第27話 倉敷④

 俺達は最終層に辿り着くと、目の前に巨大な女王アリらしきモンスターが現れた。


「ミコ、ミコがダンジョンマスターに成る条件にラストアタックはミコが取らなければならないとかあるか?」

「それは、大丈夫なのじゃ勇気に統率された中に居れば、マスターには就任できるのじゃ」


 だけど、この女王アリって気持ち悪いな腹の中がオレンジ色に光って、うねうねして見える。

 全長も50m近くはあるからドラゴンな俺よりもでかい。


 鑑定をしてみる。


 テラクイーンアント☆☆☆☆☆☆

 

 孵化

 増殖

 自爆

 飛翔  パッシブ

 統率  パッシブ

 体力Ⅷ パッシブ


 自爆とか面倒な予感しかしないし、増殖ってなんだ?

「ミコ最大化して里香や爺ちゃん達を守ってくれ」

「解ったのじゃ」


 ミコが最大化したのを確認したら、俺は迷わずにブレスを女王アリに吐きかけた。

 命中する直前に一瞬膨らんだように見えたが、その直後に巨大な女王アリは消失して行った。


 だが…… おかしい何も変化がない。

 ここが最終層じゃ無いのか?


 そう思った瞬間羽音が聞こえた。

 何百匹かのハネアリと共に先程の女王アリをそのまま縮小したようなアリが飛び立っていた。


 これがおそらく孵化と増殖スキルなのか? ブレスが炸裂する寸前に代変わりを果たしていたようだった。


「愛美、さっきの蟻地獄戦と同じように雨を降らせろ。ミコは相手が濡れたら雷だ」

「「了解」」

 

 すぐに発動された豪雨と、雷Ⅴの効果はてきめんで、ぶすぶすと煙を上げながら羽アリと新たな女王アリは落下して光へ替り、ミコに吸い込まれていった。


『ダンジョンの踏破が確認されました』

『踏破者に継承の資格を確認。ダンジョンを継承しますか? YES / NO』


「勇気、継承を確認してきたが継承して構わないんじゃな?」

「ああ、やってくれ」


『ミコがダンジョンマスターに就任しました』

『ダンジョンの設定を行ってください』


①スタンピード   ON/OFF

②発生数      0~∞

③発生種族     蟻種、狐種 階層ごとに指定可能

④ダンジョンリフト ON/OFF


 これってもし俺が知識レベルを上げて討伐してたら、俺がトランスフォーム出来る全ての種族が選択できるようになったんじゃないか?

 もしそうなら今後の愛美や美里さんの進化にも有効手段だな。

 オリハルコンウルフを発生させれる階層とか用意出来れば、フェンリルにも手が届くかもしれない。

 まぁ俺が女王アリには成れていないから、可能性は低いけどな。


 ミコが俺に表示項目を確認して来たので、スタンピード無し、1万匹、蟻、ONで伝えると、「勇気アリは1万匹程度の発生にすると、サイズがデカくなってしまうみたいじゃ」

「じゃぁ、無限設定が良いのか?


「無限じゃと、スタンピード無しでは共食いを始めて、勝手に進化するみたいじゃ」

「面倒だな、勝手に進化しない範囲で発生させておいてくれ」


「了解したのじゃ」


 設定を終えると、その場に魔法陣が現れているのを確認した。

「これが、ダンジョンリフトなのか?」

「そうなのじゃ」


 全員で、ダンジョンリフトに乗ると、ダンジョンの入口まで戻されていた。

 俺は人間の姿に戻っていて、当然裸だった。


「また興奮したのか? 若い身体が羨ましいぞ」

「だから違うって、言ってるだろ」


「香奈ちゃんがまた隠す振りしながら指の隙間からしっかり見ておるぞ、今夜辺り誘えばOKな筈じゃ頑張れ少年」


 相手にしてたらキリがないので、服を着て、今使ったダンジョンリフトを確認する事にした。

 

「入る時はどう使えるんだ?」

「試してみたほうが早いのじゃ」


 ミコの言葉に従いもう一度中へ入ると、階段を降りたところへ魔法陣が存在していて、上に載ってみると『正木勇気様は最終層まで到達を確認。到達範囲で任意の階層を選べます』


 と声が聞こえた。

 勝手に個人情報読み取りやがって。

 とは思ったが、便利だからこのままでいいか。


 そして地上に戻ると爺ちゃん達に声を掛けた。

「爺ちゃん達どうするんだ?」

「そうじゃな、折角元気な体を取り戻したし、どうやら随分強い身体のようじゃから、人々の役に立つことがしたいのう」


「そうか、きっと爺ちゃん達な俺達を除くと世界最強クラスに強い筈だから、出来れば防府の基地に行って、避難してる人たちを助けてあげて欲しいんだけど、駄目かな?」

「わしらはただ死ぬのを待つだけだったんじゃから、人から求められる事があるなら、十分に嬉しい事じゃ。なぁ婆さん達もそうじゃろ?」


「クソ爺に婆さん呼ばわりされるのは気に入らないけど、人の役に立てるのは嬉しいよ。避難場所に連れて行って貰えるかい?」

「皆さんありがとうございます。きっと皆さんの存在は避難生活を余儀なくされている人たちにとって、希望になります」


 美里さんが、お爺ちゃん達にお礼の言葉を掛けていた。

 ちょっと残念女性なイメージのある美里さんだけど、こんな所は幹部自衛官なんだなぁって思って少しだけ見直した。


 俺達は愛美と手を繋ぐと、防府基地の格納庫へと転移をして、倉敷ダンジョンの討伐を終えた。

 果たして俺達以外の人類が、最終階層に辿り着いて、ミコが強制償還される日はあるのかな?


 基地司令の東さんに、香奈さんとお爺ちゃん達を紹介して、防府基地の守りに協力して貰えることを伝えると、凄く喜んでもらえたが、香奈さんが「あの……私は勇気君と一緒に、ダンジョンの攻略に行くのは駄目ですか?」


 って言い始めた。

 一応みんなの意見を聞いて見たら、「名前しりとり繋がりだし、しょうが無いんじゃない?」って愛美さんが言い始めたので、香奈さんも攻略チームとして、一緒に行動する事になった。


 今回の倉敷ダンジョンで新たに手に入れた情報により、種族進化をおこなえばそれまでのどんな病気を抱えていても、回復する事等暗いニュースばかりだった、現状に一筋の光明は見えた。


 俺達が攻略した倉敷ダンジョンの周りは、ヘリが着陸できるだけの余裕は十分にあるし、今回仲間になったお爺ちゃん達が、付き添えばまだ融合を果たしていない人が、蟻人に進化するくらいなら十分な戦力なので、病気治療目的とかだと倉敷を利用するのもアリなのかな?

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