第49話:青砂の流れる川8(戦闘)

 


 土と葦で作られた壁

 天井のない円柱形の空間

 月明かりが差し込む砦の中

 身を寄せあい恐怖に耐える獣人

 隅で眠る美しい二人のエルフ



 ■システィーナの視点



「オイ、起きろ。いつまで寝てるんだ!」

「ぅ、ぅう~~ん……」 うめく私。

「姉さん、アル。起きてくれ」

「「う……うぅ~~ん」」

 眼を開けると、神経質そうな顔と優しげな顔があって、楕円形に切り取られた星空が目に映る。

「あ、あれ? ここは?」 なぜ寝ているのか記憶がない。

「スラン? どうしたの?」 隣でアルの声。

 私たちは二人そろって寝かされていたみたい。

「フン、オークどもが来たぞ!」

「「オーク!」」

 二人してガバッと起きると、途端にめまいが! うわあ~~、頭がぐらぐらして世界が回る~~!

「しっかり、大丈夫だよ」 弟がアルの背中を支え「ごめんね。砦造りで無理をさせてしまって。戦いの場にかかりっきりで気づけなかった」

 反省しながらも、アルを優しく支える弟に、姉としては寂しいけれど、それでいい!

 はわぁ~~、アルは俯くと目の周りが赤くなった! 可愛い! 可愛い! 何でアルはこんなにも可愛いんだろう?

「フン、その様子ならお前は大丈夫だな」

「もうっ!」

 何よ! もうちょっと心配してもいいと思うわ!

「起き上がれ、オークが来るぞ!」

「そ、そうだ! オークだ!」

 私は思い出した! オーク襲来に備えて砦や防護壁やらを作っていたことを! その後の記憶がないのは、途中で気を失ったからだ!

「砦は完成した!?」

「ウム、よくやった」

 言い方! もうっ何なのよ、その偉そうな態度は!

 上体を起こすとまだ頭がクラクラするものの、次第に慣れてくる。この症状は霊力を使い果たした後に出る症状の一つだ。

「姉さんとアルが気絶してから六時間くらい経つけれど、霊力はどれくらい回復したかな?」

「六時間も……」 そんなに寝ていたんだ「マックスの二~三割くらいだと思う」

「私も」

「そうか。なら休みつつ、状況に応じて精霊魔法を使ってくれるかい?」

「「分かったわ」」

 と私は今の状況を訊ねた。

「オークたちが来たって?」

「うん、四キロほど離れた場所にいるらしい。部隊を半分に割って移動しているって」

「そ、そうなの!?」

 私はゆっくりと立ち上がると、クラクラする頭を振りながら矢を放つための台までやってきた。砦の壁の上部には、弓矢を射つための胸壁(凹凸を作った壁)を作ってあるの。胸壁から外を覗くと……


「はわ、ゾロゾロいる」

「川向うとこっち側で分けて配置するとコークリットさんが」

「はっ、そうだ! コークリットさんは!?」

「予定通りらしい。大丈夫だって」

「~~~~~~~っっ!!」

 うう~~っ! 心配だよ~~! また怒りの精霊が胸を焼いたらどうするの~~!!

「フン、心配はむしろこちら側だろう」 いつも以上に不機嫌な嫌味男が周囲を見渡して言う「この砦内を見ろ。女・子供ばかりで、外にはケンタウロスの戦士七名だ。これでオークを迎え撃たねばならん」

 ああ、言われて気が付いた。

 砦内では獣人の非戦闘員が葦で弓矢を作っている。このメンバーでオークやオーガー、ヘルハウンドの攻撃を耐え忍ばなければいけないんだ!

 あわわ、ハラハラしてきた! ソワソワと落ち着かなくて、何だかトイレに行きたくなってきた!


 とその時、外から怒声が響き渡る! はわわ、頭一つ大きいオークが! 何あの巨体! 遠目に見ても、周りのオークより背が高く横幅も大きい! 武器も私の身長くらいありそうな棍棒を軽々と振り回して!

