第37話 博多⑥
「なぁみんなどう思う?」
「何が? 勇気君」
「このダンジョンは、香奈さんの意見が正しいとしたらミコがマスターに成っても4層以下の危険な植物が付着する事で、外で繁殖する可能性が高いからさ」
「ああ、確かにそうだね」
「それなら、マスターには成らずに潰しちゃうのが正解じゃないかな?」
「うん、勇気君がそう思うなら、それで良いと思うよ」
「それじゃぁこの後は、ドラゴンで一気に行くから、みんなはミコの背中に乗って付いてきてね」
「「「はーい」」」
「あ……」
「どうしたの勇気君?」
「トランスフォーム解いてすぐだったから、変身出来なかった」
「どうするの?」
「少し休憩しようか?」
「うん、賛成。お腹もすいたしね.勇気君ご飯出して」
「了解だ。でもコンビニ弁当の在庫ももう無くなって来たから、食料をどうかしなきゃな」
「そうだね、今度防府基地に戻った時に、大量に調理して勇気君が仕舞っておくのが良いのかな?」
「ああ、それが一番いいだろうね。全国の物流センターでまだ、荒らされてない所もあると思うから、ダンジョンの攻略より資源の回収を優先した方がいいかもね」
「あの? 勇気君ってアイテムボックスとか使える人なんですか?」
「そうだよ奈沙ちゃん」
「それだったら、この地域は電気が使えるから、全国から集めて来た、食料を出来るだけ備蓄するとか出来ないのかな?」
「うーん。出来なくは無いけど、結局発電するにも燃料が必要だし、今のこの状況で海外からメイン燃料の天然ガスとか運んで来る事が不可能だと思うよ?」
「そっかぁ。モンスターの魔核とかエネルギーに出来ないのかな?」
「あーそれは出来るかもしれないけど、方法が解らないかも」
「ミコ? アカシックレコードで解るか?」
「解るのじゃ。魔核からのエネルギーを抽出する事は出来るのじゃ。ただしその技術は、ドワーフしか持たぬ。ギャリオンの駆動エネルギー技術の応用なのじゃ」
「そっか、でもギャリオンって何のために作られたのかな? ドーガさんのギャリオンが百式だったなら、世界中を探せば後99体のギャリオンがあるって事だろうし、不思議だな?」
「もしかしたら、ギャリオンを中心にした世界の再生も可能かもしれないよね」
「美里さん、でもそれって、結局ギャリオン自身に思考能力があるわけじゃ無いから、それを使う人次第って事だよ」
「勇気君の言う通りかもね。今のこの全てを破壊された世界で、圧倒的な力を手に入れた人間が果たして、みんなの為を思った行動がとれるかどうかは解らないよね」
「今はまだ、私達も勇気君以外の力を持つ存在を知らないから、解らない部分が多いけど、他のギャリオンを何らかの方法で手に入れた人や団体がどんな行動を起こすかは、とても心配な事だね」
「そろそろ行けるかな?」
ドラゴンへのトランスフォームが可能になり、6層を出発した俺達が7層を訪れると、再び大きな方針の変更を迫られる状況になった。
「何だよこのフロア」
「凄いです。一面の畑ですね」
7層は様々な野菜が実る、広大な畑だった。
だがそこに存在する。全ての野菜は見た目は美味しそうだが、そのすべてがモンスターだった。
「どうする? 美味しそうだけど。結構な攻撃力で襲い掛かってくるな」
「倒したら、野菜ドロップとかする?」
「やってみる」
俺は一面の畑にブレスを吐き野菜型モンスターを消滅させると、一面に美味しそうな野菜達がドロップしていた。
「これは…… やっぱり残さなきゃだめだね」
「何か俺ギャリオンの存在理由が分かった様な気がする……」
「え? どういう事?」
「資材を確保するために作られたんじゃ無いかな? 食料とか鉱物とか」
「あ、成程ねそれなら意味も解る気がするね。確かに」
「このフロアは様々な敵がいたような気がするけど、モンスターの種類は一種類何だな。見せかけているだけみたいだ『トランスフォームベジタブル』☆5って言う種類だよ」
