立秋なのじゃ
「立秋じゃのう」
床の間に花を生けておったお菊に話しかけたのじゃが、返事をしてくれぬ。
畳に寝そべりながら陽炎に揺らめく外を見たのじゃ。
暦の上では秋と言ってもまだまだ暑いのう。
「最近の陰陽寮では星を読む事より地上の衛星でテータをハッキングして
暦を見定めておるそうじゃな?」
お菊は聞こえぬ振りをして拭いている。
天界に技術を持ってくればよいのに、そういう事は出来ない不思議じゃ。
一体どこからどこまでが天界の理なんじゃろうか。
弟子もわらわが選ぶと言っても、所詮天次第なのかもしれんのじゃ。
「この調子じゃ弟子候補は一人も来んかもしれないのう」
何でもかんでも暑さのせいにしたくなるのじゃ。
雑談と言うか独り言と言うか、会話を返してくれないお菊が、寝そべるわらわをずるずると引きずって、文机の前に起こした。
わらわの両肩をポンと叩いて耳元でごにょごにょと言ったのじゃ。
わらわは若干の恐怖を感じたのじゃ。
「わかったわかった。書く。書くのじゃ」
お菊はにっこりして部屋を後にしたのじゃ。
http://gineiroku.web.fc2.com/deshi.html
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます