えーと、お試しセットみたいな感じですか?」

「そんな感じ。お値段的にもお手頃だし」


 でも確かに各種弾丸を試すにはちょうどいいか。


「じゃあセットを一つ」

「はい。あとはどうする?」

「あとは……この、Rドリンクって?」

「あー、回復薬のことよ。もちろんキュアオールには劣るけど、多少の怪我けがはすぐ治っちゃうし魔力も回復するスグレモノよ。ポイントも1000だから一つ持っておくのはありだと思うよ」


 確かに。なんだかんだで俺って怪我多いし、この前もゼノークスにボコボコにされたし……あると助かるかも。


「じゃあRドリンク貰おうかな。――そういえば、回復魔法なんてあるんですか?」

「え? 回復魔法は……一応あるけど」

「それ覚えたらRドリンク買わなくてもいいじゃないですか」

「うーん、でもあれはオススメできないかなぁ」

「どうしてですか?」


 それはね、と優海さんが解説してくれた。


「回復魔法は魔法というより、自分の魔力を魔法の杖で変換コンバートして相手に渡すことをそう呼ぶの。でも魔力の変換効率はあまりいいとは言えなくて、例えば打撲を治すのにもかなりの魔力を使うの。だからあくまで緊急用の技ね」

「そうなんですか……」


 ということは、黒衣の魔法少女はボコボコにされた俺を回復させるのにどれだけの魔力を使ったんだ? 治してくれたあとも余裕ありそうだったし、やっぱり高位ハイランクなんだろう。

 だとしたら、なんで知られてないんだ……?


「だからRドリンクがコスパ良いしオススメだよ」

「分かりました。じゃあRドリンクを一つ」

「Rドリンクなら上限いっぱい買っていいよ」

「えっ!?」

「ちょっと優海さん、甘やかしすぎじゃないですか!?」

「まぁまぁ、Rドリンクは本当に必需品だし、かえでちゃんは狙われやすいから」

「狙われやすいって……、そんなに器強いんですか?」

「うん。器だけで言えば高位ハイランクの素質あるよ、かえでちゃんは」

「へぇー……」


 和泉はいぶかしむように俺を見る。

 上限いっぱいって、10000ポイントだからなぁ。さすがに俺も「あざーす!」なんて気軽には言えない。


「いいんですか……?」

「うん」

「優海さんがいいって言ってくれてるんだし」

「あ、ありがとうございます」


 Rドリンクを10個カートに入れる。

 ……もう、ここで終わりにしたほうがいいか?


「じゃあ、これで」

「いいの? あと一つ買ってあげるよ」

「せっかく優海さんが奢ってくれるって言ってるんだから、もう一個選びな!」

「は、はい」


 なんともやりづらいが……ご厚意に甘えるとしよう。


「じゃあ、テレポートでもいいですか?」

「あー良いチョイスするね」

「いいわよ。じゃあ特殊弾セットとRドリンクとテレポートね」


 優海さんが魔法の杖――ネックレスにしてある――を端末に近づけると、ポーンと音がして『お支払いを確認しました。ご利用ありがとうございます』と端末に表示される。


「受け取りはかえでちゃんにしといたから、確認してね」

「はい。えーと、アイテム」


 イベントリを確認すると確かに特殊弾セット、Rドリンク、テレポートが入っていた。


「ありました。ありがとうございます!」

「かえでちゃんは愛されてるね〜、ありがとうございました〜」

「あはは……」

「ふふ。じゃあ訓練棟に行きましょうか」


To be continued→

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