海水浴なのじゃ


 もはや避けては通れぬイベントなのじゃ。

 説明は要らぬじゃろう。おなご達が水着を着、海でキャッキャウフフするようなイベントじゃ。


 発端は、飛竜の吹雪がバサッと空から降りてきたのが始まりじゃ。

 何事か問うと。

「くくぅ、くー」

 と、わらわだけじゃなく、お菊や美影、ついでにゆきまるに背に乗れと言うたのじゃ。

 皆が乗り込むと、吹雪は空を駆けて飛び立ったのじゃ。


 それで今、天雲海の浜辺に来ておる。

 天幕が作られており、中から姉上が出てきて「みんな着替えて―」と、天幕の中へ誘ったのじゃ。

 その中には多種多様な水着が用意されておったのじゃ。


 体躯に恵まれておる輩は良いじゃろう。姉上、お菊、美影、と見た後に自分を見るのじゃ。

 ぐぬぬ。

 まあ仕方ない。そこはかとなくごまかせる水着を選ぶとしようかのう。

 それにしても、昔では考えられぬ布量の少ない水着があるのが恐ろしいのじゃ。


 みんな着替えて雲海へGOじゃ!

 天雲海は雲の上に海があるのじゃ。じゃからと言って雲の上から海の水が下界に落ちたりせんのじゃ。

 原理はわからんのじゃ。


 わらわは浮き輪に座ってぷかぷかと優雅に浮いておる。

 漠然と空を見て、水着回について考えるのじゃ。

 数多の創作物で水着回は意図的に無理矢理ねじ込まれたり、尺繋ぎだったり、作者が本当に好きな場合だったり……。

 いろいろと考えられるのじゃが、これは物語も終盤に近いと言う事かのう。

 雲海の水平線の先には何があるんじゃろうか。文字通りの終わりじゃろうか。

 そんな事を考えとったら、突然浮き輪をひっくり返されたのじゃ。


「のじゃ!? ゴボボボガボボガボオォ……」

――プハァッ。

 海面へ出るとお菊が笑っておる。どうやら浮き輪をひっくり返したのはお菊のようじゃ。

 泳いで逃げるお菊を追うのじゃ。

 おのれお菊。こう見えてわらわは泳ぎが得意なのじゃ。


 お菊を捕まえてバシャバシャと海水をかけて仕返しをしてやったのじゃ。

 冒頭の通りキャッキャウフフと戯れるのじゃ。

 やはり夏は海じゃな。


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