第16話 デートの約束?
――あらすじ
ひょんなことから魔法少女
ティーン女子の部屋のベッドで目覚めた
そこへ駆けつけた100キロメートルエリア担当の魔法少女二人に救けられ、
その夜、魔物に襲われていた一般女性を見つけた楓人はメダルで召喚した謎の魔法少女に助けてもらい、事後処理部隊の人に後片付けをしてもらった。
そして翌日、ようやく元の姿に戻れたと思ったらヤ○ザに絡まれた。
* * *
「久しぶりじゃねえか」
「お久しぶり……です」
「ん? なんだ、元気ねえな」
「いえ、その……出張からようやく帰ったもので」
「出張? この前ぶっ倒れたってのにか?」
「ええ、まあ」
間違ってはいない。実際、楓香の
「なんだ、兄ちゃんも大変だなぁ」
「はは、もう慣れました」
「そうだ、この前言ったやつ、ありがとうな」
「へ?」
「なんだ、お前がやってくれたんじゃなかったのか?」
「この前のって……」
「おい、まさか忘れて――」
「いやいや、覚えてますって! 以前頼まれた件ですよね?」
そうだ、ずーっと引っ掛かってた。何か忘れてると思ったらこれの事か。
「そうだよ。うちの若え
「もしかして、解決したんですか?」
「いや、解決はしてないんだけどな」
「え?」
「それがな、数日前からパッタリ起きなくなったんだ」
「起きなくなった?」
「その代わり、今度はS区で同じことが起きてやがるんだ」
「S区!?」
おいおいマジかよ。嫌な予感しかしないぞ……。
「ん? どうした?」
「S区は、俺が勤める会社があるとこなんです」
「なんだって? なんなら、うちの若え
「え?」
「S区にはバケモノがいるかも知れないだろ? 数人やられはしたが、うちにはまだ血の気の多い奴らがいるからよ。通勤するなら護衛に付けるぜ?」
「えっと……」
おいおい勘弁してくれ。心強くはあるけど、ヤ○ザに護衛なんかされたらどんな噂になるか分かったもんじゃない。それなら魔物と遭遇したほうがまだ
「そ、それよりも教えて頂きたいことがあるんですが」
「ん? なんだ改まって」
「俺の部屋から出てきた女の子を見たという人と、遠くでその子が何かと戦ってるのを目撃したという人からお話を聞きたいんです」
「ああ、片方ならいるぜ」
「片方?」
「部屋から出てきたのを見たって奴が消えちまってな」
「消えて……?」
「ん? おいおい、変な想像はするなよ? 死んじゃいねぇ、はずだ」
いやいや、はずってなんだよ。しかもなんでちょっと歯切れ悪いんだよ。そこは嘘でも死んでないって言ってくれよ。ヤ○ザが言うと冗談に聞こえなくて怖いわ。
「消えたというのは、いつのことですか?」
「ああ〜、確かつい数日前だったはずだ。3日くらい前か? ちなみにバケモノにやられたわけじゃない。S区に発生したって報告が入った時にはまだそいつ生きてたからよ」
「そうですか……その、片方の人の連絡先を教えて頂いてもいいですか?」
「ああ、……これだ。梶谷ってやつだ」
今では珍しくなりつつあるフィーチャーフォン、いわゆるガラケーで連絡帳を表示して見せてくれた。その番号をスマホに登録する。
「090……ありがとうございます」
「俺から事情は伝えておくから、明日の夜ならいいと思うからよ」
「分かりました」
なんとか事なきを得ると、買い物に行くため階段を降りる。すると気合の入ったお兄さんが「お疲れさまです!!」と俺にも挨拶してくれた。誰かに見られたら確実に誤解される光景だ。
「ど、どうも」
「じゃあな、兄ちゃん」
ヤ○ザのおじさんは黒塗りのベンツに乗り込むと走り去っていった。
「……」
魔法少女が見える人間はごく稀だと、ぷに助は言っていた。なのに俺が魔法少女となったあの夜、部屋から出たところを見たという人と、ゼノークスを倒したところを目撃したという人。タイミング良く二人も
そして俺がアパートに戻る頃に一人は行方不明になり、S区に事件が移った。――偶然か?
