第21話 息の合った二人
別件の任務を終えたその足でチームに合流するため飛行中の
〈こちら阿山、まだ着かないか?〉
「こちら鳴心! もうすぐ着きますよー、あと数分かな」
〈すまないが急いでくれ。
「絢が!?」
〈どうやら不測の事態が起きているようだ〉
「分かりました! 全速で!」
通信を終えると最大速度で向かう。雲が矢のように後ろへ走って流れていく。
現場上空に到着すると、眼下に異様な光景が広がっているのが見えた。
「なにあれ? 魔物が……それも異種族が群れを? て、考えてる場合じゃない!」
鳴心は絢を救うために頭から急降下する。
〈……ゆ……! 緊急事態です! すぐに――〉
〈きゃあああああああ!!〉
通信圏内に入ると、
「まだだよ!!」
――まだ終わりになんてさせない!
紫さんに絶望なんてさせないし、絢を殺させやしない! あたしが守る!!
魔法の杖を武器化すると、鳴心の両腕に黄色い雷マークがデザインされた大きな白いグローブが現れた。魔法が展開され術式がグローブに走る。
「鳴心式! 覇王爆砕拳!!」
魔法が炸裂すると、まるで落雷のような爆音と爆炎が辺りの魔物を蹴散らしていく。
絢はいつの間にかバリアで保護されていた。どうやら鳴心が大技を繰り出すと察して紫が
《クールダウンタイムに入ります》
グローブが消えて魔法の杖からアナウンスが流れる。この魔法は強力な反面負荷が強く、一回発動すると1時間ほどのクールダウンが必要になる。
「お待たせ! 正義のヒーロー登場ってね!」
トレードマークの黄色いスカーフをたなびかせて地面に降り立った
「鳴心!」
「
覇王爆砕拳の衝撃が収まってから空羽が合流した。
「本当に助かったよ、ありがとう!」
「いいってこと! 間に合って良かったです」
「絢は?」
「気を失ってますけど、ケガはありませんよ」
「良かった〜、もう本当にダメかと思ったよ。そっちはもう終わったの?」
「あー、例の別件でしたら終わりました。もうそこまで来てはいたんですけど、阿山さんから皆さんが危ないという知らせを受けて、全速で飛ばして来ました!」
「さっすがー、頼りになるねぇヒーロー!」
「えへへ」
安堵した空気の中、紫から通信が入る。
〈鳴心さん、まだ終わってませんよ〉
「おや?」
いつもの冷静さが戻った紫の声を聞いて周りを見ると、次々と魔物が起き上がっていた。いくらかは動けなくなっていたが、魔物の数はあまり減ってはいなかった。
「こいつら、覇王爆砕拳を喰らって動いてる?」
覇王爆砕拳は、魔法を炸裂させることで強力な魔力爆発を起こす鳴心の必殺技の一つ。まともに受けて立っていられるのは大型のランクA以上だけ――のはずだった。
ところが周囲に飛び散った魔物はランクCですらも起き上がり、今度は3人を囲って襲おうとしていた。
「鳴心、まだやれる?」
「当然! 燃えてきたぁ!!」
〈お二人と相性の良い魔物をマーキングしておきました。参考にしてください〉
二人の視界に二つのマークが追加された。相性の良い魔物は緑マークが、相性の悪い魔物には赤マークが表示されるようになった。
「ありがとー! 紫さん!」
「さすが良い仕事するねー、じゃあ、いっちょやりますか!」
「行くよっ!!」
鳴心は魔法の杖を、赤地に稲妻のデザインが施されたガントレットへと武器化すると、地面を蹴って近くにいた毛むくじゃらな大型ランクAの魔物に向かって弾丸のごとく突撃した。
「鳴心式!
勢いそのままに右ストレートが繰り出されたと思うとガントレットから閃光が走り、毛むくじゃらの魔物の胸が焦げて大きな穴が空いた。
すると今度はその魔物を踏み台にして別の大型魔物へと向かう。まるでボクサーのように繰り出される攻撃をかい潜りながら、
「鳴心式!
強烈な衝撃波が魔物の全身を内部から破壊していく。
「さすが
空羽は魔法の杖をやや大きめのブーメランへと武器化すると、大きく振りかぶって投げる。
「いっけぇー!!」
ブーメランは勢いよく回転して魔物を切り裂いたり破壊していく。しかし地を駆る小型はひらりとすり抜けていった。
「ごめーん! そっち残っちゃった!」
「任せて! 鳴心流、
地面を強く踏み込み、ブーメランを逃れた小型の魔物に一瞬で肉薄すると強烈な一撃を打ち込んで浄化する。
空羽のブーメランで中型やランクが低い大型の魔物を一掃しながら、逃れた魔物や大型ランクAを鳴心が叩く。息の合ったコンビネーションで次々と魔物を撃破していく。
「さーて、どんどん行くよー!」
* * *
「なんなんだよありゃあ、さっきの奴といい、魔法少女ってやつはバケモノか!?」
伏兵の場所へと誘導したマタリナは、少し離れた物陰からその様子を見ていた。
絢が伏兵に驚いている隙に上手く逃げていたので、鳴心の覇王爆砕拳からも逃れていた。
「彼女たちは10キロメートルエリアの支配者です。その中でも優秀な実力者、
マタリナの後ろに現れたのは、黒いローブを着てフードを目深に被る怪しさ満点の魔物だった。
「お前の研究とやらの役に立ったか?」
「ええ、とても。しかしヒヤヒヤしましたよ。まさか独断行動で人間を襲いに行くとは」
「あれはあれで、俺なりの考えがあったんだ! 結果オーライじゃねぇか、文句あるのか!?」
「いいえ、お陰で計画通りでしたよ」
「じゃあ……」
「もう少し、手伝ってもらえませんか?」
「おいおい、これを手伝ったらって!」
「もちろん今回の報酬はそれなりに。しかしお忘れですか? そもそも、私が教えて差し上げたからこそ、あの
「クッ……分かってるよ! やりゃあいいんだろ!」
「ふふ、ご協力感謝しますよ」
「その代わりよ、
「ええ、それはもちろんお約束しますよ。あなたはさらに強くなれる」
「クク……ありがとよ、俺は最強になる。まだまだ強くなるぜぇ……!!」
「ふふふ……」
ローブを纏った魔物は口角を上げてニヤリと笑う。
マタリナにバレないように意識してるわけではないが、暗がりとフードと角度から、マタリナにはその意味深な笑みが見えなかった。
「共に
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