現代と青春
今日は子供達を預けて、久しぶりに有給を取ってくれた旦那と駅で二人で待ち合わせをした。
久しぶりに、昨日は雨が降らなかったのに、朝また雨が降って、空がどす黒く、空気が湿っぽく、デートにしては最悪な天気だった。顔合わせの日も、結婚式の日もこんな天気だったし、ああ・・・どこまでも雨女だ。
よく揺れる電車の中で、久しぶりに手を繋いでみた。
旦那さんの手は、湿っぽく、熱っぽく、予想外の感触だった。こんな手をしていただろうか。あまりにも恋人らしい事をしなさすぎだ。
5年前に結婚したての頃は、大阪梅田の近くに住んでいたので、休みの日に出かけるならば必ずそこだった。結婚式場も梅田だった為、挙式の一か月前は幾度となく通った思い出の土地・・・・ああ懐かしい。
駅を降りて、一番駅から近くて、一番おいしそうでオシャレなお店を選ぶ。ミュージカル会場のあるタワービルの高層階のバルに入る。ほぼ貸し切りであった。私達が入った事で一斉に店がばたばたしていた。
「私達だけのために、お店動かしたみたい。」
反射的に申し訳ない気持ちになる。しかし、よく考えれば客なのだから堂々としていればいいのだ。なので、旦那は堂々とビールを飲む。私達夫婦はそういう所が正反対だ。
ガラス張りから見下ろす景色は。
夜なら最高の夜景の眺めかもしれないが、昼間見るとかなり淋しい風景だった。
建設予定の土地が多く、ビルの周辺は、何も無かった。あちこちにはしご車や、クレーン車があった。
「梅田、どんどん変わっていくね。」
昔はそこに、何があったのか、もう思い出せない。
暑さのせいなのか、コロナの影響で外出が控えられているのか、大阪駅周辺の横断歩道以外は人が驚くほど少なかった。
「営業でよく、このへんもいくけど。最近はどこ行ったって人いないよ。お店もどんどん潰れて行ってるし。テナント料も高いらしいし。これからは小物とかは通販が主流になるかもね。高価なものだけお店に置いたりとかさ。」
うーん、、解せないなぁ。
私は言った。
「私たちの青春って。可愛くて安い服を買う為に、HEPに行ったり、LOFTいったり、色んな店を一日かけて探しまわったりして、ウィンドウショッピングするのが青春の一部って所あったなぁ。お店どんどん減っていくってなんか淋しい。子どもたちがこれから過ごす青春も変わっていくのかな。」
あの人と。 あの友達と。
一緒に何かを探して、たくさん歩いたこの街は。
もう、少しずつ、変わってきている。
CD、ワンピース。春物のコート。
求めて歩いた、その時間だけ。
好きな人や、友達と、一緒にいられた、楽しさ。
お金が自由に使えなかったあの頃は。
とってもそれだけで楽しかった。
「基本的に、手を繋いだりとか。そういった基本的な青春は変わらないんじゃない。」
旦那は冷静にこう返した。
そうかな。
人が少なくなっていく街も。
また、どこかで入れ替わって。
そこで青春が産まれて。
ずっと、きっと続いている。
この街は、ずっと存在していたらいいな。
そう思った。
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