第7話 ソルジャー王国-1
大きな足跡は地平線まで続いていた。
「……この足跡は? 巨大な生物がいるのでしょうか……」
「恐らく大型系天女ですね……」
「大型系天女……ですか?」
そう言ったルーナにローレイドが尋ねる。
「そうです……。天女は大きく分けて2種類存在します。
「1種類目は能力系天女です。今までの国、火の国、氷の国、木の国がそうです。能力系天女はその能力で、国を創造し、能力を使用して浮かせます。
「2種類目は大型系天女です。能力系天女に比べると数が少なく、かなり珍しいです。大型系天女はその膨大な能力値で、自分とは別に第二の巨大な肉体を創造します。その上に、建物を建て、国を建造します。その巨大な肉体は天女の意のままに操ることができます。
「この巨大な足跡は、大きさからみて、2種類目の大型系天女の足跡ですね」
「そうなんですね……ルーナさん説明ありがとうございます。……では、この足跡をたどっていけば、大型系天女に会えますね……」
「そういうことになりますね。」
「では、この足跡をたどっていってください。よろしくお願いします」
「わかりました。それではこの足跡、結構長く続いているので、スピード出しますね。私につかまってください」
そう言うと、みんながルーナをつかまえた。
「……つかまりましたね。それでは行きます!」
すると、大地のスピードが上がった。皆の顔の皮が風によって激しく動いた。
しばらく飛行していると、とても巨大な人影が見えた。
「見えてきました。あれが大型系天女です!」
すると人影の姿が見えた。とても巨大な兵士だ。筋肉隆々で、ところどころどうやって作ったんだろうか鎧も着ている。巨大な剣も装備していた。
「どこに国があるんでしょうか……」
「あ、あれじゃないですか?」
そうルーナが指さした方向には、巨大な兵士の王冠があった。よく見ると、王冠の中に国がある。王冠がまるで国を守る壁の役割をしているようだった。
「では……そこに向かいますね。」
ルーナがそう言うと、ルーナの浮かせる大地は王冠のほうへと向かっていった。
そして、王冠の中へ着いた。そこは本当に国があった。華やかに飾り付けられた商店や露店、武器屋などの建物が並び、人々が往来している。何かイベントがある様子だった。
「すごいです……本当に国があるなんて……習っていて知ってはいましたが、実際に見ると信じられません……」
思わずルーナがそう言う。
「……感動するのは構わんが、まず、急いでローレイドを風呂から入ルーナいといけないな。汚れが乾いて落ちなかったら困る。」
ルドウィンが言った。ローレイドは今、汚れてしまっている。
「わかりました……まず、銭湯に行ってきます」
「ああ、我々はその間、ローレイドの服を買ってくる。ルーナ、ティルシ―手伝ってくれ」
ルドウィンが指示を出した。
「あいにゃ」
「わかりました。ルドウィンさん」
ティルシーとルーナは返事をした。
「ローレイド、もし銭湯が終わったら、あの中央の噴水で待っていてくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
こうしてそれぞれに分かれ、行動することになった。
カポーンと音が鳴る。ここは銭湯。模様の入った石レンガの壁で外からは見えないようになっており、石で囲われた穴に湯が入っている。そこには様々な生物たちがお風呂を楽しんでいた。耳がついた獣人や、鱗のあるドラゴンなど、本当に様々だ。
そんなところに、ローレイドは汚れを水で流し、落とした後、一人お湯につかっていた。
「はあ……」
思わずため息が出る。これは気持ちのよさから出るため息で、かなり極楽だった。
ここ最近の疲れが取れる気がする……そう思っていた。
一方、ルドウィン一行は買い物をしていた。
「ついでだ。お前たちの服も買ってやる。一人一着までだぞ。荷物になるからな」
「わーいにゃ」
「いいんですか? ありがとうございます」
そう喜んだルーナとティルシ―は、嬉しそうに洋服店へ向かった。
「どんな服がいいかにゃ……」
「……迷いますね……」
「このワンピースなんでかわいいにゃ」
「いいですね。あ、このドレス素敵……」
キャッキャキャッキャする女性人たちをよそに、ルドウィンは無難な動きやすそうなローブをローレイド用に購入していた。
「あまり時間をかけるなよ……さっさと選べ」
「はーいにゃー」
「わかりました」
そのころローレイドは銭湯を終え、ルドウィンから借りた、サイズの大きいダブダブの服に着替え、中央の噴水で待っていた。
ローレイドは待っている間、周りの様子を見てみた。
様々な人種が往来している。ドラゴンや獣人など……何か祭りでもやっているんではないかというくらい多くの人がどこかへ向かっている。
「なんなんだろう……」
ローレイドは何があるのか、目で追うと、皆国の円形闘技場へ向かっているようだった。
「……闘技場……」
