第4話 王の会合
爆発の煙が段々晴れてきた。
机と椅子の残骸は、もはやチリと化していて、爆発の衝撃を物語っていた。
人影が見える。
ローレイドが倒れていた。その向かい側に、国王が立っていた。
「……大きく……なったのう」
国王がそう言うと、電池が切れたように、ドスンという大きな音を立て、倒れた。
しばらくすると、だんだん足音が近づいてきた。そして、男が入ってきた。
「国王陛下!!」
その男は、先ほど貴族を殴り倒した、ルドウィンだった。
「申し訳ございません。大きな音が聞こえ、嫌な予感がしたため、勝手に入ってきたことをお許しください! ……?……陛下?」
返事がないことをおかしく思ったルドウィンは、思わずあたりを見渡し、国王を探した。すると、倒れている国王陛下とローレイドが見えた。
「陛下ぁぁぁあああ!!」
「うるさいわい!!なんじゃ!!」
ルドウィンの国王陛下を心配して呼ぶ声に、間髪入れず、返事をした。
しかし、依然、国王は倒れたままだ。立ち上がる元気はないらしい。
「陛下!! 無事だったんですね!!」
そう言い、ルドウィンは涙ぐんでいた。
「わしはな……。まあ大丈夫だと思うが、一応息子の息も確かめてくれ」
「は!」
ローレイドにルドウィンは近づき、胸に手を置き、心臓の鼓動を確かめた。
「無事です!!」
「ほう……よかったの……。よかっ……た……」
仮面の下で涙ぐむ国王。その様子を、ルドウィンは温かく見守っていた。
「……さて、息子を治療室へ! ルドウィン、王族は次の試練、第3段階の準備がある。
集じゃ!」
「は!! すぐに衛生兵を呼んできます!!」
「ルドウィン、衛生兵を呼んで、王族を招集した後、少々話がある。すぐここに来るように」
「は!!」
そう言うと、ルドウィンは衛生兵と王族を呼びに急いで出ていった。
暫くすると、ルドウィンが衛生兵と王族を連れて来た。すると、来てすぐに衛兵性がローレイドに駆け寄り、ローレイドを治癒室へ運んで行った。
「悪いのう、王族の皆の者、呼んですぐで悪いが、今はルドウィンと2人っきりにさせてほしい。すぐ済むからすぐ近くで待っていてほしい。終わったらまた呼ぶでのう」
「はっ!」
「すまぬのう」
そう言い、王族達は去っていった。ルドウィンと国王が残る。すると、国王は言った。
「……のう……ルドウィンよ……」
「はっ!」
「そう畏まらなくてよい。今はそうではなくて、友として話を聞いてくれ……」
「……わかりました」
そう少しリラックスした様子でルドウィンは言った。そして、国王はこうつぶやいた。
「わしは王失格じゃ……初めて息子を見た時、思わずすべてを捨てて、息子を抱きしめてやりたいと思った……あの弱り切った体を。今にも消えてしまいそうな姿を」
「……」
「気づいたか? あやつのここ……」
そう言い、国王は鎧で覆われている顔のまつ毛あたりを指さした。
「?」
ルドウィンは首をかしげた。すると国王は言った。
「わしの長いまつ毛にそっくりなんじゃよ~。あやつが赤ん坊のころも長いまつ毛でな。一目でわしの子じゃってわかったよ~。大きくなってもそこだけは変わらなかったみたいだの~」
ルドウィンはそんな国王を温かい目で見ていた。
「しかし……それ以外はすべて変わっていた……いや、成長していたんじゃ……」
「!!」
「あやつは見た目よりも大きく……大きく成長していた……!!子供は見ないうちにどんどん成長していくものよのう……あやつはわしをもリロード状態にさせおった!!」
「!!!」
翌日。この日は火の国の同盟国を交えた、話し合いの日だ。そのため、朝早くに同盟国の代表は集まり、火の国の国王の登場を今か今かと待っていた。
火の国の国王は控室で話し合いの時間になるまでルドウィンと王族、貴族数名を交え、少し雑談をしていた。
「息子の容体は?」
