第40話 計画の裏側 後編
――小一時間。
ぷに助は一旦天界へと戻り、手続きをしてようやく戻ってきた。
「はぁ……」
「なにため息をついてんだ?」
「ため息も出るわ! お前が魔法少女となって以来、どれだけルール違反してきてると思っている!」
「いやまあ、少しは同情するけど元は俺のせいじゃないしな」
「……ふん!」
実際、天界側に落ち度があるため、この件に関しては圧倒的に俺の方が優位だ。
「では戻すぞ」
再び光に包まれると、元のオッサンへと戻る。
「ふぅ……。ていうか、俺の人形も作ってくれるのか?」
「当たり前だアホめ、魔法少女かえでになっている時に
「まあ、あれば助かるけど――」
待てよ? 人形とはいえ、ヒナほどの完成度があれば俺の代わりになるんじゃないか?
「あのさ、もしかして俺の代わりに仕事してくれたりとか、できるのか?」
「……結論から言えばできなくはない」
「じゃあ――」
「だが、それはできねえ相談だ」
「ど、どうして?」
「馬鹿野郎、俺はてめぇを楽させるために人形作るわけじゃねえんだ!!」
「うっ……」
ド正論すぎて、ぐぅの音も出ない……。
「それにそもそも、そういう目的で人形を作製して運用するのは天界からお叱りを受けることになるんだよ」
「そうなのか……?」
「当たり前だアホめ、そういう風に利用されないよう保護するためにも、マキハラは天界に協力しているということになっておるのだ」
「ハッ、要は監視されてるんだよ、俺ァな」
「そういうことか……」
確かに、これだけの技術を持ってる人間がいるなら、利用しようと考える輩も当然いるだろう。
さっきも俺の代わりに仕事を……という話で、マキハラは
世界的にロボットの研究開発がされてるけど、マキハラの技術はそれの2歩も3歩も先を行く。もしマキハラの技術が世界で使われたら、とんでもない世界になるだろう。
――それこそ、SFの世界が現実のものとなる。
「ほら、さっさと終わらすぞ」
「あ、はい」
どうやら錫杖のような杖は、俺の体型などのデータを取るためのものらしい。今度は男の俺をスキャンすると、「じゃあ、俺は仕事に入る」と言って部屋から出て行った。
出来上がりは、姫嶋かえでの方はなんとか半日で間に合わせると言っていた。さすがにヒナほどの完成度ではないらしいが、それでも半日で作れるって凄すぎるだろ。
「さて、では計画についてだ」
「計画?」
「あの御方にお前と姫嶋かえでは別人だと思わせる計画だ!」
「え? 人形に会ってもらうだけだろ?」
「アホか! それだけで確信を持てるわけないだろうが!」
「じゃ、じゃあどうするんだよ?」
「あの御方の目の前で、魔法少女モードを解除するのだ」
「え? でもそしたら俺が……」
「話は最後まで聞け。お前の魔法の杖には少し細工をしておく。魔法の杖のボタンを押したらあるアイテムが作動するようにな」
「なんだよ、そのアイテムって」
「ポジション・チェンジだ」
「位置を変えるってことか? ならテレポっていうのでもいいんじゃないか?」
「アホめ、テレポは移動アイテムだ」
「なにが違うっていうんだ?」
「テレポーテーション、いわゆるテレポは指定した魔法少女の近くに瞬間移動できるものだ。一方のポジション・チェンジは対象となるAとBを入れ替える」
「そうか、俺と人形を瞬時に入れ替えるわけか」
「そういうことだ」
「でも、そんなアイテム使って誤魔化せるのか?」
「まあ、ただ使っただけなら違和感はあるだろうな。いくら精巧に作られた人形といえども、やはり違うものだからな。それに発動時には残像が残る」
「えっ、それじゃ――」
「だから、フラッシュで見えなくするのだ」
「そうか! 魔法少女モードを切り替える時の光か!」
「そうだ。今回は素の姿が見たいという要望だが、
「へぇー、ぷに助も考えるもんだな。……でも入れ替わって遠くにいる俺の気配分かるんじゃないか?」
「スレイプニルだ! 気配など
「なら安心か」
「よし、計画は分かったな? じゃあな、私も戻るぞ」
「ああ、ありがとうな」
「礼などいらん、
「ん? そういや人形の値段っていくらだ?」
「聞きたいか? 聞いたらぶったまげるぞ」
「うーん、あれだけの人形だしな。100万……300万円はしそうだな」
「アホめ、そんな安いわけないだろうが」
「え……? じゃ、じゃあ1000万円とか?」
「そうだな……お前に分かりやすく言うと、今の仕事を100年やって一体分といったところか」
「……え?」
今の仕事を、100年……?
「……っ!!」
「あいつの仕事にはそれだけの価値があるということだ。ちなみにヒナクラスの制作費は軽くその5倍だそうだ」
「ご、ご、ごっ!?」
「今回そこまではいかないが、まあ2体分だからな。天界が今どういう思いでお前を見ているのか……分かるか?」
「……」
「そういうわけだ。今回の計画、くれぐれも失敗することのないようにな」
そう言い残して、ぷに助は去って行った。
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