そこに、ルドウィン達がやってきた。
「お待たせにゃ」
「ごめんなさい、遅くなりまして……」
「待たせたな」
「いえ、大丈夫です。……それ、買ったんですか?」
ローレイドがルーナとティルシ―の恰好が変わったのに気づいた。
ルーナは清楚な純白のワンピースを着ていて、とても似合っていた。ティルシ―は黒のカーディガンを着ていた。これもより、ティルシ―の黒猫の擬人化というイメージが増し、とても似合っていた。
「そうです」
「そうにゃ似合っているかにゃ」
ローレイドは照れから、言いづらかったが、思い切って言った。
「……お二人とも似合ってます」
「……ありがとう」
「……ありがとうにゃ」
ローレイドの直球な言葉にルーナとティルシーは照れてしまった。
「ローレイドの服も買ってきてある。これに着替えてきてくれ」
そう言って、ルドウィンは買った黒のローブを渡した。
「ありがとうございます」
ローレイドはトイレに行き、着替えた。
「よし、これでお偉いさんにあっても問題ないな」
ローレイドの姿を見て、ルドウィンはそう言った。
「あとは……どうやって合うかだが……ティルシ―、情報収集してくれ。」
「わかったにゃ」
ティルシ―が情報収集を始める。人々に片っ端から話しかけ、情報を聞く。
「すみませんにゃ、王宮はどちらにありますかにゃ?」
「ああ、それなら……」
順調に情報収集は進み、王宮の場所が分かった。
「じゃあ、案内するにゃ」
ティルシ―が王宮の場所を案内する。すると、意外と近くに王宮はあった。
「ここにゃ」
王宮についた。王宮は豪華な模様がついた柱がいくつもあり、石でできているようだった。
王宮を眺めていると、王宮を警備する兵士が言った。
「何の用だ!」
ティルシ―が通訳する。
「国王に会いたい、通してくれ」
「だめだ。何者かわからないものを通すわけには行けない」
「……少し待ってくれ」
そう言うと、ルドウィンは腰に掛けてあるカバンからガサゴソと何かを取り出した。
取り出した書類を出し、こう言った。
「火の国王の署名と、通行許可状だ。確認してくれ」
「……し、失礼しました」
兵士は書類を見ると、あっさり通してくれた。いかに火の国の国王の権力が凄まじいかわかる。
「? 何を見せたんですか?」
「ああ、国王陛下から、大使の証拠みたいなものを預かっていてな……」
「そうなんですね」
ローレイドにルドウィンはそう言いながら、兵士に案内されて国王の元へ向かった。
王宮の中にも、豪華に装飾された柱がいくつもたっていた。
「きれいですね……」
「柱ですか? そうですね……優秀な彫刻家がいるんでしょうね……」
そんな話をしていると、国王の間へ着いた。柱がいくつもある、広い空間で中央に王座があり、王が座っている。王座の後ろにはおそらくこの国の国旗が掲げられていた。
「……よくきたな……火の国の使者殿」
国王が話す。ティルシ―が通訳をした。
「わしはソルジャー国国王である。そして、ここはソルジャー王国である。文字通り兵士の国だ。国の傭兵となり、国に依頼され、戦争をすることもある戦争屋の国としても有名だ。そなたたちを歓迎しよう。して、要件は何かな?」
「はい……、私たち火の国の同盟国となってはくれませんか?」
「ふむ……」
国王がその言葉を聞いて、顔をしかめた。
「それはできない相談じゃ。依頼以外では、われらソルジャー国は強き者に従う。力こそ絶対だ。火の国が強き者だということが証明されれば話は別だが……」
国王は何かをひらめいた。
「それではこうしよう。近々、わが国の円形闘技場にて、闘技が行われる。この国の猛者達がこぞって参加する闘技だ。トーナメント戦になっており、戦いは熾烈を極める。この闘技に火の国の使者殿が参加し、見事優勝することができれば、火の国を強き者と認め、同盟を結んでやろう。だが、優勝できなければ、この話はなしだ。ちなみに優勝者には優勝景品、金貨1000枚が送られいる」
「金貨1000枚にゃ!?」
ティルシ―が通訳している途中で大声を出した。それも無理はない。大体金貨1枚で日本円に換算すると10万円ほどの価値がある。1000枚ということは日本円で換算すると1億円だ。
「……し、失礼したにゃ」
ごほんと国王がせき込み、言った。
「どうだ? 命がけの戦いにはなるが……参加してみるか?」
ローレイドにはほかに選択肢はなかった。
「はい……お願いします。参加させてください」
「決まりだ。今、円形闘技場で前夜祭がやっている。本番は明日だ。出場するものは、円形闘技場に行き、受付で参加したい旨を伝えると、案内してくれる。また、出場者は円形闘技場内に控室を用意している。今晩はそこで泊ってもいいし、宿で泊っても良い。健闘を祈る」
こうして、ローレイドのソルジャー国闘技のトーナメント戦の参加が決まった。
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