第十話 他の生存者
「冷たいよー」
「ここから先は水ばかりだよ。この辺りで休憩する?」
「そうだな」
地下水路を歩き、二時間。
春が疲れてきたと声を零す前に休憩を挟むことに決めた。
「地下水路ってどこまであるかな?」
「さあ?」
「でも東に向かってるのは確実だね。方位磁石が東を指しているよ」
生見さんが持っている方位磁石はたしかに東を指していた。
「私達の他にこの辺りに生きてる人、生存者っていないのかな?」
「たしかにね。いたら合流して一緒に向かいたいね」
「そうだ。SNSで呼びかけてみるのはどうだ?」
「それ、いいかも」
「僕はスマホじゃないから二人に頼むよ」
俺は携帯の電源を入れ、SNSアプリを起動した。
「すげぇ」
「うん。もう、何人か呼びかけてる」
「どれどれ?」
ホームには複数の呼びかけをする投稿があった。
近くに集まろうという呼びかけは残念ながらなかった。
「これ見て!」
「何々? 『潜水艦に乗ってて状況を知らず、帰ってきたらおかしな生物がいて驚いています』。軍人!?」
「軍人さんは心強いね」
「他にも、陸、海、空で沢山軍人が生きてるって!」
「心強すぎだな」
「チャットアプリのQRコードも乗ってるよ。入ってみる?」
「そうだな。入ってみて損はないだろう」
俺もそのQRコードの投稿を探し、スクリーンショットし友達追加した。
するとすぐにグループへの招待が来、俺は招待された部屋へと入った。
「こういう時、SNSって便利だね」
「そうだな」
SNSをしていなかった生見さんはその便利さを今、知った。
「五十人……少ないのか多いのか分からない人数だね」
「少ないだろ。まあ、この部屋があることを知らないって人も多いだろうしこの数が生存者で確定ってわけじゃねぇだろ」
「そうね」
「とりあえずここの位置情報を乗せて近場の人を探してみるか」
「それじゃ、河野はチャットアプリの方よろしく。私はSNSで呼びかけてみる」
「了解」
「それじゃ、僕は春ちゃんの面倒を見てるね。二人共頼んだよ」
「「はい」」
「『初めまして河野水谷です』、っと」
位置情報の後に自己紹介をすると、すぐに既読が付いた。
ポコンと軽快な音が鳴る。個人的にやりとりをしたい人がいるらしい。
『初めまして
「富士宮さん……」
『俺は陸軍に所属している軍人です。現在は首都の某所の地下におり、指示待ち状態です』
「軍人か。すでに首都にいるってことはあっちが活動区域ってことだな」
「何か情報聞けそう?」
「分からない。なんせこの人は指示待ち状態らしいぞ」
「指示待ちってことか、何か良い情報を得てるってことなのかな?」
「どうだろうな? 政府の人間とか、あと皇族も生きてるか分からない状況だし、何も言えねぇな」
「そうだね」
「とりあえず、会話してみるよ」
「分かった」
『俺は高校二年生で、現在地下水路から首都圏に向かっている途中です。俺を含め、四人で行動しています』
『高校生……一緒にいるのは同級生ですか?』
『同級生一人とその妹。あと途中で知り合った大人の四人構成です』
『なるほど。こちらの生存者リストに名前を掲載したいので一緒に行動している人の名前を教えてもらえますか?』
「は? 生存者リスト?」
「どうかしたの?」
「いや、この富士宮さんさ俺達の名前を生存者リストってのに掲載したいらしくて」
「生存者リストって……何か嫌な響きね」
「たしかに。いいか?」
「私と春は大丈夫。生見さーん!」
「どうかした?」
「生存者リストっていうのがあるらしくて、そこに生見さんの名前を掲載するために教えても大丈夫か?」
「全然大丈夫だよ」
「よし」
『部屋にいる冷夏皇とその妹の春。生見一哉です』
『ありがとうございます』
『ちなみになんですけど、生存者リストとは何ですか?』
『政府が集めているその名の通り、生存者の名を掲載しているリストのことです。現在、五百名ほど名前があります』
『なるほど』
「リストに名前がある人は五百だって」
「そっか! 五百なら良い方かもね」
「あぁ」
だけど、たった五百人。
日本国民はほとんど死んでしまったことになる。
それにこれから死んでしまう人もいるだろうからもっと減る。
まだまだ生きている人がいるかもしれないがな。
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