第9話 広島⑦

 隠し部屋で弁当食べてると、少し眠くなったので寝る事にした。

「里香今のうちに少し睡眠をとって置こう」

「うん。そうだね」


 俺はトランスフォームを解除した。

「ちょっ勇気、寝るってそっちの意味なの?」


 俺は素っ裸だった。

「いや、そんな気はない。余計に疲れてどうするんだ。パジャマも貰ってきてるから着てから寝るぞ。里香のも出してやるぞ?」

「ちょっと心配だけど、疑ってもしょうがないし、私は尻尾の関係でパジャマよりネグリジェみたいなのが良いかも」


 そうか、俺はネグリジェを出してやった。

「なぁ里香」

「ん?」


「お前実は俺を誘って無いか? ネグリジェってスケスケで、なんかメチャエロいんだが」

「しょうが無いじゃん尻尾あるから」


「まぁ、出来るだけ気にしない様にする、ちょっとセーラー服貸してくれ」

「どうするの?」


「匂いを嗅ぐに決まってるだろ?」

「馬鹿、変態」


「ああ、そう言う意味じゃ無くて、収納に一回仕舞ったら汚れや匂いとか取れないかの実験だ。出来れば便利だろ?」

「そうだね。でも腋の辺りの匂い嗅がれると、凄い恥ずかしいんだけど」


「ここが一番匂い強いから解りやすいんだ」

「そうなんでしょうけど、なんかヤダ」


 制服を収納に入れてから取り出してみると、新品状態に戻っていた。

「洗濯いらずだな。夜になったら下着もやってやる」

「助かるけど、凄い嫌な気がするよ。匂い嗅がないって約束するなら頼むかも」


「きっと大丈夫だ」

「何か怪しいな」


 それから4時間程の仮眠をとって、再び俺はレッドウルフにトランスフォームをした。

 里香も綺麗になったセーラー服に着替えて、ミコを首に巻いて隠し部屋から出た。

「里香?」

「ん?」


「暑くないのか?」

「襟巻き?」


「そうだ」

「見た目ほど暑くないよ、むしろ首筋から温度調整してくれてる感じかも」


「へぇ意外に役に立ちそうだな」


 俺がそう言うとミコがドヤ顔した。

 ちょっとむかつく。


 3層の階段付近まで来ると、モンスターの姿はレッドウルフの割合が高まって来たので、念には念を入れる意味で、エンシェントドラゴンへとトランスフォームした。


 俺のドラゴンの姿を見ると、里香の首でミコが震えていた。

 俺は子を近づけて、ドヤ顔をしてやり、格の違いを見せつけた。

「勇気? もしかして張り合ってるの?」

「俺がこの程度の雑魚と張り合ったりする訳無いだろ?」


「ふーん」

 とか言いながらニヤニヤされるとむかつくな……

「この姿1時間しか持たないから、ちょっと気合入れて進むぞ」

「そうなんだ。解った」


 そして俺達は、俺のブレスで辺りの敵を薙ぎ払いながら、4層へと到達した。

 4層に辿り着くころには俺は『シルバーウルフ』へのトランスフォームが可能になり、それから30分程で里香もシルバーウルフへと格が上がった。


 梅野里香 16歳

 獣人

 149㎝

 40㎏


 称号

 ウルフガール

 

 ギフトスキル

 融合

  【シルバーウルフ】☆☆☆☆☆

 夜目

 遠吠え

 統率

 身体強化Ⅲ

 豪爪

 ウインドエッジ


「里香、魔法使えそうだぞ、ちょっとやって見ろ」

「マジ? どんなの?」


「あ、そうか自分を鑑定できないから、教えてやらないとパッシブ以外のスキルは、気付かない可能性が高いんだな。ウインドエッジだ。恐らく爪から斬撃飛ばせる感じじゃないか? ちなみに俺はドラゴンの姿では出来ないみたいだ」

「そうなんだ。ウインドエッジ」


 そう言いながら腕を振り抜いた、里香の手から見えない斬撃が飛び出して、レッドウルフを切り刻んだ。

「すごーい。私役に立てそうだよね?」

「ああ、そうだな」


「良かったぁ役に立たないから、もういらないとか言われたらどうしようかと、不安でたまんなかったんだよ」

「でも、次のフロアに進むためにはもっと強くならないとヤバいって言うか、相手もウインドエッジ撃って来るって事だろ? 守りを固める手段が必要かもな? 俺は大丈夫と思うけど、里香は見えない斬撃でいきなり首飛ばされる危険性もあるぞ」


