テレビ電話と、お友達のスバラシサ
コロナの影響で、今年の春から誰にも会えない日々が続いていた。
娯楽といえば、旦那とは一度だけ梅田でデートしたり、思い切って私一人だけ大阪心斎橋に行ったりもしたけど、それくらいだった。
家で出来る楽しみなんて限られている。
子どもがいたって、全力で彼女たちに遊んでもらったって、満たされるのはほんの40パーセントくらい。
ため息ばかりついていた。
その時。前の職場の同僚みづきさんからいきなり「テレビ電話するよ!。」とメッセージが来た。
おお・・・・。と、わくわくしながらお菓子とお茶を用意する。
テレビ電話をしている間、常に隣に張り付いている一歳児と三歳児を大人しくさせておくには、これが必要だろう。
わくわくしながら時間をつぶしていると「テレビ電話」が始まった。
メンバーは、同僚と、私と、私の先輩2人。
このメンバーを、私の結婚式に呼んだなぁ。
この同僚が、私と旦那さんのキューピットをしてくれたからだ。そして、先輩の結婚式には、同僚ともう一人の先輩とで余興でダンスをした。
懐かしい。
ここの職場で働いていたのはだいぶ前だけど、それでも昨日話していたかのように話せるのは、友達の良い所だ。
半年以上ぶりに話すのに、私たちは、緊張する事なく、まるで目の前でテーブルを囲んでいるかのような雰囲気ですぐに落ち着いた。
「こんにちはー。」
スマホに向かって手を振る。画像は少し荒いけど、先輩や同僚たちと子ども達が手を振っているのが十分見えた。
なんだろう。お互い出会った時はみんな独身で。私なんて遊びたい盛りで。
私も。同僚も、先輩たちも。それぞれ違う人と付き合っていた。
今では、それぞれ当時好きだった人とは、違う人と結婚して。
子どもを育てている。
みんな。当時置いてきた「思い出」ってないのだろうか。
昨日の事のように、みんなと同じ職場で仕事していた事を思い出すのに。
不思議な感じである・・・。
淋しいような・・・・。
話はだいぶ盛り上がり。
最後の最後に。
「ねえねえ!所でユキの聞いてほしい話ってなんなん?!。めっちゃ気になるんやけど。」
と言われた・・・。ちょうど、たった今、旦那が仕事に行った。ナイスタイミングだ。振り返り、ベランダから見える車庫に車が無いのを確認してから、私は話し始めた。
「あの・・・。すごく変な話をするんですけど。」
私は言う。こんな事言ったら引かれるかな、と思ったけれど。誰かに話さないと、苦しくてたまらなかった。
「あの・・・。」
私は一気に言う事にした。
「最近、ママライターを始めたって言ったじゃないですか。(※事実です) 子どもの恋愛について記事を書いていて・・・。昔好きだった人の事を少し書いたんですけど。その人を好きだった頃の心境に戻って書くので、そこから胸がざわざわしてしまって。・・・・今も少し胸が苦しいんです。先輩とみづきさんは、忘れられない人、いますか?。どうやって、この気持ちを忘れたらいいのかなって。」
一気に言ったので、胸がどきどきした。漫画みたいに、ぜえはぁ・・・と呼吸を整えた。
あの時置いてきた思い出。
無かった事にして生きてきた。
だけど。
お互いもう違う人と結婚してしまって。
せめて、私が彼と同い年で生まれていたら。
もっと違う出会い方をしていたら。
私が好きという気持ちを押し付けて、向うの負担を考えなかったから。
独身で、若いあの頃に戻って、「ごめんなさい」と言えたら。距離を置いて、また彼を見る事が許されたら・・・。いやそれはどうかな・・・。
そんな事を考えてしまった自分がいる。こんな自分で大丈夫だろうか。
「えっ・・・。そんな人いたの?。ちょっと詳しくききたいんやけど。」
そうだ。この職場に就職するだいぶ前の話だから、ここの人には話した事ないんだった。
私は、話した。
「恋やなぁ。」
先輩は笑った。恋かぁ・・・。
「今ある、幸せを見つめたらいいんじゃないですかね。」
みづきさんも言う。
「私、そんな大恋愛してなかったからなぁ。逆に幸せやと思うよそれ。」
幸せ・・・そんな風に思った事無かった。
「大体、その男なんなんって感じやん!付き合ってないのに、チューするとかなんて奴や!!。」
「そうだそうだ!。」
「しかも、SNS見て、その人が結婚してて幸せになって良かったとか思うなんて、ユキ優しいなぁ。」
私優しいんや。
私は笑っていた。
いつのまにか、心から、笑っていた。
そうだ。
いつも、こんな感じで消化されていた。話をして。癒されて、元気づけられていた。
私、人と話すの苦手って思ってたけど。
ちゃんと、この人たちに元気をもらっていたんだなぁ。
私は。
少し何かを取り戻した気がしていた。
また、違う友達とも話してみよう。あしたは誰かとまた話をしよう。
私は、そう決めた。
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