髪を切ったのじゃ


――チョキチョキチョキ

 と、鋏で小気味良い音を立てて、お菊がわらわの髪を切っておる。

 

 大昔の様に髪を伸ばしているわけではないのじゃ。

 時代と共に流行は変わるものじゃ。

 天界は過去の時代に固執しているわけではないしの。


「お菊や。美影にわらわの髪を渡すでないぞ」

 お菊はこくりと頷いた。

 髪を伸ばしていた頃、バッサリと切った後の美影はもう半死半生じゃった。

 今でも女子が髪を切ると言うと特別扱いされる事が多々あるのじゃが、当時は今と比べ物にならんほど髪は女の命みたいなものじゃった。


 美影はわらわが自刃したかのように嘆いてしまってのう。

 爾来、切った髪はお菊に処分してもらっておる。

 切った髪を集められてクンカクンカ嗅がれても素で引くしのう。


 わらわもお菊の髪を切ったり結わいたりしておる。そこそこ上手いのじゃ。

 弟子の髪でもわらわの鋏捌きを披露してやろうかの。


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