「あら、珍しい組み合わせね。学年一位と学年ビリ」


「先生。手を、この人の手をお願いします」


「なんで泣いてるのあなた」


「ちょ、ちょっと待って。くっつかれると支障が」


「あらあ。派手に擦りむいたわね。どうしたの。この子に告って拒絶されたか?」


「いたいいたいいたい。告白はうまくいきましたよ」


「へえ。そうなの」


「えっいたいいたい。先生、なんでつねるの?」


「私に彼氏がいないからよ」


「先生、お願いします。やさしくしてください。私の彼氏になる予定の人なんです」


「学年一位にそう言われると複雑な気持ちになるわね」


「でもつねるのをやめないんですね先生いたいですやめてくださいいたいいたいいたい」


「つば付けときゃ治るでしょ」


「先生、索漠とした気分と興奮した気分って、何か関係があるんですか?」


「何よ、いきなり」


「索漠と、興奮です。先生」


「ううん、寒いん、じゃない?」


「は?」


「索漠って、なんかこう、とにかく、寒いんでしょ。だから興奮させて、身体を暖めようとしてる、とか」


「それだっ。いたいっ」


「つねってないわよ」


「寒かったんだっ」


「寒かっただけ、って」


「僕の告白がうまくいったのも、腰に回した手が暖かかったからだっ。いたいっ先生いまつねったっいたいっ」


「腰に、手を、回しただと。てめえ、わたしは、彼氏いないって言っただろうが。私の前でのろけるな。つねるぞ」


「もうつねってるっ」


「違うわ」


「え?」


「え?」


「腰に、回された、手も。暖かかったけど。違うの。たぶん」


「何が?」


「先生、つねるのはそろそろやめていただけないでしょうか。僕の手が限界までねじれてます」


「私。泣いてる」


「うん。泣いてるわね。涙とはなみずで顔たいへんなことになってるわよ」


「うれしいんです。誰かに恋心を打ち明けられたのが。なんというか、そう、心が。いままでになく。暖かい」


「へえ。よかった、わねっ」


「いたいいいい」


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泣いた理由 春嵐 @aiot3110

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