第8回、ホラーが苦手な私はギャグホラーに走る
俺の名前は
ホラーゲーム実況者だ。
いつも通り自分の部屋でホラーゲー厶の実況動画を撮っていたんだが、ふと意識を失い、目が覚めると……見知らぬ洋館にいた! ちなみに背は縮んでいなかった!
部屋の内装を見ると、やっていたゲームの舞台とよく似ていた。どうやら俺は、プレイしていたホラーゲームの中に迷い込んでしまったらしい。
現在いるのはエントランス。玄関のドアには鍵がかかっている。
ゲームの内容的に、洋館のどこかにある玄関の鍵を見つけて脱出できれば、恐らく現実の世界に戻れるのだろう。
俺はとにかく、館の中を探した。
~2階にある子供部屋~
エントランスに堂々とあった大きな階段を登ってすぐに、恐らくこの家の子供のものだと思われる部屋を発見。
数学Iの教科書を見る限り、子供は高校生みたいだ。なのに見当たらないどころか人の気配がないところを見ると、子どもに何かあったのか……。
とにかく、勉強机に置いてあるものを見てみる。
中学英語の教科書が開かれていた。
会話文が書いてある。
『Emily:Michael,Is dinner ready yet?(マイケル、まだ食べられないの?)』
『Michael:I'm sorry, wait a little longer.(ごめんよ、もう少し待ってくれ)』
『Emily:Don’t be long! (ぐずぐずすんな!)』
……何だこの英語の会話文。
しかも食べたら食べたで、Emily、
『(※1)わたしがこんなご飯で満足するとでも思ったの!』
って、Michaelにご飯投げつけてるし。なんだこの教育に悪い教科書は。俺ですら毎食必ず『ごちそうさま』って言うぞ。
ヒラリと、テスト用紙が落ちた。それを拾ってみる。
『問題:日本三景に数えられる松島がある場所はどこか』
『回答:×宮崎(赤文字で、宮城と訂正されている)』
……ああ、いるよね。宮崎と宮城ごっちゃにする人。松島なんて俺初めて知ったけど。
こりゃ福岡と福島をごっちゃにしてたりするんだろうな、と思いながら下の回答も見る。
『問題:琵琶湖がある都道府県を答えよ』
『回答:〇佐賀』
「おいゴラァ!!!!!!!」
滋賀県民の俺は激怒した。
「(※2)琵琶湖があるのは滋賀だ。佐賀じゃない! 丸つけんなぁ!」
んなどこにあんのかわからん都道府県と一緒にすんなやボケェ!
~2階 書斎~
怒りは収まらなかったが、その隣の書斎部屋へ。
壁一面に本棚がある。
その真ん中にポツンと机が置いてあり、その上には真っ白な紙が置いてある。
匂いを嗅ぐと、柑橘系の匂いがした。
……これはひょっとして……。
ほかは特にめぼしい物が見つからず、他の部屋は鍵がかかっていていたので、とりあえず1階のキッチンへ。
~1階 キッチン~
オール電化じゃなくてよかった。
ガス式のコンロに火をつけ、燃えないよう気をつけながら暖める。
すると、文字があぶりだされた。
みかんの汁で文字を書いてあぶると、文字が浮き出るのだ。おばあちゃんに『あぶりだし』の話を聞いていてよかった。
あぶりだされた紙には、
(※3)『叶わなかった恋でも、素敵な思い出にすることはできるんだよ』
と、書かれていた。
なんの事だろう……。
しかし続きには、こう書いてあった。
『でも、単位を落とすと留年するんだよ』
せやね。
どうやら学業を理由にお別れしたようだ。
なぜあぶり出しにしたんだろ……。
~1階 風呂場~
……目の前を通ると、シャワーの音がした。
どうやら風呂場に、この洋館の主がいるようだ。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
君子危うきに近寄らず、という言葉があるが、それではホラーゲームは成り立たない。他の部屋は鍵がかかっているか何も無かった。後はここが一番怪しい……。
俺は脱衣場に入った。
半ガラスの向こうは、明かりと人影が見えた。
物音で気づかれぬよう、慎重に物を探す。
洗面台の鏡に、何かキラリと光るものがあった。
鍵のようだ。俺はそれを自分のポケットに入れる。
すると突然、シャワーの音が止んだ。
はっと、風呂場と脱衣場を仕切るドアを見る。
ガンガンガンガン!!!!!!!
あまりにも激しい音に、俺は思わず後ずさった!
激しく打ち付けられて今にも破られそうなドアの向こうから、怒鳴り声が飛んでくる!
(※4)「おい、誰だよ!? 俺のシャンプーハットに変な折り目を付けた奴!!」
知 ら ん が な !
そう叫びたくなったが、俺はすんでで止めて脱衣場を飛び出した!
階段まで走ると、「おいゴラァ!」という叫び声が!
俺は必死に走る、が、書斎と子供部屋には隠れる場所がない!
2階にあるとは限らないが……一か八か!
俺は、先程手に入れた鍵を、目の前のドアに使った!
すると運良く、鍵が解除された!
俺はその部屋に飛び込み、再び鍵をかける。
息を殺して、耳を澄ました。
足音が、俺が入った部屋の前で止まる。
「ちくしょう、どこ行ったんだ……? 他の部屋は鍵がかかっていて入れねえし……」
そう言って、足音は再び移動した。
……ほう、とため息をつく。
部屋は暗いので、とりあえず俺は電気をつけることにした。
目の前には。
蜜柑のような形をした何かが、こちらを見ている。
俺は一瞬叫びそうになったが、よく見るとなんか可愛い顔をしていた。
『君は、この洋館に迷い込んでしまった人だね』
口がない蜜柑の何かは、テレパシー的な感じて脳に直接語りかけてきた。
「き、きみは……?」
俺が恐る恐る尋ねると、蜜柑のような何かは言った。
『僕の名前はMichael』
「Michael!?」
あの、英語の教科書に載っていた!?
(※5)「これがあのキミなのか……ッ!!!!!!」
俺は呆然と呟いた。
一体彼はどんな悲劇があって蜜柑のような姿に変わり果ててしまったのか!?
Michaelは、恐る恐るこの洋館で起こった悲劇を語ってくれた……。
▪
私は一旦、ヘッドフォンをとる。
「何これ」
ホラーゲーム実況者が、ゲームの世界に迷い込むまではいい。なんで蜜柑だよ。
情報過多すぎて、ホラーどころじゃない。なんだこのホラゲ。ギャグじゃねぇか。
(※6)「いいから、とりあえず風呂に入って寝ろ」
隣にいた兄に言われ、戸惑う私はとりあえず風呂に入ることにした。
※1……ゆうすけ様「わたしがこんなご飯で満足するとでも思ったの!」
※2……無月兄さま「琵琶湖があるのは滋賀だ。佐賀じゃない!」
※3……無月弟さま『叶わなかった恋でも、素敵な思い出にすることはできるんだよ』
※4……梅しば様「おい、誰だよ!? 俺のシャンプーハットに変な折り目を付けた奴!!」
※5……祟さま「これがあのキミなのか……ッ!!!!!!」
※6……かしこまりこ様「いいから、とりあえず風呂に入って寝ろ」
近況ノートはこちら!
【終了!】第8回!フォロワーさまが残す一文を使って物語を書きたい
https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054921778179#commentSection
いつもご参加してくださる方も、新しく参加してくださった方も、ありがとうございます!
ホラーゲームは怖いけどギャグとホラーは実は紙一重であることに最近気づいた人です!
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