雨と、母と、少女。


 世間は、連休だというのに、天気が悪くて結局どこにも行けなかった。


 最終日の今朝も、朝起きて外を覗くと大きな雨粒が、激しく木の葉やアスファルトの地面をたたきつけていた。


 カッパを着せて子どもをちょっと散歩させるには大分きつい雨だった。


 今日もどこも行けそうにない。


 私はため息をつき、カーテンを閉めた。


 雨が嫌いになったのはいつからだろう。


 子どものころは、そんな休日でも楽しかった。


 友達やメールや電話をしながら、一緒にテレビを見ながら、実況中継したり、好きな音楽についてたくさん語り合ったりした。


 雨の日は、スコーンやクッキーを作ったり、今みたいに小説を書いたりしていた事もある。こんな時だけは、私は母と仲が良かった。


 いつのまにか、私は家でそういった事をしなくなった。


 家で母が喜ぶ事をするよりも、お化粧をして、街に出るのが好きになった。


 小説も書かなくなったし、親ともほとんど話さなくなった。



 父親が、私が家族からどんどん離れていく、と言っていたらしい。




 だけど、私は、両親が好きな自分よりも。


 自分のなりたい自分になりたかった。



  初めて、ピアスをあけても。


 初めてお化粧をしても。


 今まで全く履かなかったスカートをはいて、ヒールのあるサンダルも履いてみても。


 母は、私が綺麗になったと、いつも喜んでくれていた。


 雨が降っていても、家で笑い合う事が少なくなっても。


 母は、そんな私を好きでいてくれていた。



 雨を眺めながら。


 私は、雨の日を、家で家族と過ごしていた、あの頃を思い出す。

 

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