ラミアSide

 俺は言葉使いが男っぽいがちゃんとした女だ。子供の頃から男兄弟に囲まれていたせいでこんな言葉使いになってしまった。兄弟でチャンバラごっこをやっていた流れでそのまま剣術を習い、冒険者になった。


 冒険者になってから物好きがいるみたいで俺と付き合いたいと言ってくる奴らもいた。断ると力尽くでものにしようとしたやつもいたが、もちろん返り討ちにしてやった。少々力が入りすぎて再起不能になった奴らもいたが知ったことじゃない。


 そうも言いながら気のあった奴らとパーティーを組み、こんな俺にも付き合うやつもできた。順調に階位をあげていったんだが、毒蛇の討伐中に腕をかまれてしまった。襲われていた最中だったこともあり、治療が遅れてしまい、解毒が間に合わず、腕を切り落とすことになってしまった。


 剣を持つ右腕はなくても盾としては十分役割を果たすことができると思ったんだが、やはりパーティーとしての戦力が下がってしまうと言われ、5年も一緒にやってきたパーティーメンバーにあっさりと捨てられてしまった。

 彼氏だと思っていたメンバーの一人にも「男みたいだったけど、体だけはいいものを持っていたからな。ごちそうさん。」と言ってあっさりと捨てられた。

 俺は体のいい精のはけ口だったようだ。仕返しをする気も起きなかった。



 パーティーを追放されてしまったんだが、ソロで活動するには攻撃できる手段がない。かといって今の状態でパーティーメンバーに入れてくれるとことがあるとも思えない。

 治療にはお金がかかるので、パーティーが見つかったとしてもお金を貯めるまで数年かかってしまうだろう。それでも俺にはこの道しか生きるすべはないので募集しているパーティーを探してみた。


 さすがにけが人となるとなかなかいい顔はされないが、上位の魔物を狩りに行く場合の臨時要員として時々声をかけてくれる人たちもいた。しかしその分収入は少なくなり、ギリギリの生活をすることとなった。ふと前にけが人を募集していたパーティーのことを思い出して思い切って声をかけてみた。



 パーティーリーダーのクルトにメンバーに入れる条件としてパーティーでのことを他に話さないという契約を結ばされた。まあ色々と秘密があるのだろうと納得し、とりあえず1ヶ月間の体験的な加入を認めてくれたので一緒に行動することとなった。

 パーティーの目標は上の階位は目指さないが、日々を楽しく生きると言うことだった。意味がわからなかったが、とりあえず従うことにした。報酬は一ヶ月後にまとめて払うと言われ、かかる経費はすべてクルトが払ってくれるようだ。


 メンバーは剣士のクルトの他はミランダという支援魔法士とアルという攻撃魔法使いだった。たしかに3人でもバランスのとれたパーティーだった。

 ミランダは簡単な回復まで使うことのできる支援魔法士で、足は義足と言うことだったが、義足と思えないくらいの動きをしていた。

 アルは上階位の冒険者と言うことだったが、良階位以上の魔力を持つ魔法使いだった。顔をやけどしていていつも仮面を被っているし、左手がないと言うことだったが、特に問題も無かった。



 俺は前衛に出て魔物の攻撃を防ぐだけでいいと言われた。まあ片手だからそれしかできないんだが、防御に徹するだけでも「助かった。」とか「よく防いでくれたわ。」とか「ありがとう。」とかお礼を言われるのがとてもうれしかった。私にも右手があったらもっと貢献できるのにとちょっと残念に思ってしまった。

 前のパーティーでは盾で防いで当たり前、防ぐだけでも精一杯の状態だったときでもなぜ攻撃をしないんだと罵られていたから余計にだ。



 宿はいつも雑魚寝のところだったんだが、パーティーメンバーはなんと個室の宿に泊まっていた。クルトはどちらかと付き合っているので同じ部屋かと思ったんだが、ミランダとアルが同じ部屋で俺とクルトがそれぞれ一人部屋という感じで驚いた。

 個室に泊まるなんてそうそう無かったぞ。前のあいつのことが思い浮かんでいやになった。最初の頃はクルトが襲ってくるのではないかと思ってちょっと心配したが、そんなことはなかった。ミランダにもその心配は無いとは言われていたんだがな。


