さらに仲間が増えた

 同じ魔物を討伐してももらえる報酬が20倍の開きがあるともちろん他のパーティーとは生活にも差が出てくる。ただ他の冒険者はやはり階位をあげるのが目標となっているので、上階位や良階位でくすぶっている俺たちにはあまり興味を示さないのは幸いだった。


 宿も部屋にシャワーのあるところに移って生活環境もかなり向上してきた。せっかくならシングルの部屋にしようかとミランダとアルマに言ったんだが、同じ部屋でいいと固持されてしまった。うーん、二人の関係がよくわからないけど、気にしないでおこう。

 食事もバランスのいいものを食べて体の調子もすこぶるよい。狩りの時間もある程度絞って長時間するのは抑えるようにしている。

 このままこの生活を続けるのもありなんだが、そろそろ他の町に移動しようかと思っているところだ。やっぱり知り合いの多い町だとリスクが高いからな。


 ちなみにカバーがきっちりはまっている精算機でもアルマにお願いすると魔法で問題なくボタンを押せたのでどこの町でも大丈夫なのは確認済みだ。




 そう考え出した頃にラミアという女性から声をかけられた。190cmほどの身長で黒髪の短髪と男勝りの印象だ。顔はハンサムというか、美男子のような印象を受けるが、美人といえる顔立ちだ。それより先に胸に目が行ってしまうのはしょうが無いだろう。


「すまないが、少し話を聞いてもらっていいか?」


 声をかけてきた理由はその腕を見てなんとなくわかった。彼女の右腕がなかったのである。


「ああ、かまわないよ。二人も一緒に話を聞いてもかまわないよな?」


「ああ、一緒に聞いてもらった方がいいと思う。」


 どうやら以前出していたパーティーメンバー募集の案内を覚えていたみたいで声をかけてきたらしい。今まで防御をメインとした剣士だったんだが、最近の討伐で腕に毒を受けて、右腕を切り落とす羽目になったようだ。


「今のランクは良階位で、前衛の主に盾役として戦っていた。良階位でなく、優階位レベルの魔物の討伐でも遅れはとっていなかったと思っている。今は右腕がないので攻撃はできないが、防御に関しては十分働くことができるはずだ。」


 盾役としてはまだ戦うことができるそうだが、長年一緒に行動していたメンバーには見限られ、ソロだと攻撃の手段がないため俺たちのパーティーが最後のチャンスと思ったようだ。


「わかった。ちょうど盾役のメンバーがいたらいいと思っていたんだ。とりあえず1ヶ月だけ体験として入ってもらい、そのあとどうするか決めたいと思う。その間の経費はすべてこちらで持つが、報奨金については1ヶ月後にまとめて払うと言うことでいいか?」


 ミランダと同じように説明をして条件を示す。


「わかった。パーティーに入れてもらえるならそれで十分だ。」


 このあと魔法契約でパーティーのことについては口外しないようにしてもらうが、こればかりはやっておかないと危ないからな。



 ラミアの加入で今までよりも格段に安全性が増し、効率よく狩りができるようになった。攻撃はできないが、魔物の攻撃をほぼ完璧に防いでくれるので安心だ。おかげで良階位の魔物であればかなり安全に狩ることができるようになった。


 体験の期間は俺たちの怪我の治療のことと、アルマの正体についてはまだ秘密にしておいた。このため部屋割りもラミアには一部屋使ってもらうことになったが、それ以上に稼げるようになったので問題は無いだろう。アルマは普段からアルと呼んでいたので問題なかったしね。



 ただ宿の個室に泊まるときにはかなり驚いていた。しかもシャワー付きだからね。宿泊費はこちら持ちだから遠慮しなくていいと説明しても、しばらくはかなり警戒されてしまった。まあ冒険者が宿で個室を借りると言うときはあっちが目的のことがほとんどからなあ。特にシャワー付きの部屋とかになるとね。


 ただ問題となったのはラミアの見た目だった。変装してもかなり目立ってしまうので正体がばれてしまう危険が高かったのだ。このため宿に入るのは裏口からにしてもらい、食事もお弁当を中心にしてもらったのは申し訳なかった。

 いったん生活のレベルを上げてしまったので自分たちはなかなか下げるのには抵抗があったんだよね。ただそれでも食事の内容的には今までよりよかったみたいで特に不満は無かったようだ。



 1ヶ月経過したところでラミアに確認をとるとパーティーに残りたいという返事を受けてパーティーのことについて説明する。お金の精算のことやアルマのことを聞いて驚いていたいが、腕の治療をすると聞いたときには言葉を失うほど驚いていた。


 教会に行って腕が治った後、大興奮して抱きついてきたんだが、最初は正直うれしかったんだけど、あまりの力で死ぬかと思ったよ。胸の感触を味わう前に気を失うところだった。

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