恋をしていた、あの頃のように。



「淋しいものよ、専業主婦なんて。」


 昔、知り合いがそう言っていた事を思い出した。


 その意味が、当時独身だった私には理解できなかった。


 今わたしは。


 毎日、長女を幼稚園へ送り迎え、一歳の二女の相手をたっぷりし、夕食の仕込みと掃除をして・・・の毎日だった。

 子どもたちの生活リズムを守るために、同じ時間に入浴・夕食を徹底し、洗濯をして、終わったら寝かしつける。淡々とした毎日なようで、毎日が冒険であった。


 幼稚園の帰りは、長女の気分次第である。公園に行ったり、時にはピクニックをする事もあった。

 今日は二女が歌を庭で披露してくれて、コンサートが開かれた。

 そのあとは、マンションのキッズルームへ。


 毎日、同じ一日など無かった。


  今の、毎日のこの状況が。


  淋しいとは思わないけど。


 子供達が、私の手をだんだんと必要としなくなった時。


  いつかはそうなる、予感はする。


 

 そんな時。淋しくならないように。 今、思いつく事。



 まず、私は、朝起きたらお化粧をする。


 髪も綺麗に編み込みにして、綺麗な服を着て、きちんと前を向いて。


 恋をしている女子大生だった、あの頃のように。


 そして、子どもを玄関に出し、自分も家を出る前にこう唱える。


「今日こそ、人生最高のお友達に出会う日」


 そう願って。




 人に会えば、挨拶をして。


 これまでに何十回、何百回と会っている人がいたら。


 また逢えた事を心から喜んで。


 声をかけたい。



 泣いてる人がいたら。そっとしてあげたり。手を差し伸べたり。


 誰かが笑っていたら。一緒に、笑いたい。


 そうやって、過ごして、生きていたら。


 いつか子どもたちが離れた時。


 心を委ねる事ができる、居場所が。


 ひとつくらいは出来ているかな。


 どうかな?。


 分からないけど・・・。


 きっと、そうだといいな。


 今は、夫が隣にいるけどね。 


 

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