第38話 防府で仕切り直し
俺達がダンジョンリフトを使って外へ戻ると、ダンジョンマスターが変わった事による仕様なのか、一度全員がダンジョンの外に出された様で、1000人程の人がひしめき合っていた。
美里さんに頼んで、下瀬二佐を見つけ出して貰って状況の説明をお願いした。
「下瀬二佐。このダンジョンは私達のパーティーによって攻略されました」
「蘭一尉それはどういう事だね?」
「これ以降ダンジョンからキノコが溢れ出る事は有りません。ですが、中へ入っていく事で戦闘は行えます。それと2層以下の敵は野菜や果物をドロップする事が出来ますが、☆5ランクの敵で非常に強力なので、現状は倒せないと思った方が良いです」
「そうか、だがここから敵が溢れない事が確実な事であれば、既に外に出ている敵だけを、倒せば平和が取り戻せるという事なんだな?」
「このダンジョンに関してはそうですが、熊本や松山からの敵が襲って来る可能性が高いので、それに対してどう備えるかが重要ですので、その辺りの対処をよろしくお願いします」
「解った。蘭一尉達はこの先どうするのだ?」
「私達は、他のダンジョンのスタンピードを止める事を優先して行動します。既に溢れた敵に関しては、その地域で暮らす人たちに任せる事になりますが、色々な事を平行して解決して行けるほどの余裕はありませんので、ご了承ください」
「了解した。当面は熊本方面からの、ゴーレムの襲来に備えて尽力する事にしよう」
決して楽な戦いでは無いが外にあふれている、クラスのゴーレムであれば、消防車と、重機などを使えば全く対応が出来ないと言うレベルでもなさそうだし、頑張って欲しいな? と思いながら俺達はこの場所を離れる事にした。
「勇気、次はこのまま熊本へ戻るの?」
「いや、一度防府に戻って仕切り直しをしよう。ここで獲得した野菜や米を届けたいし」
人目が無くなった所でビルの屋上へと上がり、「愛美、転移頼むな」と告げて防府へと戻った。
格納庫内では父さんと母さんが物資の整理をしていた。
「勇気、いきなり現れるとびっくりするじゃ無いか」
「ああ、ごめん。居ると思わなかったから。母さんも手伝てるんだね」
「ここには物資が沢山あるけど一度に出すわけにも行けないし、あるって事を他の人が知ってると、今度は隠してるって言い始めるのが人の
「そっかぁ。面倒だよね。でも父さん達はそれでも他の人達の為にそうやって働く事を選ぶの?」
「そうだな。こんな時代になったからこそ、人間らしく居たいと思ってる」
「すげぇな父さん。ちょっと見直したよ」
「勇気君。私は東指令に色々状況報告してくるね」
「解ったよ美里さん。生鮮品を下ろしたら、少し休んで熊本に向かうからね」
「了解だよ」
「父さん。冷蔵庫って使えるのかな?」
「今は電源を落としてあると思うけど、使えると思うぞ」
「そっか。結構な量の野菜とか手に入れたんだよね。取り敢えず冷蔵庫案内してくれたらそこに出すけど? 後はお米や果物もあるから」
「おお、それはみんな喜ぶと思うぞ。後さぁ夢ってまだ融合とかしてないよね?」
「ああ、ここの基地内に居る一般の人達はまだ融合はして無いな」
「ちょっとさぁ、高めの能力を身に付ける方法が手に入りそうだから、実験したいんだけど、絶対じゃ無いから、他の人で試すなんてできないんだよね。で、父さん達に協力して欲しいんだけど、駄目かな?」
「それは、倉敷から勇気が連れて来た人達のように凄い腕力が発揮出来たり穴掘りが出来たりする能力なのか?」
そう聞かれて俺はトランスフォーム野菜達の能力を鑑定してなかったことを、思い出した。
ちょっと待ってね。調べてみる。
『鑑定』
『トランスフォームベジタブル』☆☆☆☆☆
体長2m
体重10㎏
剛速球
促成栽培
野菜選択
吸収Ⅴ
不動
成長促進
あっ……
あそこに居た植物系のモンスターはみんな、動く事が出来なかったのを忘れてた。
もし、トランスフォームが俺みたいに、自由にできるんじゃ無かったら、一生動かずに、野菜作り続けたりする存在になっちゃうな。
まさに植物人間だよ……
そんな危険な賭けを、家族に出来ないな。
トランスフォームじゃ無しに、融合ならまだ安心感はあるけど、、答えが解らない以上は、そんな危険の状況に家族を晒すわけにいかないぞ。
「ゴメン父さんやっぱりさっきの話はちょっと保留だ。能力調べたらかなり危険な状況になりそうだから」
「ん? そうなのか? まぁ勇気がそう思うなら別にいいが。今は倉敷から来てくれたお爺ちゃん達の能力が凄く、役に立つ事が解って。この防府基地の周りに、堀を作る事にしたんだよ。狼たちは泳げるけど、堀に飛び込んだタイミングで、電気ショックを与えれば、撃退できるからこの基地はかなり安全が確保できるんだ」
「そうなんだ。倉敷なら融合を希望する人達をダンジョンに連れて行って、ある程度は、育てる事は可能だけど、虫人になる事を希望する人っているのかな?」
「問題はそこなんだよな。見た目は狼とかなら格好いいとかあるけど、蟻の触覚が生えるのは、不人気そうなんだよな。それと……」
「それとどうしたんだい父さん?」
「変異の証である部分は、変異をした人に取って致命的な弱点になるそうだぞ。取ったりしちゃうと、融合した人物は簡単に光の粒子になって消滅する事が解ったらしい」
「まじで? じゃぁうさ耳とか、触角とか尻尾とかを、もし取っちゃうと、死体も残さずに消えちゃうって事?」
「そうだ。完全犯罪になってしまう可能性も高い」
「これだけ人が死んでいる中で、今更感もあるけど、それはある程度この世界が、落ち着いて来たら、かなり重大な事になりそうだね」
「避難所の指導者の性格にもよるだろうけど、この防府基地のように、秩序が保たれるケースの方が少ないかもしれない」
俺が父さんと話している間に、里香と愛美と双子達は、うさ耳先輩の所へ、果物の差し入れを持って遊びに行ってた。
香奈さんもお爺ちゃん達に、お土産持って行ってたよ。
俺は格納庫に大量の米を出して、冷蔵倉庫に案内して貰った後は、野菜と果物も放出して置いた。
美里さんは、2時間程で戻って来て、何故か東指令と、まだ融合をしていない、女性隊員を2名伴っていた。
「勇気君、少し相談があるんだが聞いて貰えるかい?」
「はい、協力の確約は出来ませんが、お話を聞く事は構いません」
随分俺も、対応が逞しくなってきちゃったかな? ちょっと前の俺なら、自衛隊の基地司令にこんな事なんか絶対言えなかっただろうけど……
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