第10話 広島完結

 ミコが成長して、今俺達が一番欲しい物『情報』をアカシックレコードへのアクセスにより、手に入れる事が出来る様になった。


「ミコちゃん。そもそもアカシックレコードって何なの?」

「アカシックレコードは『万物の理ばんぶつのことわり』なのじゃ。ダンジョン絡みの全てのルールは、アカシックレコードに記載さておるのじゃ」


「ミコ? アカシックレコードは誰が書いたんだ?」

「表紙に『~神のラノベ~ アカシックレコード』著者ベノーラ と書いてあるのじゃ」


「ベノーラって言うのが神なのか?」

「それは閲覧権限が無いのじゃ」


「アカシックレコードって何処にあるんだ?」

「何処かは解らぬが、図書館の中の様な場所なのじゃ、知識スキルを発動すると、魂がその場所に転移したような状況になって、表紙に向かって知りたい事を念じると、知識が流れ込むのじゃ」


「そうか、じゃぁさ俺達がそこを見つけ出して、アカシックレコードを消滅させれば、元の世界に戻る可能性もあるのか?」

「それも権限が無いのじゃが、恐らく勇気の言う事で合っていると思う」


「里香、どうする? 元々の世界もクソだけど、今の世界よりはよっぽど良かったんじゃねぇか?」

「勇気……あなたって、もしかしてつらい人生を歩んでた? 勇気の家庭では普通に幸せそうだったけど?」


「どうだろうな、学校はクソだと思ってた事は確かだし、こんな世界無くなっちまえがいいのにと思ってたのも確かだ」

「そっか、でも勇気がさっきのセリフ言ったって事は、世界を元に戻したいって事なのかな?」


「両親や、妹には幸せに暮らして欲しい程度の感情はあるからな」

「そうなんだ、私の家族は……生きてるのかな……」


「里香、個人の生死は住所、氏名、生年月日をアカシックレコードに問い合わせれば生死だけは解るのじゃ」

「そうなの? でも聞くのは怖いから辞めておくね。勇気がアカシックレコードを見つけ出して世界が元に戻ったら、聞くよ」


 こうして、俺達には行動目標? が出来た。


「さぁ里香、取り敢えずは里香の家族の生存確率を上げる為にも、このダンジョンを潰すのが最優先だ。行くぞ」

「うん」


「ミコ、このダンジョンは後どれだけの階層があるんだ? 敵が既に☆5なら、近そうな気がするが?」

「そうじゃのこのウルフダンジョンは、階層は後、ゴールド、ミスリル、オリハルコンと続き、ダンジョンマスターはフェンリルじゃ」


「フェンリルって神狼? ☆はいくつなんだ?」

「☆7じゃの エンシェントドラゴンと同格じゃ」


「倒せるのか?」

「フェンリルは群れぬのじゃ。☆6の存在のわらわと、里香の存在があれば勝てるのじゃ」


「解った」


 そこから先は、これまでの条件と同じように各クラスの進化条件は100倍の条件が続き、俺と里香はようやくオリハルコンウルフの階層に辿り着いた。


 現在の里香のステータスは、


 梅野里香 16歳

 獣人

 149㎝

 40㎏


 称号

 ウルフガール

 

 ギフトスキル

 融合

  【オリハルコンウルフ】☆☆☆☆☆

 夜目

 遠吠え

 統率

 身体強化Ⅵ

 豪爪

 ウインドエッジ

 サイクロンブレード

 ミスリルニードル

 オリハルコンシールド


 すっかり能力だけ見れば里香も人外になったな。

 ☆は5のままなんだな。

 当然俺も全ての能力を使える。


 ただしウルフ系の能力は、パッシブで発動する夜目と身体強化以外は、使えない。

 里香の見た目は、オリハルコンウルフになった時点で、ピンクゴールドの髪の毛と尻尾になった。

 きっと見えてない部分の毛の色もそうだろうな!


「勇気、なんかまたイヤらしい想像してるでしょ? 視線の位置が変態っぽいよ」

「ああ、里香の股間の毛の色と縮れ具合を想像してた」


「馬鹿、死ね、マジで」

「お前な、高校生男子の考える事なんて、みんな口に出さないだけで同じだぞ?」


「ばれない様に気を使う事が大事なんじゃないの?」

「俺が里香に気を使うとかヤダ」


「うーん…… まぁいいや勇気だし」

「いいんだ……」


「ミコちゃんこの階層を抜けると、フェンリルなんだよね?」

「そうなのじゃ」


「弱点とか攻略法とかはあるか?」

「……閲覧権限が無いのじゃ」


「そうか、一応作戦は決めておこう」

「どんなの?」


「ガンガン行こうぜ! だ。頑張れ」

「不安しか無い作戦だね」


俺はエンシェントドラゴンの姿で、ミコは最大に大きくなった状態で、里香を背中に乗せて、最終層の階段を下りて行った。


でかいな、俺よりは一回り小さいが、ミコよりは大きい。

俺は挨拶代わりに思いっきりブレスを吐いた。


大きく飛び上がって避けたフェンリルが今度は口から冷気を吐き出す。

どんどん部屋の中の温度が下がる。


「トカゲ、この温度の中ではお前は行動できぬであろう」


普通にしゃべってきやがったけど、なんかむかつく。

「流石に犬っ頃だけあってよく吠えるな、負け犬とか正にお前にぴったりの言葉だ」


 確かに1対1であればそれなりに苦戦した相手だったかもしれないが、里香が放ったサイクロンブレードに、ミコが雷Ⅴを重ね一瞬の硬直を与えた隙に、ミコのヘイストⅤで速度を高めた俺が一気に近寄り、何かを言いかけた口の中に直接全力のブレスを放った。


『なぜ動ける?』と言いたかったんだろうが、俺見た目がドラゴンなだけで普通に哺乳類、ヒト化の恒温動物だからね?


 俺のブレスで体内から破壊されたフェンリルは、光となって俺に吸収されていった。


 里香はフェンリルへの進化は出来なかった。


 そして声が聞こえてくる。


「ダンジョンは踏破されました。10秒後にこのダンジョンは消滅します」


 そして、俺達は地上へと転送させられ、広島ダンジョンは消滅した。

 地上に戻ると同時にトランスフォームも解除された。

 だが、ここから見える範囲にも、ウルフはまだ大量に確認できる。


 こいつらを倒してしまわない限り、広島の復興は不可能だろうが、俺はそこまでするつもりはない。

 生きたいなら、自分たちで何とかしろ。

 そう思った。


「里香この先どうする? お前の今の能力ならこの辺りに残ったウルフを倒し続けて、この街を取り戻す事も出来るかもしれないぞ?」

「うーん。でも世界中で1000か所以上もダンジョンがあるなら、この周りを何とかしても、結局他の所のモンスターに襲われて、同じ事の繰り返しになるだけだと思うの。ここではこれ以上は増えないと思うし、少しは他の人に頑張ってもらわなきゃ。勇気は他のダンジョンも潰して、解放して行くつもりなんでしょ?」


「そうだな。取り敢えずはアカシックレコードを見つけるまで、続けるつもりだ」

「ダンジョンクリアの報酬ってなにも無かったの?」


「そうだな…… だが俺がフェンリルにトランスフォーム出来るぞ」

「凄いね、勇気、でもパンツ早く履いて」


「まだ気にするのか?」

「きっと、気にならない様になったら人として終ってると思うから」


「耳と尻尾があるだけでも結構終わってると思うぞ」

「気にしないで」


 そう言いながら100均のやすりで牙を削っていた。

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