第46話 松山①

 樹里さん達三人の融合を終えて、防府に一度戻ると東指令とも話して、百式を防府基地の防衛に運用して貰う事にした。


 コックピットにも乗れることを教えると、樹里さん達三人が取り敢えず専任パイロットとして練習する事に決まったようだ。

 ☆5ランクの融合をしているから、反応速度とか考えたら妥当な人選だろうね。


 取り敢えず防府基地の防衛はこれで大丈夫だけど、現状では野菜の目途は立ったけど、蛋白源が不足するよね。


 家畜なんかは、モンスター達の被害でほぼ壊滅してるし、当然輸入も期待できない。

 備蓄してあった、冷凍の商品なんかはとっくに腐ってる。

 結構、大きな問題だ。


 松江の草食動物ダンジョンを、潰してしまったのは結構痛かったかも。

「ミコ松山ダンジョンの敵は何だ?」

「松山は、ゴブリンとオークなのじゃ。他のモンスターに比べると知能があるし、武器を使う。それに……」


「それに? どうしたの?」

「性欲が激しい……」


「ああ…… ありそうだね。でもゴブリンなら定番の敵と言うか、結構初期状態でも自衛隊や警察の人達なら倒せてたんじゃないの?」

「そうだとは思うのじゃが……」


「魔物らしい魔物と言うか、それに変異してしまった人たちの思考がどういう風になってるのかが問題なのじゃ」

「うちは女の子だらけだし、それだとなんか困りそうだね」


 そう考えていたら、沙愛と奈沙の双子が「零式で行けばいいじゃん」と言って来た。

「そうだな。守るのもそれなら安心だしそうしよう」


 方針を決めて、松山に向かう事にした。


 基地で合体コンバインすると目立つから、いつもの野球場に転移で移動した。

 収納からパーツを取り出すと、それぞれが装着フィッティングして、合体を行う。


『キシャーン』と言う音と共にギャリオン零式の瞳に光りが宿った。


『この合体までのタイムラグをどうにかする方法が有ればいいんだけどね』

『巨大化と出来るようになったし、他の機体を倒せばもっとすごい能力を色々手に入れれるかもしれないよ?』


『お、里香、それは在りそうな感じだ。他の機体探しも楽しみだな』


 そう言いながらミコを里香の翼の上にのっけて、松山に向けて飛び立った。



 ◇◆◇◆ 



 零式で訪れた松山の街は、かなりカオスな様相を呈していた。

 道後温泉に出現したダンジョンの入口辺りは、ゴブリンとオークにより完全に蹂躙されている。

 生存している人間はほぼ居ないと思われる。


『どうする? この状況。人が避難している場所を探して状況を確認した方が良いのかな?』

『勇気君。この状況だと一刻も早くダンジョンを潰す方が良いと思うよ?』


『了解。美里さんの指示に従うよ』


 零式は、ドラゴンのブレスや、フェンリルのアブソリュート0みたいに広範囲で一気に殲滅する技を持って無いのが少し痛いが、女性中心のこのメンバーでは、バラバラで戦うのは避けたいからしょうがない。


 早速大量のゴブリンを蹴散らしながら、ダンジョンに侵入して行った。

 この街では物資を補給する事も既に厳しいだろう。


 一層ではゴブリン☆1が中心だ。


 ゴブリン ☆

 体長1.2m

 体重25㎏


 種付け


 絶対欲しくないスキルだな。

 俺はトランスフォームだから勝手に覚えてしまうけど……



 こんなの相手にしても、時間の無駄だから通り道のゴブリンを殲滅しながら、2層に向かう。

 階段側に行くと、☆2のゴブリンの割合が高くなってくる。


 ゴブリンソードマン

 ゴブリンランサー

 ゴブリンランチャー


 の3種が居る。

 オークも時々いるが、本来の階層に居る訳じゃないオークや、高位ゴブリンたちはまっすぐに出口に向かって、走って行くばかりで俺達の零式に積極的に襲ってくるわけでも無いから放置して先に進む。


 二層でダンジョンの鑑定を掛けると、隠し部屋があった。

「ミコどうだ?」

「100人程の人の気配があるのじゃ」


「人なのか? モンスターじゃ無くて」

「うむ、人じゃ」


 ちょっと悩んだ。

 最初のダンジョン発生から、結構な日数が経っているし、ここで生きてる人たちは食糧や生活用品はどうしてるんだろう……


「勇気君? 何を考えているの?」

「香奈さん、ここで生活をしている人たちってどう言う情況なんだろうと思ったら、扉を開けるのが怖くて……」


「そうだよね。でもここにいる人達はまだ一生懸命生きようと努力してるんだと思うよ。今勇気君が手を差し伸べれば未来につながる命もある筈だよ。少しでも考えたなら、助けてあげるべきじゃないかな?」

「そっか……」


「あ、勇気。開けるのはちょっと待って。香奈さん。ここは2層だよ? ここに辿り着くのに生身のままで辿り着けたとは到底思えない。ゴブリンかオークと融合をしている人たちがいると思って間違いないよ。その場合どんな状況か覚悟は必要だと思うな」

「あーそっか愛美は松江の馬男たちのひどい仕打ちを見てるから心配になるのは無理もないな。でも里香や愛美だってモンスターと融合した事実は変わらないし、ゴブリンやオークと融合した人が必ずしも悪と決まってる訳じゃ無いから、会って見てから判断しよう」


「解ったよ。リーダーは勇気だから勇気の意見に従うね」


 そして俺は、ギャリオンの形態のままで隠し部屋の扉を開けた。

 そこには、肌が緑色をした人々が集まっていた。

 恐らく全員がゴブリンと融合をしている。


 男女比は、男性が3割ほどで後の7割は女性だった。

 いきなり入って来た3mサイズのロボットに驚き、みんなが壁際に引き下がり、男性が前に出て、女性たちを庇うようなしぐさを見せている。


 このままじゃ、会話できないな。

 俺は隠し部屋の、扉を閉めると。解除リリースの指示を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る