第11話 防府へ
俺達は、広島ダンジョンを消滅させた。
広島ダンジョンに突入して、既に48時間が経っている。
「里香、一度防府へ戻って父さんたちに食料とか届けたいと思う」
「それって、今の勇気の状況とかバラしちゃう感じ?」
「まだそれには触れずに勝手に置いて行こうと思う」
「解ったよ」
ドラゴンのトランスフォームが解けた直後であったのもあり、フェンリルの姿で走っていく事にした。
途中でまだ在庫の残ってる、店などがあれば在庫を回収しながらで丁度いいだろう。
だが既に生鮮食品は限界を超えているだろうな……
この広島の街は、完全に停電してるしな。
フェンリルの能力は中々に凄まじい。
フェンリル ☆☆☆☆☆☆☆
体長35㎝~35m
体重3㎏~300トン
アイスランス
ブリザード
アブソリュート0
天駆
質量変化
身体強化Ⅹ
物理耐性Ⅹ
魔法耐性Ⅹ
状態異常耐性Ⅹ
どうやら、ウルフ系統の他の能力は、パッシブ以外では、オリハルコンウルフ以下にトランスフォームしないと使えないらしいが、強化系スキルに関しては、エンシェントドラゴンの物がそのまま適用される様だ。
質量変化は、ミコの変化の劣化スキルだろう。
天駆が良く分からないな?
鑑定……天駆
足元の空気を瞬間的に圧縮しながら走れる。
これは…… 壊れスキルだった。
早速試してみた。
「え? 勇気、空走れるの?」
「ああ、意識しないといけないから、少しは練習がいりそうだけど、普通に走れるな」
「私も覚えたいよぉ。フェンリルになれるとしたら後どれくらいだろうね?」
「倒した数をカウントしてないからはっきりとは言えないけど、経験値的な物で言えばオリハルコンウルフを二人で200匹倒せば届く筈だし、フェンリルも一匹は倒したわけだから、後オリハルコンウルフ60匹分も倒せば届くのかも知れないな」
各100倍の倍率で、グレー→ブラック→レッド→シルバー→ゴールド→ミスリル→オリハルコン→フェンリルだ。
仮にグレーウルフだけ倒せば百兆匹の討伐が必要になる。
てか存在してないだろうなそんな数。
他にもウルフダンジョンが存在していればチャンスはあるかも知れないけどな。
「里香、俺のフェンリルの姿は、小型化も出来るから、大きさをシルバーウルフくらいのの大きさにして行く事にする。能力はほとんど変わらないしな」
でも何となく分かるのは、小さくなっている時はえらく燃費が良いと思う。
一日でも変身したままでいられそうだ。
氷系のスキルが使えるのはいいけど、次に博多に行くとしたらキノコとの相性がどうなのかだな? キノコとか相性考えたら火の方がよさそうだし、火の能力が手に入るようなダンジョンを先にやった方が良い気もするよな?
「そろそろ出発するぞ」
俺達は防府へ向けて、走り始めた。
里香は、ミコの背中でスマホを使って、道沿いにある、スーパーやホームセンターを調べながら、指示を出す。
俺は、店に到着するたびに、食料や衣類生活用品を根こそぎ収納して行く。
街の状況的には、広島市内から離れるにつれて、在庫の残っているショップが減って来た。
恐らく、人の手による略奪だろう。
まさかこの状況で普通に買い物してないよねみんな?
衣類はかなりの確率で手付かずで残っているけど、食料品や飲料は殆ど手に入らないな。
里香に聞くと、サイトのトップページのニュースは既に2日前から更新が停まってしまってる状態だそうだ。
日本中で電力などが失われてきているんだろうな。
ネット自体が見れなくなるのも、遠くないかも知れない。
広島市から廿日市市に入って来ると、車が走っている姿を見る事が出来る様になった。
人が歩いている姿は見かけない。
ウルフの姿が結構あるから、人なんか外を歩く姿が見つかった瞬間に、喰われるだろうしな。
そう思ってる間にも、走っている車の上にシルバーウルフが飛び乗って、潰していた。
シルバーウルフが、雄たけびを上げると、他のウルフがワラワラと集まってきて、車から人を引きずり出し、あっという間にズタズタにされていた。
里香が、その光景を見て「酷い……」って呟いた。
一体どれ程の数のモンスターが存在しているのか想像もつかないな。
俺はミコに確認してみた。
「ミコ、モンスター達は、ダンジョンの外でも増えるのか?」
「増えるのじゃ。じゃが野生動物等と同じですぐに増える訳では無いから、今外にいる個体は全て、ダンジョンから湧きだした個体じゃ」
「そうか」
廿日市を抜けて、大竹市に入った頃にドラゴンへのトランスフォームが可能になったので、エンシェントドラゴンへとトランスフォームした。ミコが長い襟巻きの様な形状になって、里香を俺の脚に固定したので、小指にしがみつかなくても良くなって、少し喜んでた。
結構怖かったらしい。
そりゃそうだよな!
そこからは30分程で、防府上空まで辿り着いた。
既に岩国の米軍基地や防府の自衛隊基地から、俺を迎撃に来る余裕も無い様だ。
俺的には少し助かるけどな。
眼下に広がる、防府市内でも、やはり人の姿は見えない。
広島に比べると全然少ないが、ウルフの姿はそこそこ見受けられる。
もし最初に俺が落ちたダンジョンが、そのまま広島の様に存在していたら……
それがドラゴンダンジョンだったとしたら、とっくにこの街は終焉を迎えていただろうな。
でもちょっと気になるよな?
エンシェントドラゴンに辿り着くまでに、どんなドラゴンが現れたのか。
絶対速攻で殺されて終ってただろうけどな。
競輪場の横の野球場に着陸するとトランスフォームを解除した。
足に捕まっていた里香は、態勢的に俺の股間に顔を引っ付けるような感じになる。
「ギャァ、袋がぴたって張り付いたよほっぺたに」
「着地した瞬間に顔の向きくらい考えろ」
一度家の様子を見たいと思って、服を着て歩き始める。
「ミコ? 変化って人の姿にもなれるのか」
「出来るのじゃ」
そう言うと人の姿に変化した。
「きゃぁ可愛い」
里香の口から声が漏れるほどの存在がいた。
8歳くらいのツルペタロリ少女で、髪の毛は真っ白、瞳は紅かった。
顔の造形は中々整っている。
「お前も裸族か?」
「服は作れないのじゃ、勇気が沢山持っておろう? 出してくれ」
「でもさ、ミコの方が尻尾も耳も見えない分里香より人間っぽいな」
「良いなぁ、私も見えなく出来ないかな?」
「狸系統か、狐系統、スライム系統のダンジョンがあれば、認識阻害や変異系の能力を覚える可能性はあるのじゃ」
俺は子供服売り場から、持って来ていた服を出してミコに渡した。
下着を着けて、真っ白なワンピースを着ると、中々可愛いな。
3人で歩いていると、グレーウルフが3匹とブラックウルフが現れ飛び掛かって来た。
俺がブラックウルフの首をへし折り、ミコと里香がそれぞれ魔法で、グレーウルフを葬り去る。
「こんな人気のない所でもウルフが出てくるようだと、住宅地はヤバいかもな」
「勇気、急ごうよ」
俺達は急ぎ足で、自宅へと向かった。
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