第36話 博多⑤

「ほーそれが神機ギャリオン零式の姿か。純白の美しいフォルムだ。だがわしらの最高傑作は、ご先祖様を凌駕する」


 その場に現れた機体は黄金色に包まれ、かなりの戦闘力を秘めた感じに多数の武器も見て伺える。


「どうだ。美しいであろうギャリオン百式マークⅡだ」

「派手だね…… そっちの機体にも搭乗者が乗っているの?」


「そんな古いシステムでは無い。俺の意識とリンクしてこの場から指示が出せるのだ」

「そうなんだぁ、そんなにたくさんの武器とか一人で全部制御してるって事なの?」


「そうだ。俺の意識とリンクさせるコントローラーが反応速度を10倍に高める機能を持つからな」

「凄いね。それじゃぁ始めようか」


『みんないいかい? 俺の予想だと勝てる筈だから、一斉に攻撃をしてみて』

「「「はーい」」」


 俺はその場から動く事無く、百式が突っ込んでくるのを、待ち構えてしゃがむ態勢を取ると、『今だ』と指示を出し、全員が一斉に攻撃をばらまいた。


 里香が黄金に輝く羽をまき散らし、美里さんがミサイルを発射する。

 愛美が、熱線を膝からだし、香奈さんが氷の槍を突き出す。

 沙愛が百式の攻撃をラウンドシールドで受け止めた瞬間に、奈沙がビームサーベルで百式の頭部を斬り飛ばした。


「馬鹿な…… わしらの技術力の結晶が一瞬だと?」

「えーと、まだ名前聞いて無かったね、俺達の勝ちでいいよね?」


「あ、ああ。ドーガだ。この街の頭領をしておる。教えてくれ何が違ったんだ?」

「あー、単純にロボとしては百式の方が全然強いと思うけど、零式は搭乗者の能力をそのまま上乗せ出来る様になってるからね。仮に百式に同じような機能が付いていたとしても、俺が事前にドーガさんを鑑定していたから、絶対に勝てると解ってたんだよ」


「百式を搭乗タイプにして、勇気殿が操縦すれば零式に勝てたという事か?」

「恐らくね。えーとさ。ドーガさん達はこのダンジョンの中でどれだけの時を過ごしているの?」


「それはどいう事だ? わしらの種族はダンジョンの中に住んでいるわけではない。この雲の上の工房に住み続けるだけだ」

「え? 博多ダンジョンの中からしか来れない訳じゃ無いの?」


「違う。鍵となるのはギャリオンの機体だ。零式から九十九式までの機体所持者がダンジョン内の隠し部屋に入れば、このドワーフの街への入り口が開かれる事も有る」

「そうだったんだぁ じゃぁさ他の種族、エルフとかに会うのも同じような条件が有るの?」


「そうだエルフの街は、ユグドラシルの樹に存在する。ユグドラシルに辿り着くにはエルフの秘宝を所持した状態でダンジョンの隠し部屋に入る事で、辿り着けるはずだ」

「エルフの秘宝って何?」


「わしらは知らん。だがエルフは街へ行かなくても会う機会はある筈だ。直接会った時に聞けば良いのではないか?」

「解った。この街って当然ロボだけじゃ無くてモンスターに有効な武器とか売ってたりするんだよね?」


「勿論だとも、料金は魔法金属か酒で払ってもらう事になる。お前たちは百式を買う権利を手に入れたが、酒1年分を用意できるのか?」

「1年分ってどれくらいだ?」


「ここに住むドワーフ1000人が毎日飲める量だ」

「良く解んねぇよ基準が。取り敢えず出してみるからそれで、何日分なんか教えてよ」


「解った」


 俺が収納から酒を取り出して並べると、どうやらビールだと3リットルが1人の一日分。

 ウイスキーやウオッカなどだと720㎖1本が1人分。

 ワインは720㎖で2本

 日本酒は1800㎖1本

 焼酎は900㎖1本らしい。

 

 1000人×365日ウイスキー365000本の量って結構多いな。

 流石に持って無い。

 でも、別に俺達はお酒飲んだりしないから、あるだけを置いて行き、また手に入ったら持って来るから、量が足りた段階で、譲ってくれれば良いと伝えて置いた。


「勇気よ、わしらを信じるのか?」

「疑う理由も無いしね」


「気持ちよいな。いつでも遊びに来い」


 俺達は、ドワーフの街でそれぞれの武器を買い揃えて4層の隠し部屋入り口へと戻った。


 人間の体の時に使う武器を持っていなかった俺は、ドワーフの街でロングソードを購入し、沙愛と奈沙の姉妹は日本刀を、香奈さんはハンマーを購入した。


 美里さんと里香は自前の爪があるし、愛美は一角うさぎの角を持っているから、取り敢えずは購入しなかった。


 ちなみに、奈沙と沙愛の姉妹は普通に高校の夏服だ。

 チェックのスカートに白いブラウス、襟元にはスカートと同じ素材のリボンタイが結んである。


 ブラウスに透けるブラジャーがとても刺激的だ。

 こけし頭だけどね……


「さぁ、ミコの知識レベルを上げに行くぞ」

 

