電王手ラブ

 最近将棋のニュースは多く、世間から注目され続けているのを感じます。ただ、将棋ソフトに関していえば、強くなりすぎたためかなかなか話題になりにくくなっているかもしれません。

 将棋ソフトとプロ棋士が対戦する「電王戦」は、大きな注目を集めました。様々なドラマを生んだ電王戦ですが、終わってしまいました。まだまだ人間側に手段が残されているとわかった中での終了は、ちょっと残念でした。

 そしてもう一つ残念なことが。電王戦で活躍した「電王手くん」などのロボットを見る機会が減ったことです。


 最初は、ソフトの指し手を人間が再現していました。そのため対局の様子だけ見れば、従来の対局の光景とほとんど変わりがあれませんでした。しかし電王手くんの登場により、一気に人間対人工物というイメージがはっきりしました。

 電王手くんを作ったのはデンソー。はっきり言って私は、電王手君を見た瞬間にデンソーが好きになりました。だって、いきなり作ったのに洗練されすぎているんですもの。

 まず、ロボットアームだけという在り方が嬉しかったです。私たちはどうしても、ロボットと言ったら人型を想像してしまいます。それか、パソコンから何かが生えたみたいなものです。しかし、指すのに必要なのは腕なのです。必要なものだけで作った、そこが美しいのです。

 また、駒を吸い付けるという持ち方もよかったです。駒は大きさが違うため、つかむのは難しいでしょう。そこにこだわらず、人間とは異なる方法で持つというのはロボットらしくて大変良かったです。

 実はこの時期、別の将棋ロボットも作られていました。富士ゼロックスによる、「ドラえもん」の「ひみつ道具」作りにチャレンジする「四次元ポケットプロジェクト」です。ここで、「セルフ将棋」が作られました。こちらは再現なので仕方ないのですが、どうしても機能的でないように見えました。比べてみると、やはり電王手くんはかっこいいです。


 電王手くんはさらに進化して、電王手さんになりました。医療用ロボットアームをベースにして、駒をつかめるようになりました。洗練すると人間に近づくというのは、それはそれでワクワクします。

 さらに次の新電王手さんでは、消音化と成りの高速化が。そういうところを改善してくるのもいい感じです。

 見ていて楽しいですし、開発している人も楽しいのではないでしょうか。決して大量に生産して売れるというものではないでしょうが、ロボットの魅力を伝えるという意味では電王手シリーズの開発はとてもやりがいがあるのではないかと思います。


 そしてなんと、さらに進化した電王手一二さんは、双椀になります。人間と同じになったようですが、よく考えると両手指しはご法度です。ある意味双椀指しも、ロボットだからこそ、と言えるでしょう。

 この後も振り駒ができるようになったりしましたが、やはり電王戦あってこその電王手シリーズだと思います。以前小説でも書いたのですが、ロボットアームを使って遠隔地の人と指せたり、思念体が駒を使えるようになったり(特殊すぎますね)、そんな未来もあったらなあ、と思っています。

 実はあっと驚く新しい電王手シリーズの登場、ないですかね。待ってます。



初出 note https://note.com/rakuha/n/nc2039d364b89

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