ボードゲームが苦手な人生

 将棋に関する作品を多く書いてきた私は、数年前から将棋を教える仕事もしている。一応将棋はアマ三・四段ぐらいの実力だと思う。それを知っている人からは他のボードゲームも強いと思われることがあるのだが……実は弱い。

 囲碁は昔からしていたので、初心者というわけではない。しかし高校生の大会ではあまりの実力差に石を置いて教えてもらう始末で、大人になって碁会所に行ったら子供たちにボコボコにされて失意のままに帰ってきた。

 アプリで連珠やオセロをしてみるも、かなり負け越している。カタンではぼろ負け。ブロックスでは中盤で手がなくなり完封負け。

 チェスだけは将棋の応用が利くからか、そこまでひどくはない。おそらく私は、「将棋系以外のボードゲームがあまり向いていない人」なのである。


 その原因は何か。はっきりしていることがある。私は短期記憶と記号記憶が苦手である。とにかく直前のことをよく忘れるので、手札などを覚えておかなければならないゲームはとても困る。あと、数字や記号の違いや並びを覚えられないので、そもそもゲームを始められないことすらある。たとえば数字だと、6桁を越えるとその場ではまず覚えられない。アルファベットも苦手である。

 そのかわり、長期記憶と印象記憶は得意な方である。そうするとゲームがどう見えるかというと、「絵」や「動画」に見えている。将棋の盤面は、絵的に記憶するにはちょうどいい大きさなのである。そんな感じなので、細かい変化とかはなかなか覚えられない。ただ、「あ、これに似た局面を、二十年ぐらい前に青い表紙の本の真ん中より手前で見た記憶がある」とか、「NHK杯で○○先生がデビュー数年ぐらいの棋士相手に指していたことがある」という、とても曖昧な思い出し方はよくするのである。

 囲碁になると白黒がとても記号的で、盤面も広いため、ほとんどが「白と黒の絵」として記憶されてしまう。連珠やオセロもそうで、「見たことあるような形」までは絞り込めても、細かいところが記憶できないのでいつまでたっても定跡が覚えられない。数字にしても、「小さい」「大きい」などで印象がグループ化されるならともかく、「曲線二段的な数字(3・8)」「直線的な数字(1・4)」「上が大きい数字(7・9)」みたいな記憶の仕方をしてしまうので、間違った時のダメージが大きい。


 そんな感じなので、「ボードゲーム全般が得意な将棋好き」のなかでは肩身が狭いことも多い。「将棋ではできるのにこちらでは手を抜いているんじゃないか」と思われることもあるだろう。しかしできないものはできないのである。もちろん将棋ぐらい時間をかければ、今よりはましになるだろうけれども……

 悪いことばかりでもない。苦手なゲームがあるということは、将棋を教えるうえで相手が「根本的に苦手かもしれない」と思いながら対処できる。勉強すれば強くなっていくものだが、強くなり方は人それぞれだし、到達できる地点も人によって異なるだろう。「この子にとっての将棋は、私にとってのブロックスかもしれない」と思えば、優しくもなろうというものである。

 とはいえ、将棋以外も強くなりたいと思う気持ちはある。努力すればどこまで行けるのか、知ってみたい。今後将棋以外のボードゲームで、何か克服できたらまた記事を書きたいと思います。

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