第8話 広島⑥
俺と里香は、広島ダンジョンの中に突入し、先を進む。
どれくらいの距離を進んだんだろ?
時間としては2時間程だが、戦闘してる時間が殆どだから距離感が掴めない。
だが、下層へと続く階段が現れた。
「里香、降りるぞ」
「うん」
俺達は200段ほどもあるような階段を下りる。
途中上がって来る敵は、グレーウルフは一匹も居なくて、すべてブラックウルフだった。
「これなら、次の進化も現実的な範囲になりそうだな」
「ブラックウルフばかり相手にすると、100匹でレッド、1万匹で次って事?」
「一人でならな。今は2人だからその倍の筈だ」
「そうか、結構大変だね」
「自衛隊や米軍の持ってる武器が、どこまで通用するのかで難易度は随分変わるけど、戦闘機のミサイルは俺に傷をつける事が出来なかったから、期待は出来ない」
「戦闘機に撃たれたの?」
「ああ」
「なんか大変そうだね、今の私じゃとばっちり受けたら、死ねそうだよ。ちゃんと守ってね?」
「お前が裏切らなければな?」
「きっと……大丈夫」
「何でそこで一瞬考える必要がある?」
「だって、変態だから」
「俺は普通に健全な高校生だ」
「パンティ被って外歩ける高校生ってあんまりいないと思うよ?」
「気にしなければ大丈夫だ」
「気にするでしょ?」
2層に到着してブラックウルフを倒しまくると、ドロップも1層よりも確率が上がり、ポーション、ポーションⅡ、キュア、キュアⅡ、魔核、牙、爪などのアイテムが手に入るようになる。
「この牙や爪で武器を作ると、銃弾で対抗出来ない敵でも対応できそうだよな?」
「ラノベ展開だとそうだよね、でもここに来る人自体、勇気に守って貰えない状況だと、無理ゲーな感じしないかな?」
「数は少ないけど、何人かは出て来るだろうな。そしてそいつらが悪の組織とか、人造人間とか作って、世界を支配しようとしたりするんじゃないのか?」
「どんだけ漫画脳なのよ、そんなのあり得ない……よね?」
「いや、あるだろう。それに対抗する、ヒーロー気取りの戦隊グループとかも出てきそうだ」
「仮面なバイク乗りみたいな人?」
「うん、里香の見た目とかでも十分要素は満載だしな」
「アイドルになれるかな?」
「テレビとかの放送が出来る社会であり続けれるかが疑問だけど、無理じゃなさそうだ」
「勇気は? どうするの?」
「解んないけど気分次第だ。助けたいと思えば助けるけど、助けるのが当り前だろ? みたいに言われるなら無視する。むしろ踏みつぶすかもしれない」
「身バレしちゃったら家族とか困らないの?」
「だから変身してるじゃん。マスク被って。毎回服も違うの着るし、バレないだろ?」
「パンティ被って行動する息子の姿とか、ご両親が知ったらつらいと思うよ?」
「きっとばれない」
「そうかなぁ?」
里香と話しながらも順調に敵を倒し続けて、3層へ向かう階段を見つける。
「当然この下の階層はレッドウルフがメインになると思う。どうする?ここで進化をするまで粘った方が良いか?」
「どうしよう、お腹減って来たし、何処か休めるところないかな?」
「ちょっと待ってろ。ダンジョンを鑑定したら隠し部屋とかあるかも知れない」
「解った」
俺はダンジョンを鑑定してみると、壁の奥に空洞がある部分を発見した。
そこに、意識を集中させると、敵らしき反応も感じる。
「里香、隠し部屋見付けたからちょっと調べよう。俺はウルフの身体だから、里香が調べてくれ」
「うん。あ、なんかレバーみたいなのあるよ? 回してみる?」
「レバーか。人為的な装置だな。だとするとこのダンジョンって自然発生したって考えるより、作為的に作られたと考えたほうがいいな」
「へー、勇気って結構頭の回転いいんだね。私何も思わなかったよ」
「すべてを疑ってかからないと、きっとこの世界で生きていけないぞ?」
「性格悪くなりそうだね」
里香がレバーを回すと扉が開いた。
その中に居たのは、狐だった。
「取り敢えず殺すか」
「待って、勇気。この子プルプル震えるだけで、襲ってきそうにないよ?」
「でもモンスターだぞ? 倒せばきっと新しい能力も身につく」
「えぇ、そうかもしれないけど、真っ白だし、狼より柔らかそうだし、首とかに巻けそうだし」
「里香が面倒みるなら、勝手にしろ。もし襲い掛かって来たら迷わず殺すぞ」
「解った」
俺と里香の会話を理解してるのか、その会話が終った瞬間に、腹を上に大の字に寝ころび、無抵抗をアピって来た。
「ほら? 大丈夫っぽいよ?」
「あざといな」
俺達が部屋に入ると、扉が自動で閉じて来た。
「ちょっヤバくねぇか?」
「あ、中にもレバーあるしきっと大丈夫だよ」
部屋を確認すると、いかにもな宝箱が置いてあった。
「里香、開けてみるか?」
「おばあちゃんになったりしない?」
「鑑定してやるよ」
罠無し
シンプルだな、だが中身がモンスターの可能性は、捨てれないよな?
それなら対処出来るだろうし、大丈夫だろうと思って蓋を開けた。
丸い水晶玉が1つだけ入っていた。
『鑑定』
スキルオーブ『テイム』
モンスターを一匹だけテイムできる。
「里香テイムだってさ一匹だけテイムできるみたいだけどどうする?」
「一匹だけなんだ。でも運命的な気もするからこの子に使ってみようかな?」
「好きにしろ」
里香がスキルオーブを握ってテイムと念じると、『一尾の狐☆をテイムしますか?』と表示された。
「ねぇ勇気、この子一尾の狐って種類なんだってよ? なんだか育ったら九尾とかまで増える気しない?」
「へぇ、☆見えるか?」
「ん? ああ一つだね」
「やっぱり弱そうだな」
「テイムしていい?」
「ああ」
名前を決めて下さい。「名前かぁどうしよう狐と言えばイナリだよね? イナリでいいかな?」
「里香、イナリって金〇袋のイメージにしか聞こえないぞ?」
「え? やだよそんなの」
「お前が言ったんだろうが」
「じゃぁ、巫女のイメージかな。ミコちゃんでどう?」
「いいんじゃないか?」
「あなたはミコちゃんだよ。よろしくね」
「コン」と言って里香の首に襟巻き状に巻き付いた。
「自分で歩く気ないなこいつ」
「まぁ良いよ。重く無いし。今のうちにご飯食べようよ」
俺の収納から弁当とお茶を取り出して、食事をとった。
弁当を広げると、ミコも里香の首からほどけるように下りて、里香の横に行儀よく座り、俺を上目遣いで眺めやがった。
「やっぱりあざといな」
しょうがないから、ミコにも一つ出してやった。
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