「フン、あれが副族長のメスらしい!」

「「あ、あれが!?」」

 副族長はハルさんと罵りあっている! 何て大きい声!

 でもハルさんの言葉に!

 オークたちが叫び声をあげた!

「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

「「うわああっ!」」

 三百六十度、周囲全てから不快な威嚇の叫び声が!

 耳と頭が痛くなる声に思わず耳を塞いだ瞬間!

「殺ッチマイナアッ!!」

「「ブギヤアアアアアアッ!!」」

「「始まった!」」

 ビュビュビュビュッッ!

 左右の胸壁に弓矢がドドドドッ! と刺さる! さらに頭の上をピュピュンッ! と弓矢が通過した!

「「ひゃあっ!」」 私とアルは思わず身をかがめる!

「川向うのオークどもは忘れていい! 正面からくるオークどもを倒すぞ!」 ローレンの檄が飛ぶ!

「「はい!」」

 その正面からは!

 圧倒的速度で!

 黒い塊が!

「「グルアアアアアアアアッ!!」」

 ヘルハウンド! 圧倒的速度で!

 オークやオーガーを置き去りに! 第一次防衛ラインに迫る!

「な、何匹!?」

「じ、十以上!?」

 早すぎてっ!

「フン! 今だ! 『伏したる地精霊ノームよ! 解放せよ!』」

 嫌味男の声に、土人形の前にある草原が四ヶ所! 波打ち始めたら、土の下から!

 ファラルリザードが! 八匹飛び出した!

「「グルアアアッ!?」」

 突然の出現! 一足飛びの距離!

 驚き、真上や左右に飛び上がるヘルハウンドたち!

「「ゴアアアアアアッ!」」

 ファラルリザードが!

 射程内に入ったヘルハウンドを獲物と認識!

 三メートルもの巨体とは思えないほどの速さで、突進!

 瞬間的に怯んだヘルハウンドに組み付き、もんどりうつ!

「「ガルルルルッ!!」」

 どっちのうなり声かも分からない!

 でも巨大なリザードがヘルハウンドの首に咬みつき押し倒している!

「よし!」

 弟が握り拳を作る! ファラルリザードを利用しようっていう弟の作戦が当たった!

 ヘルハウンドが五匹、ファラルリザードに咬みつかれ押し倒されてもんどりうっている!

 他にも三匹のヘルハウンドがリザードと対峙し、炎の息を吐き出している!

 でも三匹のヘルハウンドがリザードの罠を抜け第一次防衛ラインに!

「「グルルアアッ!!」」

「『地精霊よ、突進を食い止めよ!』」

 弟の命令で地精霊の人形たちが棍棒を構えた! 迫りくるヘルハウンドに棍棒を振り回す!

「グルルアアアッ!!」

 振り回される棍棒をかいくぐり、腕に咬みつくヘルハウンド!

 土人形だから腕が壊れる!?

 と思いきや、蔓草で補強されたボディは咬み千切れず!

 土人形はそのままヘルハウンドを体全体で抱え込んで倒れこむ!

 三匹とも捕まえた! 捕まりながらも炎のブレスを吐き出すヘルハウンドたち!

 辺りが赤く染まる!

「今だ! 射てええええ!」

「「おらあああ!!」」

「「やあああ!!」」

 砦前のケンタウロスの戦士たちと砦にいる者たちで、一斉に矢を放つ!

 ドスドスドスッと土人形ごとヘルハウンドに矢が刺さり、何度も吐き出されていたヘルハウンドの炎のブレスが止まる!

「よし! ヘルハウンドは倒した!」

「「ブギイイイイイイイイッッ!」」

 と遅れて鈍足のオークとオーガーが! 土煙を上げながら迫って来る!

「「グオオオオオッ!!」」

 うわああ、野太い雄たけびと共にオーガーが!

 ヘルハウンドに食らいついたファラルリザードを!

 棍棒でヘルハウンドごとボコボコに! ひ、酷い!

 単体で潜んでいたファラルリザードがオークに咬みつくも、他のオークがボコボコにして!

 ファラルリザードの罠地帯を十数体のオークが抜けた!