 俺達は、4層を出発して下層へと向かった。


 5層では、『ゴーストウイロウ』☆4『キラーローズ』☆5

 6層では、『万年杉』☆5『メルト草』☆5


 という種類の敵が現れたが、万年杉の花粉を吸い込むと強烈なくしゃみが出て、涙が止まらなくなる。

 まったく視界が取れない程の効果だ。

 何故ロボのギャリオンに効果があるのかは謎だ?

 これの質の悪い所は、何故か状態異常耐性でもレジスト出来ない。

 

 そして地面に広がる、メルト草はハエトリソウの巨大な物が、地面に同化した様に、点在していて落ちれば名前の通りに溶かされるのだろう。


 危険極まりないが、俺達は零式の能力で飛びながら戦ったので、問題は無かった。

 ミコもギャリオンが飛ぶ時には小型化して、ギャリオンの肩の上に乗っている。


 スギ花粉でくしゃみをし続ける姿が可愛いと思った。

 そして、階層の鑑定を続けていると、隠し部屋を見つけた。


「今度こそミコの知識レベル上げたいな」

「敵は居るのじゃ」


 俺達が隠し部屋に入ると、激しく光り輝く存在が有った。


『フォトシンセサイズ』☆6


「何だこいつは?」

「えと、勇気君そのまま直訳すると、光合成だね」


「それってなんか攻撃手段とかある?」

「さぁ?」


そう思いさっさと倒しちまおうと思った瞬間に、瞬く間に部屋中が4層から6層までに出た敵で埋め尽くされた。


「なんでだ?」

「もしかして、私達が通過してきてる間に、体に種とかを付着させてたとか?」


「それがこの光合成で一気に成長したって事か? 面倒だな。美里さん一度解除だ。愛美はみんなに捕まえさせて浮かんでいてくれ」


「「はーい」」


俺は合体を解くと、すぐにドラゴンにトランスフォームしてブレスで一気に増えた敵を焼き払った。


「ミコ、止めをさせ」

「解ったのじゃ」


ミコが雷を落としてブスブスと煙を上げたフォトシンセサイズを、最大化して一気に踏み潰した。

 

「「あ、あわわ、ひゃああ。ド、ドラゴン」」

双子コンビが同じセリフをシンクロさせながら、地面にへたり込んで、じわーっとシミを広げてた。


「ああ、びっくりしちゃったよね、気にしないでいいからね」

 そう言いながら、里香がさっと浄化スキルを使って双子コンビを綺麗にしてあげた。

「初めてだっけ?」


そう言いながらトランスフォームを解除した俺に、

「「まだ経験なんて無いです。痛くしないで下さい」」


「ちがっ、そうじゃなくてドラゴン形態を見たのがって話」

 俺は慌てて、収納から新しい服を出して着込んだ。


「えっ違うんですか? みんなに見られながら失うのかと思ってました。でも初めては沙愛と一緒にってずっと思ってたから、ちょっと夢が叶ったとか思ったのに……」

「俺はここの誰ともそんな事して無いし、まだ経験も無い」


「え、勇気君? そこカミングアウトする必要あった?」

「しょうがないわね唯一の大人の女である私が優しく教えてあげようか?」


「美里さんだって、絶対経験ないくせにあんなこと言ってるよ里香」

「だよね愛美」


「失礼ね、私は経験豊富な大人の女なの」

「それって、ビッチ発言ですか? 美里さん」


「ビッチって香奈ちゃん。私はちゃんと運命の人に捧げるって決めてるから守り続けてます」


「「「やっぱり」」」


「あっ……」


「それ系統の話は良いから、ミコどうだ知識LV上がったか?」

「上がったのじゃ。この『フォトシンセサイズ』は知識Ⅴを持ってたのじゃ」


「それなら俺が倒せばよかったな。一気にミコに並べたかもしれないのに」

「おそらく。また同じクラスの敵に出会わないとⅦには上がれなかったのじゃ」


「そっか、それならしょうが無いか」


「でもさ。光合成で4層以下のモンスターが繁殖してしまうなら、もし下の階層の自衛隊の人達が4層まで来て、その後で地上に戻ったりしたら、地上にいきなり4層以下の植物系の敵が出回る事にならないかな?」

「香奈さんって、実は結構頭良かったりする?」


「いえ普通ですよ?」


 でもちょっとだけ香奈さんの顔がドヤってた。

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