第2話 メイクアンドリアルファイト

 「こちらになります。」「うお!」

さっきと違う部屋だ、一度勝ったからかな。なんかグレードアップしてる!


「…え、これ週間ガッチ!の原本⁉︎

プレミアもんだぜこれ!」

今も創刊されてるヒーロー漫画雑誌だけど廃刊になってるお宝本がわんさかあるぜ、たまんなこりゃ!


「すげぇ、伝説のパワースター1話が載ってる回のやつもあるマジかよ!」


「ごゆっくりどうぞ。」

楽園って近くにあったんだな!

ここでヒーローデータを回収して外に出れば新作のヒーローを見れる。

「おいおい、天国じゃねぇかよ!

なんか前より物多いし、俺も新作強化アイテム作っちゃおっかな〜♪」


そうか、さっきの鎌もグレートアップした部屋で作ったのかもな。

成る程、あの死神さんやるなオイ!

「腕が鳴るってもんだね!

めちゃめちゃな完成度叩き出すぜ?」

右手にトンカチ、左にドリル。

芸術というよりはファクトリーだけどまぁまぁサマになるね、このトンカチはウェポンとして装着しているものじゃなくて直に持ってるんだけど。


「釘連打機能でも付けようかな?」

でも安全面は考慮したいね、なるべく

俺よりも前に子供のものだから。

「子供が憧れないとな、そりゃ」


➖➖➖➖


『theチョップメンノックダウン!』


「二試合目も勝者決定ね、驚きよ。まさかtheチョップメンが負けるとは」


「仕方ありませんよ、渾身のチョップも〝当たらな〟ければ意味が無い。」


「それもそうね..次の試合は?」


「次は...ダルメシキングと奏者カナメ

後はシードのヒーローが一体。」


「あら、そういえばシードがいたわね

優勝有力候補。勝てば素敵な賞品が」


「ま、最早取りに来たようなものですからね、このヒーローが」


「最終的にどうなるかはわからないけど、私たちは見届けるだけよ。」


「気長にですか?

ホントにヒーロー好きですねぇ..。」


第3試合ダルメシキングvs奏者カナメ


「ファイッ!」


「なんだそれ、ハープか?

俺様は戦いに来たんだ、楽器の演奏なら他所でやってくれや兄ちゃん!」


「そんな事いわず聴いていってよ。

...きっと抜け出せなくなるからさぁ」


モニター室や観客席以外からは、試合が見えない仕様になっている。参加するヒーローに情報を与えてはフェアじゃないという運営の意向らしい。


「聴いていけだと?

やかましい、他人の音色など興味無い

食らえ、ダルメシニードロップ!」

高く跳躍したのちに放たれる膝落とし石の床にヒビを入れる程の威力を誇る


「頭上か、だったら音は高めだね。

ff《フォルテッシモ》!」


「ん、なんだこれは⁉︎」「浮力だよ」

膝の落下速度と威力を削ぎ落とし、浮力を加え空に漂わせる事で直撃を防ぐ


「おろせ!」

「いいんだ、降ろして。

高い音で浮いているんだ、そこから突然音を低くして降ろしたらどうなるか

君にはわからないみたいだね。」


「舐め腐るなよ坊主?

俺様はダルメシ王国の王子、一国の財産なんだよ。違いのわかる男だ!」


「あ、そうなの。失礼しました、てっきり節穴かと..あ、ちなみにこれ琴じゃなくてピアノね。」


「え?」「はい、ピアニッシモ!」

空中で浮力を失ったダルメシキングはそのまま落下し床に食い込んだ。


「あ〜らら、白と黒のブチが台無し。

コントラストがめちゃめちゃだねぇ」


黒かった目は白目を剥き、赤かった唇は青く冷め切っている。浮力だけでなく配色すらも失われてしまった。


「動ける〜?

..ダメだ、動けないみたい。て事は」


「勝者カナメ!」「ご清聴有難う」

汗一つかかず爽やかな顔で礼を言った

ヒーローは奥深い、型に捉われず能力に特化したスタイルを持つ者もいる。


「続いてシード対戦なのですが、直ぐに初めますか?

それとも休憩を入れて改めて..」

「いや、直ぐに始めよう。

相手が暇を持て余すなら、演奏をして少しでも楽しませてあげたいからね」


「かしこまりました。

それではご登場下さい、シード!」


「退屈な時間がやっと解けるか。

待ちくたびれたぞ、漸く出番か!」

ステージに足を踏み込んだ瞬間歓声が沸き起こる。ヒーローファンの客達は姿なくとも声色でそれがわかる。


「シードヒーロー、ライトジェネス」

「震え上がれギャラリー共。」

合図と共に叫び上げる観客、その声を全身で受け止めマントをひるがえす。

「すごい人気だな..コイツ」

「知らないとはムチな奴だ、お前確か音楽家だったな。なら無理もない」


輝く光沢ある肉体美にコスチュームを見に纏い、黒いVR調のサングラスは目元を隠す。確認出来るのは並びの良い白い歯と高い鼻のみ。


「スカした奴だな、これのどこがいい

まぁいいよ、たっぷりと演奏を聴きな客に贔屓はしないからさ。」

「そうか、楽しみだ」

「ファイッ!」

合図と共に試合が始まる。

琴にカモフラージュさせたピアノの鍵盤に指を置き、戦闘態勢に入る。

一方のライトジェネスは腕を構える事も無く直立不動でそれを見ていた。

「余裕だな、舐めてんの?

どうにかしないと刺されるよ!」

音域を浮力から攻撃に変化させ、音を飛ばして傷付ける。


「飛び道具のf《フォルテ》!

避けなきゃ腹を抉られるよシード!」


「..遅いな。」「え?」

「ジェネスライトビーム!」

サングラスから光線を放射、飛び道具は消え去り、カナメは一瞬で傷だらけ


「...は?」

「音が光に追いつく訳が無い。

悪いが演奏は聞き取れない、遅すぎて標準を音と君に絞ったから道具は無事だぞ、安心しろ。」

音を蔑ろにされた挙句情けを掛けられた、音楽家とヒーローを同時に汚された訳だが果たしてプライドの高い奏者に耐えられる事柄であろうか。


「…そこ動くなよ?

音域超攻撃系、ブラスターff!」

不協和音の如くピアノを掻き鳴らし、ガトリング砲のような激しい音を無数に飛ばしていく。やはり音楽家だ、非常に音に気持ちが乗っている。


「やれやれ、せっかく抑えたのに。

本気ならば仕方ないな、消滅きえた方が良さそうだな。」

ジェネスライトビーム出力上昇、標準をカナメ全体にして発射準備。


「オラオラオラオラくらえオラ!」

「言葉が汚いぞ、音楽家。」

光の速さで光線発射、余りの輝きから観客が目を瞑り、慣らして開く頃にカナメの姿は消えていた。


「……!」

「どうした、言わないのか?」


「しょ..勝者、ライトジェネス!」

光速の勝利はシードの証。

力比べというよりは速さ比べであった

「終わりか、呆気ないな。

...もしやまた待機をするのか?」


本気の力は暇を持て余す。

一方即席の臨機応変タイプといえば...


「よし、出来た!」

感覚と技術でその場を凌ぐらしい。

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