「……はぁ、今考えることじゃないな」
詳しいことは明日の夜に電話して話を聞けばいい。とりあえず今はスーパーへ行くことが先決だ。
俺が住んでるアパートはハッキリ言ってボロだが、唯一の利点はスーパーが近いということだ。おかげで経済的に非常に助かっている。コンビニで済ませるのもお手軽でいいけど、俺みたいな安月給には痛手だ。
「徒歩10分は素晴らしいな、軽い運動にもなるし」
スーパーに着くと早速ビールを求めてお酒コーナーへ。魔法少女として過労気味に働いた自分へのご褒美として、いつもより値が張る生ビールをパックでまとめてカゴへ。適当なつまみもカゴに入れると、あとは一週間分の食材を吟味する。
「どうするかな、鶏肉か豚肉か……」
迷っていると、ポケットがブルブルと震える。スマホを取り出して見るが何の通知もない。
「あれ?」
またブルブルと震えたところで「ああ」と察して、同じポケットに突っ込んであったアクセサリーほどの大きさになった魔法の杖を取り出す。
「なんだこれ?」
魔法の杖を手に取ると、女の子の顔写真とCALLという文字がSF映画や漫画みたいなホログラムのように杖に表示されていた。
「制服着てるけど、
受話マークに触ろうとして、俺の危機回避能力が警報を鳴らした。
「まずい! 変身できるところは……」
周りを見渡してパッと目についたのはトイレだった。
買い物カゴを邪魔にならないような所に置くと、小走りでトイレへ駆け込む。幸いなことにトイレには誰もいない。個室に入ると魔法の杖のボタンを押して魔法少女へと変身する。
「ふぅ」
なんとか間に合って受話マークをタッチすると通話中と表示が切り替わり、視界に優海さんの映像が表示された。学校の中らしい。制服姿がよく似合ってて美人だ。
「すごっ、ビデオ通話じゃん」
〈あ、繋がった。もしもし?〉
「は、はい」
〈あら、トイレにいるの? 今大丈夫だった?〉
「大丈夫ですよ、念の為に入っただけなので。まさか通話機能あるなんて知らなくて、びっくりしました」
〈あはは、そっかぁ、それは驚くね。ごめんね、かえでちゃんの連絡先分からなくて〉
「ああー……」
これはちょっと困ったことになった。俺のスマホに女子中高生の電話番号を登録するわけにもいかない。一人ならなんとか言い訳もできるが、複数あったら怪しすぎる。
こうなったら魔法少女用のスマホ用意しないといけないか。あとで適当な端末をネットで探してみるか。
「ごめんなさい、今スマホ持ってなくて。また今度でも大丈夫ですか?」
〈いいわよ。魔法の訓練いつにしようかなって連絡だったんだけど〉
そうか、そういえばこの前は訓練室ぶっ壊して終わったんだっけ。
「えーと……今週の日曜なら空いてます」
〈それなら良かったわ、私も日曜どうかなって思ってたから。じゃあ日曜に
「はい、分かりました」
〈楽しみね、それじゃ〉
通話を終えると映像も消えた。まるでデートの約束するような会話だったな。デートの約束なんてしたことないけど。
ていうか35歳のオッサンが女子高生とデートなんて、良いのか? 犯罪じゃないか?
「これで場所が
そう。優海さんが楽しみにしてるのはあくまで姫嶋かえでとの時間であって、俺と過ごすことじゃない。なんだか複雑な気分だ。
「まあ、百合展開だと思えばいいか」
それに合法的(?)に女子高生と数センチの距離まで近づけるなんて、まるで夢のようじゃないか。週末が楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます