鎮魂の鐘



「……」

 黙祷を捧げたのじゃ。

 鐘の音と蝉の鳴き声。夏が喪に服しておる。


 邸に戻り、喪衣を着替えてから一服するのじゃ。

 原子爆弾なぞ作りおって。あまつさえそれを使うなどと……。

 あの頃は膨大な霊魂が天界にまで迷い込んでくる始末じゃった。

 ここは地獄でも天国でもないと言うに。


 霊魂に刻まれた惨劇はそれはもう阿鼻叫喚じゃった。

 犠牲者の殆どが天国やら輪廻への道を裁定されておったが、あの閻王は戦争へ誘った者達への判決は厳しかったのう。


 人間の傲慢や侮蔑。辟易するのう。

 戦なぞ人類が存在する以上無くなりはせぬが、あれがある種の最終地点に思えたのう。

 再び始まれば、また繰り返すのじゃろうか。

 愚かじゃ。

 じゃが人は賢いはずじゃ。

 弟子にも人のそういう部分を信じ続けて欲しいのじゃ。


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