夏風邪なのじゃ~

 う~ん、う~ん……なのじゃ。

 夏風邪かのう。熱が出て寝込んでしまったのじゃ。

 幸い症状は軽いのじゃが、大事を取って休んでおる。


 枕元でゆきまるがウロウロしておる。心配してくれているのかのう。

「あ、これ。ゆきまる。氷嚢にイタズラするでない」

 案の定ゆきまるの爪が氷嚢に引っかかり。氷嚢が破けたのじゃ。

 そして、水がわらわの顔にビシャッ――

 ゆきまるは「ニャーっ」と驚いて、どこかへ行ってしまったのじゃ。


 ニャーっと鳴きたいのはこっちなのじゃ……。

 

 お菊がいそいでタオルを持ってきてくれて、わらわのびしょびしの顔と髪を拭いて、枕も変えてくれたのじゃ。

 暑さの中熱が出るとよけいに朦朧としてしまうのじゃ。

 ゆきまるを怒る気すらせん。


 お菊が何か小声でぶつぶつ言っておる。もしや子守歌かのう。

 普段無口なお菊が歌ってくれるとはなかなか無い事なのじゃ。  

 ん?念仏……。

「まだ死んどらんのじゃ!」

 罰当たりなボケをかましおって。

 お菊は憎めない笑顔でくすくすと笑ってるのじゃ。まったく。

 弟子が風邪を引いたらわらわが子守歌を歌ってやろうかの。


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