第26話 高校生は打ち上げ好き
学生がテストから解放されることは、何事にも代えられないほどの快感がある。
私はそれをとてもよぉ~く実感しながら、満面の笑みを浮かべていた。
テスト終わった。めっちゃ嬉しい。
私の今の心境は、この一言で表せた。
「舞おつかれい! ほんとこのテスト終わった後の快感はたまんないねぇ」
「加奈ちょっとじじくさいよ? まぁその気持ちわからんでもないけどさ」
「じじくさいじゃなくてばばくさいね? 私は老いたらハッピーばぁちゃんになる予定なの」
「……え?」
ちょっと……いや、割と結構「こいつ頭大丈夫か?」みたいな顔を舞にされたけど気にしなぁい。
それになんだかんだ舞だって「あははは~」みたいな笑み浮かべてるし、テスト終わった後人の知能は著しく低下するという私調べの研究結果が出ており、舞がバカになっていてよかったと思う。一文長いわ!
「この後、打ち上げ行くよね?」
「うんいくいく! 支度するから待って~」
「うん」
打ち上げ……というのは決してお兄ちゃんの部屋で行われる女子会ではなく、今回はクラスの打ち上げ。
なんだかんだ体育祭とテストが被ってしまい、体育祭の打ち上げができていなかったのだ。
ということで、テスト終わりにテストお疲れ様会も兼ねて、クラスのみんなでカラオケに行こうという話になったのだ。
高校生とは、打ち上げが好きな生き物なのだ!
「支度終わった! レッツゴー!」
「おぉー!」
その後、数学が解けずに意気消沈している花といつも通りの海と合流して、打ち上げ会場であるカラオケ店に向かった。
テンションアゲアゲでございます!
***
ここは駅前で一番大きなカラオケ店の一室。
先に集まったクラスの男子(弁天君は帰宅)が神妙な面持ちで座っていた。
まだ女子は誰一人として来ていない。なぜなら、待ち合わせ時間を一時間ずらしているから。
それはすべて、この団結会のために——
「今日は一時間早く集まってくれてありがとう、諸君」
そう切り出したのはサッカー部の丸山。備考、彼女欲しい歴15年。
この団結会を開いたのも、彼である。
「みんな、そろそろ高校生活初めての夏休みがあることは知っているよな」
「「「あぁ、もちろんだ」」」
「そしてこのクラスの男子で誰一人……かのじょ……ぐっ、か、彼女がいないことも、知っているよな?」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」
泣き出す男ども。
全員マジ泣きである。
彼女がいないという現実に打ちひしがれて、夏を目の前にしてお先真っ暗という状況にテスト終わりのご加護などなかった。
ここには孤独と虚無感しか存在しない。
丸山も又一筋の涙を頬に流していた。
だがリーダーとして声を必死にこらえた。
「今日打ち上げを開いた意味、分かるよな?」
「「「あぁ、もちろんだ」」」
全員がそう答える。
そこには決意の気持ちがこもっていた。
「俺たちは今日——クラスの女子と仲良くなるッ!!!!」
丸山が勢いよく立ち上がり、拳を天に突き上げた。
その瞬間、男どもも又立ち上がり、拳を突き上げ昇竜拳!!
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
そんな思惑の中、体育祭とテストの打ち上げが行われようとしていた。
※ほぼ全員バカです。
「(えぇー俺、そんなの聞いてないんだけど……)」
気合を入れるクラスの男どもの中、ただ一人だけこの状況に困惑するものがいた。
「(どうしよう……俺そんな目的で来たわけじゃないんだけど……)」
蒼井将(あおいまさる)。
学校一の美男子と呼び声高い、このクラスの学級委員である。
「(……か、帰りたい……)」
彼と彼女の恋の物語も又、始まろうとしていた——
※この時、大抵のクラスの男子どもは上裸で国家を熱唱しています。
状況が大変乱れております。ご了承ください。
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