「え? 勇気君それって、もしかして勇気君と同じ能力を身に付ける事が可能かもね?」
「成程な。いきなり生身の身体でこの7層に辿り着ける存在がいるかどうかは解らないけど、実験する価値はあるかもな」
「まだ融合をしていない一般市民で、生きてる人って、防府に戻れば結構いるよね」
「でも赤の他人を育てたくはないな」
「勇気君の家族とかはどう?」
「本人にも確認しなきゃいけないけど、やって見る価値はあるかもだな」
ちなみに今いるメンバー達は、トランスフォームベジタブルを倒しても、トランスフォームを覚える事は出来なかった。
更に8層に降りると、フロア全体が果樹園であらゆるフルーツが襲い掛かって来たけど、ブレスで切り抜けた。
ここのフルーツは『トランスフォームフルーツ』☆5という魔物だった。
野菜とフルーツのドロップで結構食糧問題にめどが立ってきた気もするな。
きっと、生鮮品は既に貴重な存在だから喜ばれるだろう。
更に、9層目に進むと一面の田んぼに稲穂が黄金色に輝いていた。
名前は、『トランスフォームグレーン』☆5だったけど、これってもしかしたら、フロアに足を踏み入れた人間のイメージする主食穀物で変化しそうな気がする。
パンをイメージしながら、この階層に来たら、一面の小麦畑っぽいよな。
田んぼの稲穂をブレスで焼き払うと、精米済みのお米が10㎏袋でドロップしたけど、明らかに俺のイメージが、優先されて形になった気がするな。
しかしこのフロアの攻撃は、普通の人が乗り切る事は難しいかもしれない。
時速200㎞は超える速度で飛び回る米粒何て、対処のしようがないだろ?
「うーん完全に農産物はこのダンジョンで何とかなりそうだけど、倒せる実力と俺の収納スキルが獲得できる手段が無いと現実的ではないよな。恐らく次が最終階層だ。
この流れで来るとボスってどんなのが出るんだろうな。
最終層に向かう階段を下りて行くと地面全体が蠢いているのが見える。
「やばいな。地面に足を付いた瞬間に、からめとられるぞ」
「勇気君、空中ももっとヤバそうですよ」
見た感じで2㎞程度先にある巨大な樹木が本体のようだが、周囲を大量の葉っぱが渦巻くように飛び交い。更に巨大な枝も鞭のようにしなりを上げながら動いているのが見える。
救いは階段に滞在している間は襲われないことくらいか?
恐らく階段は各フロアを繋いではいるが、空間としては別な次元に存在しているんだと思う。
だって天井の高さとか、階層ごとに全くあって無いし……
全長は100m程もありそうだ。
取り敢えず鑑定だ。
『レージトレント』☆☆☆☆☆☆
体長100m
体重3000トン
暴れる
絡めとる
暴風
天候操作
吸収Ⅹ
不動
成長促進
殆ど使えそうな感じは無いけど、一歩でもこのフロアに足を踏み込めば吸収されて終りそうな敵だ。
まぁ俺以外ならな!
そのまま羽ばたき、空中に浮かび上がると、中央部分に向けて、特大のブレスを吐きだした。
巨大なレージトレントは光に変わり、俺に吸い込まれた。
『ダンジョンの踏破が確認されました』
『踏破者に継承の資格を確認。ダンジョンを継承しますか? YES / NO』
「勇気、このダンジョンも継承して良いのか?」
「ああ、やってくれ」
『ミコがダンジョンマスターに就任しました』
『ダンジョンの設定を行ってください』
①スタンピード ON/OFF
②発生数 0~∞
③発生種族 胞子植物、種子植物、狐種 階層ごとに指定可能
④ダンジョンリフト ON/OFF
「ミコ、スタンピードオフで発生数は任せるが、一層の椎茸だけ残して2層から8層は、全部トランスフォームベジタブル、フルーツ、グレーンにしてくれ。9層は狐で埋め尽くして置けば、そう簡単に突破は出来ないだろ?」
「了解なのじゃ」
博多ダンジョンはこうして世界の農場として生まれ変わった。
現状では、俺たち以外に収穫できないけどね……
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