国王がルドウィンに話しかける。
「はっ! リロード状態なこと以外、すべて良好です! 今現在、第3の試練に向けて準備中です!」
「そうか……」
「っていうか……リロード状態って何すか?」
貴族が国王に馴れ馴れしく尋ねる。よく見ると前に不適切な発言をして、ルドウィンに殴られた貴族だった。
「……!! おい!陛下になんて言葉遣いを!!」
ルドウィンが叱った。すると、すぐに貴族の顔を見て、前に自分が殴った貴族だと気付く。
「ってお前かぁぁ!! 前のことで懲りなかったのか!」
「あ~前に……何かありましたっけ……?」
貴族がとぼける。いや、本当に忘れた様子で言った。
「もういい……」
ルドウィンがそうあきれた様子で言うと、表情を豹変し強い口調で言った。
「もうたくさんだ!! 陛下! こいつを不敬罪で死罪にしましょう!!」
「ひぃぃぃ!!」
前にその場にいた貴族、王族は既視感を覚えた。
そして、国王はルドウィンを宥めた。
「まあまあ……よいではないか。言葉遣いが悪くても、ゆっくり直せば……」
「へ……陛下がそうおっしゃるのなら……」
ルドウィンは国王の言葉を聞き、声をやわらげた。
「しかし、我が国の貴族がリロード状態も知らないのは困るのう……よし、わしが教えてやろう。能力を使いすぎるとリロード状態になるんじゃ。ただし、天女はリロード状態にはならない。リロード状態になると一時的に能力が使えなくなる。リロードするまでの能力の持続時間は才能によるものじゃ。生まれつき決まっておる。訓練で時間が延びることはない。じゃがリロードしている状態の短縮は訓練で可能だ。だから、わしと息子がおんなじ時間にリロードしたのじゃが、わしのほうはもうリロード状態ではない」
「へぇ……要するに、国王様のほうが回復が早くて強い……ということですか?」
貴族が国王の話を要約した。
「まあ、それはそうなんじゃが……ここで重要なのはわしをもリロードさせたというところじゃ。つまり、わしの息子は、現時点で、現国王のわしと同程度の能力持続時間を持っているということになる……!!」
「ほえぇ~」
ルドウィンは適当に相槌をうつ貴族に、顔を怒りで顔をひくつかせたが国王に先ほど宥められたので怒るのをやめた。
そんな中、トントンと控室のドアをノックされた。
「よい、入れ」
「失礼します」
そう言い、火の国の兵が入ってきた。
「陛下……そろそろ会合のお時間です」
「うむ」
国王はそう言い、控室を出た。
国王は廊下を歩き、とある部屋の前まで来て、その部屋の扉を開けた。
そこの部屋は上に豪華なシャンデリアがぶら下がっていて、豪華な模様の入った長机に、縦に長い椅子が等間隔に置かれており、様々な個性ある模様が入っている鎧を着た、国の重鎮達だと思われる人たちが椅子の前で立っていた。
その様々な国のお偉いさんたちが頭を下げている。
「頭を上げよ!」
「はっ!!」
国のお偉いさんたちが頭を上げた。
「よく集まってくれた。皆の者。ここに集うは、盟主国、火の国傘下国、ソルジャー王国! 氷の国! 妖精の国! 猫の国! 犬の国! 男国! 女国! 中央王国! 以上! 計8カ国代表! 我々の国力を持って次期国王に5つの試練を受けさせる!! この試練を受けさせることで自国を含めた9カ国もの大国を統治させる能力がある王を育成させるのが目的じゃ!! 5つの試練は時に大国一つの犠牲が必要な場合もある!! しかし、優秀な王を育成し、その国王に統治されなければ、我々はここまで栄えていない!!」
国王が両腕を広げ、声を大きくして言った。
「すべては新国王のために!!!」
8カ国の代表たちも、大きな声で唱和した。
「すべては新国王のために!!!」
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