第2話 秘密裁判
「!!!」
意識が戻り、飛び起きたローレイド。瓦礫で打った頭に激痛が走る。
「痛っ!」
ローレイドが思わず叫び、飛び起きた。
ローレイドが痛みから、頭を押さえると、布の感触がした。包帯が頭に巻かれているようだ。
ローレイドは周りを見渡した。ここは古い独房のようだった。古いトイレがあり、ボロボロの布切れが、ローレイドを覆いかぶさっていた。
その叫び声で、ローレイドが起きたことに気づいた看守は、ローレイドがいた独房のカギを開け、独房の中に入り、ローレイドを無理やり引っ張り起こしながら言った。
「起きたか! いいか、ここは隣国火の国だ。お前には黙秘権がある。今から別室へ行くぞ。」
火の国――――それは木の国と同じく、天女を中心とした浮遊国家だ。木の国と違うところは国民が使うのが木の能力ではなく火の能力だということぐらいだ。木の国と同じく国王、王族、貴族が存在する。この世界はどの国も木の国、火の国のような天女中心の社会である。どの国も天女の力で浮遊しており、その天女を守る国王、王族、貴族が存在する。
看守はそう言うと、ローレイドに手錠をした。そして、ローレイドを独房の外へ出し、独房のカギを閉めた。
「歩け」
看守が言うと、主人公は重々しく歩みを進めた。
コツコツと靴の音が響く。
明かりは点々と心細く光る松明のみだったため、薄暗かった。
そんな中、光が差し込んだ。
「眩し……」
ローレイドが思わず言うと、その光がどんどん大きくなり、やがて大きな光に包まれた空間に出た。
最初は眩しくてあまりよく見えなかったが、しばらくして目が慣れると、既視感のする光景が広がっていた。しかし、自分の知っているそれとは雰囲気が全然違うものだった。
長い机が横向きにおいてあり、そこに縦に長い椅子が等間隔に置かれている。その椅子には鎧を着た男たちが座っていた。その前には、大人数の鎧を着た男たちがきれいに整列していた。天女はいない。傍聴席もあったが、そこには誰もいなかった。
中央の席に座っていた、鎧の男が口を開ける。おそらく一番偉い国王なのだろう。一番豪華な装飾を施された鎧に身を包んでおり、顔まで鎧に覆われていた。
「これより秘密裁判を行う。事件の概要を言え。」
「……」
「はっ! 陛下。被告は同盟国の隣国木の国天女を卒業試験時に能力で殺害。天女の能力で浮いていた木の国は天女がなくなったことにより浮力がなくなり落下。死者行方不明者多数。」
「うむ」
「以上より、被告は国家崩落罪に問われています。」
「よろしい」
「被告、間違いないな?」
「……」
ローレイドに国王は尋ねたが、ローレイドは反応する様子がない。
ローレイドは現実味がないこの状況に、脳が追い付いていなかった。
「はぁ……被告!!!」
国王が怒鳴るとびっくりした様子でローレイドは国王のほうを見た。
「よく聞け! 貴様は生存者の証言により、犯人だと疑われている。よいか、このまま一言も話さなければ反論なしとみなし、死刑だ!! 自分の立場を分かっているのか!!」
「……ぁ……ぁ」
ローレイドは声が出なかった。
ローレイドは思い出していた。優しくも厳しかった先生のこと、自分のことを助けてくれなかった生徒、――――そして天女のことも思い出した。
火の中で藻掻く天女の姿。そして人が焼けるにおい、木が焼けるにおい、人々の叫び声、すべてフラッシュバックした。
「うわあぁあぁ!!」
殺してしまった。みんな。自分の手で殺してしまった。
「ぁぁああ、殺したぁぁ……この手で……殺しましたぁぁぁ……」
ローレイドの悲痛な叫びが響き渡った。
「!」
国王は少し驚いた様子でいたが、しばらくして口を開いた。
「よろしい。」
国王が手を上げ、王族、貴族に合図を送る。
ローレイドが取り押さえられた。
泣きじゃくる主人公。その涙は、これから訪れる自分の運命に対する涙なのか、自分が殺してしまった被害者を思っての涙なのか、わからなかった。
「主文、被告は木の国の国家崩落罪により――――死刑を言い渡す」
貴族が斧を持ち、王族がローレイドの周りを取り囲む。
「――――木の国同盟国盟主国火の国国王の命により、刑を執行する」
大きな音を立て、斧が振り上げられた。
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