 他には秘密にしなければならないことが多いということで変装していたらしいが俺はこの体型なので無理だと諦め宿には裏口から入ることになった。

 食事も申し訳ないがお弁当で頼むと言われたが、今までよりかなりいいものだったので文句はなかった。時々は一緒に食事もしたが、かなり贅沢なものだった。

 こんな生活をしていてお金は大丈夫なのかと思ってしまう。ただ約束なので何も聞かないことにしていた。


 しばらくして気がついたんだが、アルはなんと奴隷だった。ふとした弾みで契約紋を見てしまったんだが、アルは特に恥ずかしがることもなく、「クルトの奴隷なの。」と笑っていた。クルトもミランダも普通のパーティーメンバーと接しているので全く気がつかなかったよ。



 1ヶ月経過したところでどうするのか確認を求められた。認めてくれるならずっとこのパーティーにいたいと言うと、喜んでくれた。

 そのあとこれは秘密のことなので口外はしないと言うことで報奨金についての説明を受けた。かなり驚いたが、それでも一緒にいることを選んだ。


 それじゃあ腕の治療に行こうと言い出したときは何のことかと思ってしまった。話を聞くとクルト達はすでに治療を済ませており、体の欠損はなくなっていたようだ。そのときにアルの顔を見て驚いた。最近見なくなったと思っていたアルマだったからだ。


「どうしてアルマが?怪我をしたというのは本当だったのか?」


「ええ、黙っていてごめんなさい。狩りの途中で魔法を爆発させて手と顔に大けがしてしまって、どうしようもなくて奴隷に落ちたときにクルトに拾ってもらったんです。私のことをわからないまま買ってくれて、すぐに怪我を治してくれました。」


「そうだったのか。大変だったんだな。」


「怪我をしたときは私の人生はもう終わったと思いましたが、今は怪我をしてよかったと思っています。奴隷と言ってもクルトもミランダもそしてラミアも普通に接してくれるから全然気になりません。ほんとにありがとうございます。」


「よかったな。」


 教会に行き、治療をして腕が再生した。うれしさのあまりクルトに抱きついてしまい、クルトが気絶寸前になってしまったのは悪かったと思う。このあとも治療のことは周りには秘密にするように言われたので、町を出歩くときは右手を隠して行動することとなった。




 このあとすぐに新しい町に移って活動を続けた。1年もするとかなりの貯金も貯まってきたので家を購入するという夢のような状態となった。冒険者で家持ちなんてそうそういないからな。


 さらにクルトは奴隷を購入して商売も初めたんだが、こちらの方もうまく軌道に乗り、当初考えていた以上に収益を見込めることとなって驚いていた。正直こうなってしまったら冒険者としての俺の価値はないんじゃないかと思ったんだが、商売がうまくいきだした後も変わらず狩りには出かけていた。


 クルトは他のメンバーと付き合っているのかと思っていたんだが、そういうわけではなかったようだ。家の管理のために奴隷を購入したのであっちのほうの世話もしてもらっているのかと思ったんだが、それも違ったようだ。女性に興味が無いのか?


 気になって初めて本気で異性として意識していることがわかった。そう思うと我慢できなくなったが、他のメンバーにも相談することにした。


 やはりみんなもクルトのことが好きだったようだ。恨みっこなしでクルトに聞いて見ることにしたが、誰かを選ぶことはできないと言われてかなり落ち込んだ。まあ、俺なんかが付き合えるわけはないよな。

 ただそれはそういう意味ではなく、3人とも好きなので選べないという答えだった。三人で顔を見合わせてうなずいた。皆で幸せになろうと。


 前の彼と違ってクルトは優しかった。体を重ねるのが初めて幸せだと感じた。前の彼との関係は恋人同士でもなかったんだな。


 商売も落ち着いて安定したところで、俺たちは結婚式を挙げることになった。花嫁は俺たち3人だ。数人の仲のよい友人達に祝福されて私たちは本当の家族になった。


 俺がこんなふうになるとは誰が思っただろうか?こんなに幸せでいいんだろうか?


 今日も家には家族の笑い声があふれていた。この幸せはもう手放したくない。ずっと、ずっと・・・。

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