攻めると言えばマシーン岡崎

 「攻め将棋」と言えばだれを思い浮かべるだろうか。塚田九段? 戸辺七段? 私は、岡崎洋七段である。

 岡崎七段は年齢制限ぎりぎりの26歳で四段昇段。若手の頃は全日本プロトーナメントでの活躍が目立ち、第18回には準優勝している。私もこの時の印象が強烈で、「決まった時の攻めはすごい棋士」と思って棋譜を並べることが多かった。

 「マシーン岡崎」という愛称も面白い。私はロボコップのように人間離れして攻撃する意味だと思っていたが、「精密機械のようだから」「好不調の波が激しいから」と諸説あってどれが正しいのかはよくわからない。ただ、棋譜を並べただけで「マシーンぽさ」は感じられる。普通の棋士ならば仕掛けないようなところで仕掛けが発動するのだ。現在のAIにも通じる意外性がある。ただ、岡崎の場合空振りに終わることも多い。中盤には駒損でそのまま押し切られる、という棋譜も多いのである。また、珍しい玉型になることが多いように感じる(2000年以前に三浦相手にミレニアムを指していることもある!)が、駒損してから耐え忍ぶ中で、できるだけ被害を少なくしようとした結果が多いのではないか。

 現在はフリークラスとなり棋譜中継される機会も減ったが、過去の棋譜を並べてみると改めて面白いので、是非興味を持った方は調べてみてください。というわけで、いくつか紹介します。


 


1995年 棋王戦

岡崎-佐藤康光


佐藤の陽動振り飛車から、押し引きがあった末に玉頭戦に。お互いに無理を通す棋風からか、玉頭戦になってからの方が派手な展開に。最後は佐藤の入玉を阻止して岡崎が勝利した。



2000年 全日プロ

岡崎-島


島の棒銀を右玉で迎え撃つ展開。序盤はやけに落ち着いていて、駒を貰ってから怒涛の反撃。不利になってからじっくり指す展開が多いせいか、優勢になっても落ち着いてじわじわ攻めるのが得意になっている気がする。



2001年 棋聖戦

岡崎-渡辺明


矢倉の岡崎は落ち着いている印象がある。じわじわ押して駒得、そのあとは丁寧に仕上げた印象。序盤で損をしないととても強い。



2002 竜王戦

岡崎-塚田

攻め将棋同士の一戦。序盤から香得。これは勝った。とは単純にいかず、塚田も追い上げる。しかし端角がいい手で、最後は端に角を捨てて詰め上げた。惚れ惚れするような手順。



2004年 王位戦

岡崎-深浦

なぜか相振り飛車に。いきなり角も飛車も切る。深浦が大駒を使って全力で受ける中、小駒だけで寄せ切ってしまった。岡崎は序盤で角がいなくなる将棋も多い気がする。



2012 順位戦

永瀬-岡崎

駒損のわかれだったが、途中あやしい中段飛車から混沌とした展開に。端に手を付けていたのが功を奏したか、最後はかなり攻め込まれながらも勝利した。



 まとめてから気が付いたのだが、6局中5局が岡崎が先手の将棋だった。一手でも早く仕掛けたい棋風だと、先後の差はとても大きいのかもしれない。そのあたりもマシーン味がある。まだまだ岡崎の攻め将棋を見たいので、今後の活躍も期待している。

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