第26話 倉敷③
俺達は、香奈さんとお爺ちゃん達の5人を加え総勢10人で倉敷ダンジョンへと向かった。
のんびり戦うつもりはないので、最初から全力で討伐をして行くつもりでエンシェントドラゴンへとトランスフォームした俺は、まずダンジョン入り口辺りへとまた溢れ出している蟻に向かってブレスを吐きかける。
総数で蟻の数は10万匹を超えていたのだろう。
あっという間に、香奈さん達5人はソルジャーアントからサージェントアント、ジェネラルアントと2段階進化した。
ダンジョン自体は入口が狭いだけで中は普通に広かった。
俺は遠慮なしにブレスを吐き、2層目に辿り着くころには、更に進化して4段階目のキングアントへと進化していた。
この時点で既にお爺ちゃんやお婆ちゃんは見た目も、完全にシャキッとして、精々40代のナイスミドルな感じの男性と美魔女っぽい女性に変わっていた。
当然蟻の触覚はあるけどね!
今まで若い世代の人達の進化した姿しか見ていなかったので気付けなかったが、進化と共に肉体が効率よく活動できる、状態程度には若返るようだ。
「こいつは、凄いぞい。身体も股間もみなぎる物を感じるぞ。よねさん菊江さん後でわしらと熱い時間を過ごそうぜい」
「あらいやだよ、徳三さん。こんな若い人たちの前で誘われると恥ずかしいじゃないの。でも嬉しいよ」
「………………ねぇ、勇気。どうする?」
「俺は知らん。大人の恋愛は勝手だろ? 里香」
「香奈さん、どうしたらいいと思いますか?」
「あ、はい。そうですね…… 昨日まで立ち上がる事も満足に喋る事も出来なかった、よねさん達があんなに楽しそうにしている姿を見れて、嬉しいです。応援したくなりました」
「いいんだ……」
2層目でも、同じようにブレスで焼き払いながら隠し部屋を見つけ出すと、部屋の中へ侵入した。
そこは砂状の床になっていて中央部分に向けて床が崩れていく。
「蟻地獄か、愛美、豪雨で水浸しにしろ」
「了解だよ」
「ミコ、水浸しになったら、雷落として止めをさせ。こいつを倒したらミコの知識レベルⅥに届くだろ?」
「大丈夫じゃと思うのじゃ」
「ここなら気を付ければ人を育てるのに最も都合が良いダンジョンだから、是非ミコにマスターに成って置いて欲しいんだ」
「解ったのじゃ、でもこんなに簡単に進めるのは圧倒的な範囲攻撃力のある、勇気だけだと思うのじゃ、普通の人は2段階目になる前に食い破られて死ぬと思うのじゃ……」
「ナパーム弾みたいのでも駄目か?」
「恐らくこの甲殻は燃えないのじゃ」
「そうか…… まぁそれでも俺が一緒に来れば問題無く戦力育成には使えるし、方針は変わらないよ」
「了解なのじゃ」
結局ミコの雷攻撃は有効で、ギガアントライオン☆4を倒したミコは、知識レベルⅥへと能力が上がった。
俺は一度トランスフォームを解除して、再度ドラゴンへ変身できるようになるまで、休憩を取る事にした。
「おお、勇気君やる気満々じゃな。いきなりみんなの前ですっ裸とは、若いって素晴らしい事だな。じゃが被っておるな、日頃から剥いて置かないとそのまま成長を妨げるぞ。自分で意識して剥くようにしなさい」
「…… 権六さん。凄く貴重なアドバイスを頂けて、感謝してますけど、これは、不可抗力って言うかドラゴンになると服破れちゃうんで仕方が無いんです。皮問題は努力します……」
「おお、そうじゃったかてっきりわしらのトークで興奮したのかと思っておったぞ。香奈ちゃんなぞ手で目を抑えたふりをして、しっかりと指が開いておるからの、一押しすれば行けるぞ! 頑張るんじゃ」
90越えのじじい達には、羞恥心なんて言葉は存在しない様だった……
俺は、取り敢えず服を着て、部屋の中にある宝箱に向かった。
「ミコ罠はどうだ?」
「大丈夫なのじゃ」
宝箱から出て来たアイテムは『エクストラスキル』と言う追加スキルアイテムだった。
要はスキル枠を一つ増やす感じだな。
今の所俺は困って無いから、里香に使わせる事にした。
「勇気君ありがとう、これって何でも登録できるのかな?」
「枠さえあればいつでも入れ替えは出来るから、好きなのいれとけば良いんじゃないのか?」
「フェロモンでも入れて、勇気君に添い寝でもしたら、襲ってくれるかな?」
「無駄な事に使うんじゃねぇぞ」
「だって、どんどん女の子増えてきて私の存在感薄くなってるような気がするから」
「そんなのは気にする必要も無いだろ。今は少なくともモンスターに襲われる心配をしなくてもいい環境を、どうやって作るのかが一番大事だろ?」
「へぇ、勇気君なんかカッコいい事言ってるね。世界の指導者とか目指しちゃう?」
「まさか? 俺がそんな事する訳無いだろ? 俺は自分の家族や今までいなかったけど、今は大事な仲間がいるから、里香達が安全に暮らせる場所を作る事くらいしか考えて無い。顔を見た事も無い様な人たちを助ける義理も無いしね」
「そう言いながら初めて会った、私やよねさん達も救ってくれたじゃ無いですか」
「香奈さん。期待はしないでね。俺は自分勝手な行動しかできない、いじめられっ子だから、もし今俺をいじめてたやつらを見かけたら、平気で殺しちゃうかもしれないし、善人じゃ無いって事は、自分でも解ってるからね」
「そうなんだ……」
「勇気君。私は勇気君の行動を信じるよ。今、防府基地で暮らしてる人たちだって、勇気君の支援が無かったら1週間も持たずに全滅しても不思議じゃ無いしね」
「美里さん。俺が暴走しない様に、しっかり見てて下さいね」
「うん、勇気君のがちゃんと剥けて、大人になる様子を観察させてもらうわ」
「美里さん…… どっか発言が残念ですよね……」
俺が再度ドラゴンへとトランスフォーム出来る状態になったので、その後も一気に階層を下りて行き、香奈さんと爺ちゃん達は俺と同じ☆5『アダマンアント』まで存在が上がった。
この頃には爺ちゃん達は30前後? って言っても不思議じゃない程の気力、体力共に充実した見た目に変化していた。
香奈さんは殆ど見た目変わんないけどね。
正確には、触覚の色とかお尻の形が変化の度に少し変わるけど、基本的な髪の毛何かの色は変わらないから、ウルフに比べると変化が地味だよね。
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