「「ブギイイイイイイイイッッ!」」

「ひゃああっ!」

 何て雄叫び!?

 血糊でベトベトに濡れた棍棒を舐めながら!

 嗤いながら! 満面の笑みで叫ぶ!

「「ブギヤーーーハハハハハーーッッ!!」」

「「ゲアアーーーハハハハハハハハッ!!」」

「ひゃあああっ!」

 こ、興奮っ!? 狂乱!? 熱狂!?

 リザードやヘルハウンドの血を浴びたから!?

 腹の奥底から轟く、野太い嬌声が!

 怖いっ! 怖いっ! 狂気が!

「シスッ! 怖い!」 怯えるアル!

「だ、大丈夫! 皆いる! コークリットさんが、いる!」

 そう励ますけれど!

「「ひゃああっ!」」

「「うわああああんん!」」

 アルも子供たちも震え、泣く!

「「ブギヤアアーーーーッッ!!」」

 ドドドドドドッ!!

 重そうな巨体たちが! 喜色満面!

 ニンマリ顔で!

 嗤いながら突進!

 ひゃああっ! 何で喜んで!? こ、来ないでええっ!!

 恐怖を感じたその時!


 ズンッ! バスンッ!

 ドスンッ! バキッ!

 最前列を走っていたオークとオーガー数匹が!

 地面の中に突然落ちた!

「「ブギヤアァアッッ!?」」

「「ゴアァアアアッ!?」」

 歓喜とは異なる悲鳴の絶叫!

 胸から下が大地に埋まるオークの絶叫! 腰から埋まるオーガーの絶叫!

 落とし穴だ! 見事に嵌まった!

 でもただの落とし穴じゃないの!

 そのオークとオーガーにつまずいた後続が! 顔面から地面に!

 ズボッ! バキッ!

 逆さまになった格好で地面に半分埋まる!

「「ブギイイアアアアッ!!」」

「「グギャアアアアーーッ!!」」

 落とし穴に落ちたオークやオーガーが痛みで叫ぶ!

 顔面から落ちた者たちは叫びながら穴から這い出ると、目や鼻、頬に葦で作った串が刺さりまくってっ!!

 足から落ちた者たちも、足が串刺しになっているの!

「「グギャアアアアーーッ!!」」

「「わはははっ!」」 ケンタウロスの戦士たちが笑う!

「掛かってこいや! まだまだ落とし穴はたくさんあるがな!」 ハルさんが挑発する!

「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

 落とし穴に落ちた者たちの後ろで、オークやオーガーたちが怒り叫ぶ!

 耳を破るような圧倒的な叫び!

「「うわああああんん!」」 恐怖する子供たち!

「気をしっかり持て! 雄叫びに気圧されるな! 奴らも不死身じゃない! 倒せる敵だ!」

「そう! 見ていろ!」

 弟と嫌味男が矢を射る!

 その矢には赤いトカゲが掴まっていて!

 矢がオークたちの近くに刺さると、次の瞬間にはトカゲが炎を吐いた!

 ボボボオオオッ!! ボボボオオオッ!!

「「ブギャアアアッッ!」」

 動けないオークたちは次々に炎に包まれる! 痛みと炎で暴れるオーク!

「見ろ! 倒せるんだ!」

「邪魔ダアアッ!」「ボケガッ!!」

 ああ、後ろの無事なオークが!

 火に包まれたオークたちを蹴り倒し、あるいは炎の盾にして!

 火トカゲを殴り倒す! 何て奴らなの!? ケガをした仲間を盾にするなんて!

「「ブゴオオオオッッ!!」」

 無事なオークたちは地面を棍棒で叩きながらやってくる! 凄い振動!

 幾つかの落とし穴は見破られ、突破される!

 でも、これでいい! 少しでも奴らの突進が弱まれば成功!

 奴らの足止めが重要で、数とパワーで一気呵成に来られることを防ぎたいってコークリットさんが!

 と突然、川向こうのオークたちが叫ぶ! 一斉の絶叫!

「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

「「うわああああっ!」」

 空間がビリビリ震える! 子供たちは耳を押さえて泣く!

