第29話 沈黙の二人……気まずい
俺は今、駅前のカフェでしみじみとコーヒーを飲んでいた。
というのも、放課後新作のラテが飲みたいと珍しくみくるがごねたので来ていた。それも上目遣いを駆使してくるとか反則的すぎる。あんなの逆らえんわ。
まぁ別に久しぶりにゆっくりしたいなと思っていたから全然いいんだけど。
目の前で幸せそうに新作ラテを飲むみくるがいるし。ほんと天使か何かだと思う。
「んふふ~」
さらに上機嫌である。
あれかな。夏休みになって気分アゲアゲの小学生かな。
「ん? えいちゃんどうしたの? 私の顔じっと見つめて」
「い、いや? なんでもないけど?」
「えぇ~怪しいなぁ」
「な、何がだよ」
「別にぃ~? 何もぉ~?」
含みのある笑みを浮かべて俺のことを見てくるみくる。
じっと見つめるには俺の精神力が足りず、すぐにぷいと視線をそらす。
「あぁ~えいちゃんまた視線そらしたな~?」
「こ、コーヒーが飲みたかっただけだ」
言い訳するようにそう言って、コーヒーを飲む。
最近のみくるはほんとに無双している。何だその余裕は。俺に分けろよ。
「そういえば、今日加奈ちゃんたちクラスの打ち上げなんだっけ?」
「らしいな。今朝、『今日私たち家にいないからきっとお兄ちゃん寂しいだろうけど、頑張って我慢してねぇ?』ってニタニタ顔で言われた」
「加奈ちゃんらしいねぇ」
「全くだ」
つまりは今日は久々に家には妹一行が来ないということになる。
久しぶりに自分の部屋でくつろぎたいものだ。
「私たちも打ち上げとか行けばよかったね」
「そもそもないだろ?」
「えっ? 今日クラスで『テストお疲れ様会』やるって言ってたよ?」
「ん?」
ちょっと待て。俺その話全く聞いてないんだけど。
「もしかして……えいちゃん誘われなかった?」
「……」
「あはは~」
もはやみくるでさえ渇いた笑いしか出てこない。
おそらくはクラスの奴にみくると仲がいいことを妬まれて仲間外れにされたのだろう。
うちの高校の奴、大体恋愛に関しては必死だしガチだからな。
みくると朝一緒に登校してくるときに大体「芹沢のハーレム主人公! くたばれ!」ってもはや「おはよう」の頻度で言われてるし。
それにどうせ誘われたとしても行かなかっただろうし、いいとしよう。
「まぁどっちにしろ、えいちゃんは今日私と新作ラテを飲む予定だったんだから、誘われた誘われてないは関係ないね」
満面の笑みでそう言われる。
「フォローサンキュ」
俺はそう短く答えて、もう一度コーヒーを口に含んだ。
……やっぱ仲間外れ辛い。
***
周りが和気あいあいと話している中、私は気まずく黙り込んでいた。
隣に座る蒼井君もまたジュースに視線を注いでいて、明らかにこの場で浮いている。
「あはは~だよね~」
加奈の楽しそうな声が聞こえる。
やっぱり加奈のコミュニケーション力はすごい。私にはないものだなぁと切に思う。だけど、今それを思ったところでこの現状は何も変わらなくて、必死に話題を探す。
すると隣の蒼井君が頭をかきながら口を開いた。
「いやぁなんかこういうの高校生っぽいよね。俺は苦手なんだけどさ」
恥ずかしそうに微笑む蒼井君。
話を切り出してくれた! ありがとう蒼井君!
そう心でお礼をしつつ、会話を何とかつなげる。
「分かる。私もこういう風にかしこまって会話するの苦手なんだよね。学級委員なのにさ」
「お、俺も学級委員なのにね……」
「あっ、ご、ごめん……」
「い、いや……全然大丈夫! マジで、ほんと気にしてないから!」
「そ、そう? ならよかった」
気を遣わせてしまった。
私はなんて大きな地雷を踏みぬいてしまったんだろう。ほんといつもテンパるとこうなる。
ほんと私って……ダメだよなぁ。
「……」
「……」
また訪れる沈黙。
……あぁ~! もうどうしたらいいの⁈
まだまだお話会は続きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます