第33話 博多②

 俺達は博多駅から程近い商業施設内部に出来ている、ダンジョンの入口へと向かった。


 ダンジョン周辺は強烈な死臭が漂っていた。


 見える場所の遺体は移動してあるようだが、恐らく周辺の建物の中に運び込んであるのであろう。

 


「美里さん、火葬なんてする予定は絶対無さそうだよね? ドラゴンのブレスで、消滅させて上げたほうが良いんじゃ無いかな?」

「そうだよね、でも誰に許可を貰えばいいのかとか、そんな実力がある事を知られた時に要請される面倒な事態とかを考えたら、何も手を出さないのが正解なんじゃ無いかな?」


「そっかぁ、中途半端な情けを掛けちゃうと、そうなる可能性が高いか。解ったやっぱり何も手は出さない事にするよ」

「うん。冷たいようだけどまだ熊本のゴーレム達の事も有るし、希望を持たせても問題解決にはならないからね」


 でも、この入り口に来るまでキノコモンスターには会って無いって言うのが、逆に凄いな。中にどれだけの人がいるんだろ?


 俺達はダンジョンの中へと、入って行った。

 内部では、2/3の人は、自衛官や警察、消防と言った制服を着用していた。


 そしてダンジョンのキノコ達と戦っている。

 流石に、既に銃弾などは使い果たしてしまっているのだろう。基本的にはみんなバールやスコップと言った物を、武器としている様だ。


 シイタケの様な広めでこげ茶色の傘が頭部にある『魔椎茸』☆1


 どう見ても毒キノコだろ? って思うような真っ赤な傘に、黄色の丸い斑点がちりばめられている『ポワゾンマタンゴ』☆2


 マツタケの様な形と言うか男性のシンボルにしか見えない形の『突撃茸』☆3


 の3種類がいる。

 突撃茸なんて絶対、『歩くち〇こ』とかの名前の方が解りやすいと思うけどな……


 キノコと融合した人は、髪型が強制的にマッシュルームカットになる様で、

 進化形態は、髪の色で解る。


 ☆1赤茶色

 ☆2黄色に赤い斑点

 ☆3こげ茶色


 に変化するようだけど、☆3になると形もやっぱり、ち〇この亀頭っぽい。

 きっと女子には耐えられない進化だろうな……


 余りにも綺麗に髪がまとまっているので、パット見はキノコの傘が乗ってるように見えたが、一応髪の毛が強制的に固まってキノコの傘に見せている様だ。

「これってさ、禿げちゃってた人にはもしかして嬉しい進化だったりする?」

「でも…… 突撃茸にまで進化すると、自殺したくなるよ…… これは耐えられないね」


「愛美さん…… 酷いな」



 俺達の能力で戦うと目立ちそうなので、何もせずに2層へ向かう事にした。

 みんなに念話で語りかけた。

『周りに人がいなくなりそうな4層までは極力戦わずに進もう。目の前に偶然現れた敵だけを倒せばいい』

「「「はーい」」」


「美里さんが、自衛隊の人に話しかけた。防府基地所属の蘭一尉です。このダンジョン内の探索責任者の方に話を伺いたいのですが?」

「はい! 少々お待ちください」


「自衛官の人は、美里さんの階級章を確認したら、凄いキビキビした対応になって、報告へ行った」

「美里さんって偉いんだね?」


「まぁ一応、この年齢では出世してるほうかな?」

「凄いね」


「惚れた?」

「いつもの残念な感じのイメージの方が強いから今はまだ、そう言う感情では無いかな? でも居てくれて凄い助かってるとは思ってますよ」


 先程の自衛官が戻って来て、「ご案内します」と敬礼をした。

 返礼をして、後ろについて行くと、40代くらいのいかにも自衛官!って言う感じのごつい人が居た。


「春日基地所属の下瀬2佐だ、防府から来たんだって? 情報通りの狼の様だな」

 美里さんより上官みたいで、今度は美里さんが敬礼して自己紹介をした後に、話をしていた。


 でも…… この下瀬二佐という人の頭は、ち〇こ頭だった。

 ちょっと、話してる美里さんの表情も、どう反応していいのか困ってる感じだな……


下瀬二佐を鑑定してみると、


 下瀬達也 41歳

 胞子人

 180㎝

 75㎏


 称号

 マッシュルーマー

 

 ギフトスキル

 融合

  【突撃茸】☆☆☆

 睡眠胞子

 混乱胞子

 生命力吸収

 状態異常耐性Ⅲ

 毒胞子

 突撃

 精射


 へぇ、☆3で7つもスキル枠があるなら、そう悪く無いかも知れないけど……

 精射

って、酷いスキル名だな。


 どんなスキルか気になったので、詳細鑑定をする。

 

 気持ちを高め吐き出した精により、胞子類を回復させる。

 これは、胞子系統限定の回復スキルなんだろうけど…… 絵面を想像したら子供に見せたくない状況になりそうだな……


  美里さんが。下瀬二佐との会話を終えて、戻って来た。

「ここの部隊で3層までは行けてるそうだよ。隠し部屋なんかは見つかって無いみたいだね。でも突撃茸に通常武器が効果なくて行き詰ってるんだって」

「あれ? それでも倒せてるんだろ?」


「それがね、突撃茸に回復スキルを使わせたら、一定時間動かなくなるらしくて、それで足止めが精いっぱいだって言ってたよ」

「そうか、俺達はさっさと下層階に進もう。2層で隠し部屋に入ってミコが知識レベルを上げれたら、そのまま熊本に戻るのもありだし」


「解ったよ先に進もう」


 そして2層に降りると殆ど人は居なかったので、キノコ達を倒しながら進み、ダンジョンの鑑定を行うと隠し部屋が確認出来た。

 

「ミコどうだ?」

「生命反応が3つじゃな。ありゃ? 戦っておる様じゃぞ?」


「人が居るのか? 行こう」

 俺は、入り口のレバーを回すと中へと侵入した。


 隠し部屋の中では、黄色いキノコ頭に進化した女の子2人が、サボテンの様なモンスターと戦っていた。

 戦っていると言うよりは、一方的に針に刺されて居て、もう長くは持たない感じだな。

 一応、横取りしたとか言われたら面倒だと思って、聞いてみた。

「大丈夫? 助は必要な感じ?」

「あ…… 見てのとおりでやばいです。助けて下さぁあああい」


 その返事を確認して、ミコに指示を出すと、九尾の狐状態に戻ったミコが、雷を落として、一撃でサボテンを倒し、宝箱が現れた。

「ミコ? どうだ知識は持ってたか?」

「うむLV2の知識を持って居ったのじゃ。わらわの知識はまだ6のままじゃな」


「残念だな。取り敢えずこの2人を治療するぞ」

 そう言って、収納からポーションを取り出し、二人に飲ませると傷は塞がったが、失われた体力が回復しない様だ。


「ねぇ勇気、キノコだから、さっきの胞子類限定の回復スキルって言うのを使わないと駄目とかじゃ無いの?」

「ああ、あれか。使ってみるか?」


 俺は、突撃茸にトランスフォームすると、精射スキルを発動した。

 想像通りって言うか、駄目だろこれ……


「シュゴイデシュ」

「アーン」


 香奈さんが顔を真っ赤にさせて手で顔を覆ってるけど、指はしっかり隙間が空いている。

 他のメンバーも、ちょっと恥ずかしそうにガン見してる……


 トランスフォームした俺の頭頂部から、白濁した液体が飛び散り、二人の上に降りかかると、漸く体力も回復したようだが、それにしても酷い絵面だ。

 頭から顔に掛けて、べったり白濁した液体を掛けられるとか、どんな状態なんだよ。

 俺は、里香にすぐに浄化スキルを発動させた。

 ようやく見た目も綺麗になったけど、これは使いたくないな。


 俺は、トランスフォームを解除すると、すっ裸状態で2人の前に立つ形になってしまった。

「えっこのまま私達やられちゃったりしますか?」

「チガッ…… 」


 状況的に、面倒になりそうだから、さっさと服を着て、この二人に話を聞く事にした。

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