「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

 仲間がやられたこと、暴れられないことに川向こうのオークたちが怒り、矢を放つ!

「「うおお!?」」

 慌ててC字型の壁に隠れるハルさんたち!

「「きゃああ!」」

 砦にもビュンビュン飛び交い、壁に刺さる!

「ムガアアアッ!!」

 イラつき怒った川向うのオーガーがドスドス走るとジャンプして!

 葦の原を半分以上飛び越えた!

 途端にファラルリザードが集まってきて!

 でも襲われる前に川へ飛び込んだ!

 川は深いところで三メートルくらいあるけれど、オーガーなら胸くらいで! 余裕だ!

「川を渡ってこっちにやってくる気だ!」

「マズイわ!」

 それを真似したオーク数匹が葦の原を飛び越えて!

 ファラルリザードにやられる者もいるけれど、川に到達する者も!

 マズイマズイ!

「させるか! 『水精霊ウンディーネよ、顔にまとわりつけ!』」

 嫌味男の命令に、川の水が盛り上がると顔にまとわりついた!

「ガボッ!? ゴボボッ!!」

「『オークの顔にもまとわりつけ!』」

「「ブボッ! ブボブボッ!?」」

 四匹のオークとオーガーが! 川の中でもがき苦しむ!

「くたばれ!」

 しばらくもがき苦しむと、ぶくぶくと沈んで行って……

 四匹のオークとオーガーはうつぶせのままぷかーっと浮かんだ!

「「よし!」」

「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

 これなら大丈夫だ! そう思っていたら!

 落とし穴を突破したオークたちが! ついにハルさんたちの元に! 十匹以上いる!

「ぶらあっ! エル、エム! 俺に続け!」

「「おうっ!!」」

 槍を装備したハルさんが駆け出すと、エル、エム兄弟も飛び出す!

 それを見たオークの一匹が!

「ブギイイイイッッ!!」

 棍棒を振りかぶって!

 ジャンプ一番、飛びかかってきた! 何て跳躍!

「ぶらあっ!!」

 ドドドドッ! 目にも止まらぬ速さでハルさんは刺突!

 走りながらなのに! ハルさんの槍は、オークの両目、喉、心臓を正確に貫く!

「ッッ!!」

「エル、エム! 常に動いて横撃! 奴らの機動力を奪って孤立した者を討て!」

「「おうっ!!」」

 ハルさんたちは走り周りながら、機動力と攻撃範囲の長さを生かし、駆け抜け様にオークやオーガーの足を刺突する!

 エルさんとエムさんも足を狙う!

「「ヌガアアアッ!!」」

 ハルさんを挟み討とうとオークとオーガーが!

 でもハルさんは、僅かに近いオークを先に攻撃!

 両目をつぶすとそのままオークに突撃して蹴り飛ばし、オーガーから離れていく! 上手い!

 躱すだけじゃない! 突破も! ケンタウロス強い!

「「うりゃあっ!」」

「「ブギャギャッ!!」」

 エルさんとエムさんも息の合った攻撃! 機動力を奪い、動けなくなったところでとどめ!

 あっという間に七匹ものオークたちを討伐する!

「「強い!!」」

 ケンタウロス強い! コークリットさんの陰で分からなかったけれど、本当に強い!

 足を引きずりながら逃げていくオークとオーガーを、ハルさんたちは深追いせずC型の壁に戻る。

「オドキッ! 情ケナイネエッ! コレダカラボンクラ共ハ!」

 ドスドスドスッとあのボスオークが!

 手には私の頭ほどの岩を持ってる!?

 あ、あれを投げる気!? で、でも大したことは……?

 砦もC型の壁も、葦を補強の筋として作った土壁だもの! 特に砦は厚みを五十センチにした特注だし、そう簡単にはダメージを食わないはずよ!

「岩ヲ探シテ持ッテ来ナッ!! ソコラ辺ニ埋マッテルヨッ!!」

 ボスオークはそういうと、岩を持った左手を前に半身に!

 棍棒を持った右手を大きく振りかぶった!

