セーラー服

ぼくはそらちゃんがだいすき。


そらちゃんは赤いランドセルじゃなくて、セーラー服を着るようになった。


一緒に公園に行ったり、泥んこになって遊んだりすることはなくなったけれど、そらちゃんはぼくのお散歩のために、毎朝早起きをしてくれるようになった。


みんみんと蝉が鳴く涼しい朝も、まだお日様が顔を出していない凍えそうな朝も、そらちゃんはぼくと一緒にお散歩に行ってくれる。


「今日はどこまで行くの?」


と、そらちゃんが言うから、ぼくはずんずんと先導をとる。


そらちゃん、大丈夫だよ。


ちゃんと朝ご飯の時間には帰るからね。


そらちゃんはセーラー服を着るようになってから、睫毛が下を向いている日が増えた。


そんなときはぼくのところにやってきて、ぎゅーっと首元に抱き付いてくる。


どうしたの?そらちゃん。


「ふぇーん。」


たまには声に出して泣く日もあった。


ぼくはそらちゃんの涙をただただ舐める。


「ありがとう、だいすきだよ。」


だいすきだって言ってくれるのはそらちゃんだけだから、ぼくはそらちゃんのことがだいすき。

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