紙は凶器なのじゃ


 原稿やら報告書やらを纏めておると、痛みが走ったのじゃ。

「のじゃ!?」

 指先を見てみると微かに切れて、そこから血が少し出ておる。

 どうやら紙で切ってしまったようじゃ。

 それを光に翳すと、朱い宝珠みたいに思えて少し綺麗に思えたのじゃ。

 

 ちり紙を探したが見つからず、ぺろっと舐めてしまおうと思った時、

 天井から「いけません!」と声がしたのじゃ。

 シュタ――と、降りてきたのは忍びの美影じゃ。

 美影がやにわに近づいてきて、わらわの指先を舐めたのじゃ。

 直ぐにわらわは美影の頭をはたいたのじゃ。

「お主が舐めてどうする!のじゃ」

 この変態忍びが。 

「申し訳ございません。つい……。しかしお姫様が悪いのです」

「何故じゃ」

「黴菌が入ったら大変でございます。それに紙は凶器にもなります。

ご注意して下さいませ」

 そしらぬ表情で手当してもらっていても、なんか納得いかんのじゃ。

「なら尚更お主が舐めたらダメであろうが。それにわらわはもう姫ではない」

「お姫様はお姫様でございます」

 手当を終えてシュッと天井へ帰ってしまった。


 姫ではないと数百年も言っておるのにまるで聞かないのじゃ。

 まったく。何故あ奴まで天界に来れたのか不思議でならぬ。

 弟子が変態じゃったらちょっとどうしようかのう。


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