第32話 博多①

 俺達は、ギャリオンと言う新しい形態を手に入れたが、まだ性能は未知数だ。

 サイズも合体状態で3mの今の大きさだと、30m超が当たり前のボス戦では不安も残る。


 取り敢えずは、ギャリオンのパイロットになる残り2人の仲間と、熊本ダンジョンのマスターに成る為にミコの知識LVをⅦに上げる事が目標で、エンシェントドラゴンへとトランスフォームすると博多へと向かった。


「美里さん事前情報だと博多はキノコだよね? 何か注意点みたいなのが有るのかな?」

「胞子を吸い込んでしまうと、状態異常報告があるのは睡眠と混乱みたいだよ、睡眠状態で寝てしまうとキノコに寄生されてミイラみたいになっちゃうし、混乱状態になると、殺し合いを始めちゃうらしいの」


「人が?」

「うん……」


「危険極まりないな。キノコは燃やしてしまえばいいけど、人に襲われたらどうする? 返り討ちで倒すのは簡単だけど、人を殺せるのか?」

「恐らくなのじゃが、わらわの癒しで混乱は治る筈なのじゃ。後は恐らくキノコに進化すれば、耐性が出来る筈なのじゃ」


 取り敢えず、行って見るしか無いな。

 

 博多の街に到着すると、これまでに行った街と比べると一つ大きな違いがあった。

 施設や建物が至って綺麗なのだ。


 全く破壊らしい行為はされていない。

 これなら、胞子問題が解決出来るなら街の復興も容易なんじゃないだろうか?


 どっちにしても、この街で暮らすためには胞子に対する耐性を付けなければならないのは、間違いなさそうだけど……


 俺は、まず博多駅の駅ビルの屋上へと着陸してみた。

 あれ? 結構想像と違う展開だった。


 普通に人がいる。

 髪型って言うか頭の形が変化してるけど……

 結構な数の人の姿を確認できた。


 情報が無かったから解らなかったけど、倒そうと思えばそう難しく無く倒せたんだろうな?

 これは、聞いて見るしか無いな。


 俺はトランスフォームを解除すると、取り敢えず服を着て、ミコにもいつものワンピースを出してやり、みんなで階段を下りて行った。


 やばいな……

 逆にキノコ人間になって無い俺達の方がメッチャ目立ってる……


 ここは、高校生の俺が人と話すよりは、自衛官の美里さんに任せるのが正解だと思い、対応をお願いした。

「勇気君に当てにされるとちょっと嬉しいね。もっとお姉さんを頼っていいんだからね!」


 ノリノリで先頭を切って、駅前の交番に入って行った美里さんは、自衛官の身分証を出して、キノコ頭の上に無理やり帽子を乗せたお巡りさんと話を始めた。俺達は、交番の外で待つ事にして、街の様子を眺めている。


 外を出歩いている人間は、みんな棒きれや大きなスコップのような物を持って行動してる。

 男女比率は2対1位で男性が多い感じかな。


 モンスターの姿は見かけない。

 でも他の街と決定的に違う要素がある。


 電力が生きている。

 車も走っているけど、数は少ない。


「ミコ、どんな状況なんだろこれ?」

「単純に、倒し方さえ判れば敵としては弱かったという事じゃな。一匹倒して融合さえしてしまえば、胞子に対しての耐性が出来て、後はダンジョンの外に出て来る程度の敵は対処可能になったって言う所なのじゃ」


「勇気君、私だったら…… キノコ頭になるくらいなら生き残りたくなかったかも……」

「里香…… もしかして、女性比率が低いのはその辺りが原因かもな。確かにお洒落なお姉さん系の人は、ほとんど見かけないし…… でも、この街は被害はこれ以上広がらないのか?」


「熊本のゴーレムが辿り着いてしまうと、キノコに対処が出来るとは思えぬから、安泰では無いのじゃ。それと……」

「ん? どうしたミコ」


「博多ダンジョンはキノコダンジョンでは無いのじゃ」

「え? どういう事だ」


「3層まではキノコが出るのじゃが、4層以降は植物ダンジョンじゃな。強力じゃが階層移動が出来ぬ敵ばかりなのじゃ」


「そうなんだ、どっちにしても攻略をするっていう事には変わりないし、植物だったら、何が有効かな?」

「特攻効果があるのは火じゃな。光や水は吸収して強化してしまうのじゃ」


「火は、今の所、香奈のバーニングしか使えないな。俺もゴーレムにトランスフォームしたらいいけど、効率悪そうだし…… あ、ギャリオン使ってみるか不都合が有ったらエンシェントドラゴンで消し飛ばしちゃえばいいし、みんなで合体してた方が、守るのも楽だしな」

「なんか……私達ってまだあんまり力になって無い感じ?」


「愛美、そう言う訳じゃ無いけど、少しでも楽に攻略できる方法を考えないと、戦いを楽しみたいわけじゃ無いからな」

「そう言われてみたらそうだね。リスク回避が一番大事だよね」


 そんな話をしながら、美里さんが戻って来るのを待ってたら。

 キノコ頭の婦警さんに敬礼をされながら、美里さんが出て来た。


「どうだった美里さん? 博多の状況って聞けたの?」

「うん。やっぱり最初の一週間で6割以上の人がやられちゃって、その後は融合すれば、胞子の耐性が出来る情報が広まったお陰で、持ち直して来たんだって。インフラが殆ど生きてるから、この福岡県全域と佐賀県、長崎県はテレビ放送もローカルなニュースだけは放送されてるそうだよ。インターネットなんかも、この地域の中だけは情報収集が可能みたいだね。サーバーが他の地域にしか無い情報は全く見れないらしいけど」


「そうかぁ、でもキノコな人ばかりだと他の地域のモンスターと戦うには厳しい感じもするよね」

「俺達も、さっさとダンジョン突入して、キノコの能力を手に入れよう。でも状態異常耐性は欲しいけど、里香達が手に入れるには何かの能力と入れ替えないといけないのがネックだよな」


「ねぇ勇気君?」

「なんだ愛美?」


「キノコに変身した人たちは、ダンジョンに突入したりしてないのかな? 倒すのは簡単なんでしょ?」

「あ、そうだなその可能性は高いな。取り敢えず俺もこの姿のままで突入するよ」


「ミコの癒しは、その姿でも使えるのか?」

「使えるのじゃ、わらわは、トランスフォームでは無いから、この姿でも全ての能力は使えるのじゃ。ただ服のサイズが無いから、この姿で大型化するのは駄目なのじゃ。きっと発禁な感じになるのじゃ」


「ああ……確かにな。ロリ露出は規制厳しそうだからな…… まぁ取り敢えず行くぞ」

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