送り火なのじゃ


 苧殻に火を付けて

 ほちほちと鳴る火の寂しさは風情があるのう。


 送り火は先祖の霊を送り返す行事じゃが。天界でやる必要はないのじゃ。

 じゃが、たまに迷い込んでくる御霊もおるからのう。

 こうして焚いておる。

 

 一応客人としてもてなせるように、お菊に茶と菓子を用意させてあるのじゃ。

 多ければ十人ほど、毎年この邸にも迷い込んでくるのじゃ。


 ほれ、早速茄子の牛に乗って来よった。

 日常会話を二三話せば大抵直ぐに行ってしまう。

 その、送り火の煙に乗って天界を去って行くのじゃが……


「ここに茄子を乗り捨てて行くな!なのじゃ」


 まったく。乗り捨てられた茄子は食べる気もせん。

 しげしげと見ていると、部屋に入ってきたお菊が空気を読んだようにまた部屋を出て行ってしまったのじゃ。

 ……まさかお菊、変な事を考えたわけではあるまいな。罰当たりにもほどがあるのじゃ。


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