「「あれは!」」

「「もしや!」」

「「打つのかっ!?」」

「ヴリャアアアアッ!!」


 ゴキンッ!!

 ズゴンッッッ!!


「「きゃあっ!」」「「うおお!?」」

 甲高い音とほぼ同時にっっ! 振動が砦に走ったっっ!

 はわあっっ! 何今の!?

 ど、どこに当たった!?

「あっ! あそこ! 胸壁のところ!」

「あっ!」

 胸壁が! 凸のところが! 半分以上ひしゃげて! そんな馬鹿な!

「両手ノ方ガイイネッ! サア、岩ヲ渡シナッ!」

 ボスオークは岩を軽くトスすると両手で棍棒を構え!

 左足をあげるとっ!

 踏み込んでっ!


 ゴキンッ!

 ドゴオッ!


「「きゃああっ!」」

「「うおおっ!?」」

「「か、貫通した!?」」

 そ、そんな! 砦に風穴が空いて!

 こ、子供なら通れるくらいの穴が空いてっ!

「ブッヒャッヒャッヒャッ! 案外、脆イネエッ! バンバン持ッテ来ナッ! 棍棒の奴ハ、打ツンダヨッ!」

「「ブヒッ!」」

 あああっ! マズイマズイマズイ!! どんどん岩を集めてる!

「うわああん! 怖いようお母さん!」

「砦が壊れちゃうよう!」

 ケンタウロスの子供たちが怯えて泣き叫ぶ! マズイマズイ!!

「クッ! こうなったら補強と穴埋めだ! 慌てている暇などないぞ!」

「姉さん! アル! 壁を二重化しよう!」

「「わわ、分かった!」」

 修復と補強を開始したのも束の間!


 ゴキンッ! ドゴオォッ!!

 ゴキンッ! ボガアァッ!!


「「ひゃああっ!!」」

「「うわああ!!」」

 振動が! 砦が四方八方から揺れて!

 正面のうち、一発は貫通するの! ボスオークの一撃だわ!

 嘘でしょ!? 何てパワーッ!?


 ゴキンッ! ガキンッ! ゴキンッ!

 ドゴオォッ! バコオォッ! ボガアァッ!


「「きゃああああ!」」

 左右からの岩も貫通する!

 オーガーの打った岩だ! 近い分、威力が弱くならず貫通するんだ!

 ドゴオォッ! ドゴオォッ!

「「うわああああんん!」」

「身を小さく! 伏せて!」

 私は叫ぶ!

 ドゴオォッ! ドゴオォッ!

「クソッ! このままじゃ、壊れるぞ!」 嫌味男が叫ぶ!

「砦の修復が間に合わない!」 弟も!

 ドゴオォッ! ドゴオォッ! 振動が四方八方から!

 砦の内側からでも分かる、へこんで内側に盛り上がって来る石の跡!

 ボロボロパラパラと砦の破片が!

 骨組みである茎部分がぶつ切りになって!

「ブッヒャッヒャッヒャッ! ボコボコニナッテ来タネェッ!」

 ゴキンッ! ゴキンッ!

 け、形勢が! 逆転した!?

 まさかこんな方法が!

「サア着イテオイデ! 少シズツ前進ダヨ!」

「「ブヒッ!!」」

 ああっ、穴から見える! ボスオークたちが近づいて来た!

 川向こうのオークやオーガーに石を打たせて!

 正面のボスオークたちが、ニヤニヤしながら!

 砦の外ではハルさんたちが!

「距離を詰められたら、外側こっちもマズイ!」 ハルさんが叫ぶ!「そうなる前に! 元を断つしかない!」

「「おうっ!!」」

「うって出るぞ!」

「「おうっ!!」」

 ええ!?

 砦の向こうでハルさんたちが!

 ダメ! さっきの比じゃないほど圧倒的に向こうの方が多いんだよ!?

 ハルさんたちは槍を高々と掲げ、いななく!

「行くぞぉっ!」

「「おお!」」

「ダ、ダメ!」

 ダメ! ハルさん、ダメ!!

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