「ええ、それ嫌だよ」

「俺もこの姿のまま下のフロアへ行っても、途中で解除になりそうだし、一度姿が戻るまではこのフロアで狩り続けて、休憩を挟んでから次に進む感じになるな」


「解ったよ」


 このフロアではポーションもランク4までは普通にドロップし始めた。

 まだ使い道は解らないが、魔核もサイズがでかい。


 そして俺の身体が、一度人間の姿に戻る。

「里香、休憩入るぞ」

「服着てから声かけてってばぁ」


「そろそろ慣れろよ」

「無理だってば、今はパンティ被って無いだけまだましだけどね」


「被った方が良いか?」

「何でそうなるのよ」


 しょうがないから服を着て、この階層を鑑定すると、この階層にも隠し部屋はあった。

 今度は俺も人間の姿だったから、俺がレバーを回す。


 すると、部屋いっぱいの100匹程のレッドウルフが現れ、俺に噛みついて来た。

 流石にレッドウルフだと、少し噛まれた感じがするな。


 やはり、エンシェントドラゴンと全く同等の防御力って訳では無さそうだ。

 まぁ蚊に刺された程度の感じだけどな。

 

 里香のウインドエッジと、俺の力技でモンスター部屋の中のウルフを倒し終わって、中に入るとまた宝箱が有った。


 鑑定をしてみる。


罠在り


 どうしようかな? 即死罠とか転移罠とかだったら面倒だから、開けない方が正解だろうな。


「里香、この宝箱は罠在りだから開けずにそのままにしておくぞ」

「うん、解った。あ、ミコ、駄目触っちゃ」


 ミコが里香の首から降りてまっすぐ宝箱に行き、開け放った。

「マジか、クソ狐……」


 桃色の煙が立ち込め、視界が悪くなる。

「里香煙吸い込むなよ」

「解った。ゴホン」


「メチャ吸ってるじゃねぇかよ!」

 俺は収納から布を出して咥えた。

 当然木綿のパンティだ。


 キュアで何とか抵抗できるかもしれないと思って、里香にはキュア4を飲ませて同じように、パンティを口に押し込んだ。

 俺は状態異常耐性あったから大丈夫な筈だけどな。


 1分程で煙が晴れてきて、そこにはミコが尻尾を9本に増やして座っていた。

 体の大きさは変わって無い。


 俺はパンティの詰め物を口から出してミコに話しかけた


「ん? ミコ成長って言うか進化したのか?」

 ミコはこくりとうなずいた。



鑑定

 ミコ

 九尾の狐 ☆☆☆☆☆☆  1200歳

 神獣 

 50㎝~30m

 2㎏~200トン


称号

 梅野里香の従魔

 

スキル

 変化

 夜目

 雷Ⅴ

 速度強化ヘイスト

 癒しⅤ

 言語理解

 看破

 知識Ⅴ


「おい、ミコお前中身が分かってて開けたのか」

 ミコは大きく頷いて口を開いた。


「ゴメンなのじゃ、この煙は開けた本人にしか効果が無いって解ってて開けたのじゃ。さっきまでの状態じゃと話せなかったのじゃ」

「ぶほっ、のじゃキャラかよ」


「ミコもふもふ尻尾がいっぱい増えちゃったね。いいなぁ」

「良かろう? 先程の煙は竜宮スモークと言うのじゃ。開けると1200年の年齢を重ねると言う罠なのじゃ」


「それもし俺達が開けてたら……」

「年を取るのは状態異常じゃ無いのじゃ、普通に人間の姿で1200年、歳を重ねて死んじゃってたのじゃ。私は歳を取る事でしか進化が出来なかったから丁度良かったのじゃ」


「罠、ヤバいな」

「これからはわらわが看破できるのじゃ。開けて大丈夫かどうかは聞けば教えるのじゃ」


「そうか助かる。お前の言語理解ってモンスターとも話せるのか?」

「知能がある存在となら話せるのじゃ」


「そうか都合が良いな」

「ねぇミコちゃんってもしかして結構強い?」


「あまり戦闘は得意じゃないのじゃ、じゃがゴールドウルフ程度は楽勝なのじゃ」

「ミコ、知識Ⅴって事は大体の解らない事は聞けば解るのか?」


「私に知識がある訳では無いのじゃ、アカシックレコードの閲覧権限なのじゃ。質問をすればアカシックレコードにアクセスして解る事は伝えれるのじゃ」


「へぇ頼りに出来そうだな」

「連れて来てよかったでしょ?」


 どうやらアザトイだけでは無かったようだな。

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