みんなで幸せになろう

 ラミアの加入が正式に決まったところで、拠点を他の町に移すことにした。目的地は現在開拓中の町でかなりの冒険者が集まっているところである。町の規模もかなり大きくなっており、冒険者として活動するにはいいところだ。

 この町から馬車に乗って20日くらいかかるところだったが、専属の馬車を借りての移動だったのでまだ楽な方だった。途中の町もそこそこの宿に泊まりながらだし、正直こんなゆったりとした移動をするのは初めてだったしね。

 ミランダ達もいろいろな服を買い込んで毎日服を選んで楽しそうだった。食事もその町その町の特産品を食べていったので移動自体が旅行気分だ。これもお金があるからできることだよね。



 新しい町では冒険者としては最初からある程度変装をして、普段の生活の時は普通の格好をすることにした。これで冒険者としては怪我をしている風にごまかせるし、普段の生活で少々贅沢な生活をしても同一視されないので疑われる可能性も低くなるだろう。



 さすがに開拓中の町の周辺だけあって魔物の出現数が多いが、町周辺は強くても良階位レベルの魔獣しか出ないので安全に退治をしていくことができる。

 お金を稼いでいるのでもちろん装備もいいものに変えていくことができるのでさらに安全性が高くなっていく。

 ここでも偽装のために町中ではわざと低ランクの防具をつけておくことも忘れない。装備関係のレベルが上がってきたため、優階位の魔獣でも少し狩ることができるようになってきたが、良階位でも十分に稼げるので無理はしないつもりだ。優階位は安全マージンの取れる魔物だけだ。


 収納バッグも高性能のものに変更したので持ち帰りも大分楽になってきた。効率が上がると魔物を狩る数も増えてくるので結構厳しかったからね。まあそれ以前に私物が増えすぎたというのが大きいのかもしれない。特に女性陣の服が・・・。


 町を移ってから1年もすると数千万ドールのお金が貯まっていた。もちろん装備など更新しているにもかかわらずだ。



 せっかくなので家も購入することにした。もちろん貴族でもないので一等地に建てられたものではないが、治安もいいエリアの建物なので問題は無い。奴隷も購入し、家の管理から食事の準備まで任せることができるようになった。別にあっちの方のために購入したわけではない。家の管理なので女性を購入したんだが、あっちの方も覚悟していたみたいなのである意味申し訳なかった。


 家を買ったくらいから潤沢な資金を使って商売も初めたところ、そちらでも順調な利益を出し始めた。奴隷商会にいろいろ話をしていたところ、商会を経営していたが、いろいろとあって奴隷に落ちてしまった人を紹介してもらったのである。さすがに商売についてはノウハウもないので資金を出してできる人にやってもらった方がいいだろうということからこの形にした。


 ミランダがもともと商会の娘だったらしく、ある程度知識があったので経営内容について問題ないかだけはチェックしてもらった。時々俺たちもわからないなりにいろいろと状況を確認は行っているので、変なことにはならないと思っている。それ以前に商売を任せた奴隷の家族はかなり感謝していたので多分変なことはしないと思っている。


 形だけの利益さえ出ればいいと思っていたので利益の多くは働いている人たちへ還元していた。従業員用の宿舎も作り、食事のまかないをつけたり、休みを定期的に取らせたりして、賃金もそれなりに渡していたんだが、それでもかなりの利益を上げてきたので驚いた。

 今では素材のいくつかは直接お店に卸して加工して販売すると言うことになっている。あまり大々的にやると何か言われる可能性もあるが、正直なところそうそうばれるものでもない。その場合の利益がかなり大きくなるので驚いた。特に優階位の魔獣の素材は半端ない利益で驚いた。




 パーティーの3人とはいろいろあったが結婚することになった。すでにアルマも奴隷から解放をしているから問題は無い。平民でも妻を複数持つことは認められているしね。3人とも美人だし、相性もよかったからな。


 実は家を買ってからしばらくしたところで、3人に誰と付き合いたいのか問い詰められたのだ。俺も男だし、好意は持っていたのは間違いないんだが、手を出してはいなかった。なぜかというと誰か一人に決められなかったからだ。

 女性として全員が好きだというのも受け入れられないだろうし、誰か一人を選ぶことはできないし、せっかくのパーティーがうまくいかなくなるのもいやだった。それだったら誰とも付き合わない方がいいと思っていたのだ。


 正直に自分の気持ちを伝えたら、「それじゃあ、全員と付き合おうよ。」と言われて驚いた。ほんとにいいのかと何度も確認したんだが、3人とも自分だけじゃなくて他の二人も好きになってくれてよかったと言っていたんだ。正直泣きそうになったよ。こんな俺をこんなに好きになってくれた人が3人もいただなんて。



 家に、かわいい3人の妻に、十分な資金、そしてまもなく子供も授かりそうだ。子供には冒険者にはならないようにしてもらいたいな。まあもしもの時のために話だけはしておくつもりだけどな。




 数年後に話を聞いたところ、俺が最後にパーティーを組んでいたメンバーのうち2人は死んでしまったらしく、1人は怪我でやめてしまったらしいが、1人は優階位に上がっていた。このあとも特階位を目指すんだろうが、たとえなれたとしても10年努めて引退してもらえる年金は500万ドールだ。たしかに大金だが、俺たちはその10倍以上を稼ぐことができるのだ。



 あのとき怪我をしなかったら俺は死んでいたかもしれない。うまく生き残ったとしても毎日死と隣り合わせで戦っていたかもしれない。今となってはむなしいと思える貴族になって満足していたかもしれない。


 あのとき怪我をしてよかった。たとえ貴族になれなくても、こんなに幸せになれたんだから。

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